カメラが証明するトラの危機


こんにちは、森林プログラムの古澤です。
インターネットのニュースなどでご存知の方もいるかもしれませんが、最近インドネシアで仔トラの兄弟の映像を捉えることに成功しました!

これは3月から4月にかけて、WWFインドネシアのトラ調査隊がスマトラ島中部の森で行った調査で得られたものです。この映像を初めて見た時は、仔トラが落ち葉をくわえたり、じゃれたりしている様子に、とても驚きました。野生の仔トラ(しかも3頭!)が遊んでいる様子を記録した映像は、とても珍しいものです。

ところがこの映像、森林が伐採などの開発から保護される国立公園の外で撮られたものなのです。約25年間で森林の面積が半分になり、世界で最も森林減少のスピードが速いと言われるスマトラ島では、森はみるみるうちに消えてゆきます。

残念ながら、この仔トラの兄弟の住みかも、周囲は紙の原料となるアカシアの木やパームオイルをとるためのアブラヤシを植えるためのプランテーション(農園)に変わってしまっていて、その中にぽつんと浮かぶ小さな島のような森なんです。

しかも、土地の利用権は、製紙メーカーに木材を供給する企業が持っているので、政府から伐採の許可が下りれば森は消え、そうすればこのトラも…。

森もトラも危機的な状況にありますが、幸いにも、森の中のカメラがスマトラトラの存在を証明してくれました。WWFでは、この動画をもとにこの森が伐採を免れるように企業や政府に対して働きかけを行なっています。
続きはまた報告しますね!

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撮影されたスマトラトラの親子

 

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自然保護室(森林グループ所兼 マーケットグループ長)
古澤 千明

大学卒業後、民間金融企業での勤務を経てWWFジャパンに入局。2010年より主に東南アジアの森林保全プロジェクトを担当。インドネシアやメコン地域などのWWFオフィスとも連携しながら、森林減少の要因となっている農林産物の生産について、関係企業に生産現場の課題を伝えたり、調達改善のための支援に取り組む。2021年からは、マーケットグループ長も兼任し、森林保全の枠を越えて企業のサステナビリティの向上に努める。

幼いころから自然や生き物への興味はありましたが、WWFとの出会いは偶然でした。自然科学や生物のスペシャリストではない自分だからこそ、得られる理解・賛同もあると信じつつ、そうは言っても日々勉強です。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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