帰って来たイボイモリ!


先日、爬虫類のペット取引調査のために沖縄へ行ってきました。

もう一つの目的は帰って来たウルトラマン!(若者は調べてください)ではなく、帰って来たイボイモリ!に会うこと。

これは南西諸島にだけ生息する日本の固有種で、天然記念物として保護されています。

ゴジラっぽい(?)姿からペットとしての人気があり、密猟や違法取引の対象となることも...

2015年11月には、日本から違法に持ち出されたイボイモリが、ベルギーの税関で差止られる、という事件がありました。

ベルギー帰りのイボイモリ(Echinotriton andersoni)。現在は飼育下繁殖を目指しつつ、バックヤードで飼育中。今回、特別にその姿を見せてもらいました。私が良く知っているアカハライモリと比べて体はずっと大きく、乾いた感じの肌をしていました。

こうして保護された個体は通常、現地の保護施設などが引き取ります。

しかし、今回は希有なことに、現地の両生類の研究者と、WWFジャパンの理事でもある兵庫県立大学の太田英利教授がお知り合いで、お二人のご尽力により、イモリたちは日本に送り返されたのです!

その後、時間のかかる手続きを経て、2016年7月、やっと飼育設備のある「沖縄こどもの国」に収容。

その後も、1個体ずつ分けて飼育し、ツボカビ病などの感染症がないか注意深く観察したそうです。

こどもの国には、他にも保護された動物が多くいます。天然記念物のリュウキュウヤマガメ(Geoemyda japonica)は、園で繁殖させた8頭を含めなんと70頭

ただ、残念ながら自然の中に戻される予定はありません。

こうした事例では、正確にどこで捕獲されたかなどの情報が無いことが多く、不用意に放すとすぐ死んでしまったり、その場所の生態系を壊す「外来生物」としての問題を引き起こすおそれも出てきます。

一旦捕獲された動物を野生に返すことは、生息地や生態が詳しく分からない限り、簡単にできることではないのです。

それでも、イボイモリたちは日本に帰って来ることができました。しつこいようですが、このような幸運な例は本当に珍しいのです。

セマルハコガメ(Cuora flavomarginata)は100頭も飼育されています!これらはペットとして飼われていた個体が逃げ出したり、飼いきれなくなって捨てられたりした個体だそうです。中には甲羅の隅に孔のあいているカメもいました。イヌのように紐でつないで庭で飼う人もいるとか。

生息地から誘拐される野生生物をなくすぞ!とイボイモリのつぶらな瞳に誓いました。(トラフィック 若尾)

関連情報

こどもの国の爬虫類担当学芸員の藤根さんと藤根さんが撮った野生のイボイモリの卵。湿地に生えた苔に産卵するそうです。沖縄の生き物を地元の人に見てもらえるようにしたいと語っていました。リュウキュウヤマガメの他、キシノウエトカゲの繁殖も成功させた飼育のエキスパートです。

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

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