知られざる動物園


この夏、赤ちゃんパンダフィーバーに湧く恩賜上野動物園へ行ってきました。
園の教育普及課の方とイベントの打ち合わせをするためです。

予定より少し早めに打ち合わせが終わったので、両生爬虫類館で開催されている特設展や新しくできたこども動物園を見学。その後、不忍門へ向かいました。

不忍池を右手に歩いていると、何かモフっとしたものが視界の片隅に...

不忍池

「ん???え、猛禽?!」

なんと池の端の小さな島に、オオワシがちょこんと座っているではありませんか。

もちろん、ケージも何もありません。

ちょうど通りかかった動物園のシニアボランティアさんに尋ねたところ、銃で撃たれてケガをし、飛べなくなった野生の個体をこうして保護することがあるとのこと。

野生に戻せないものは救護された後、上野動物園で飼育されるそうです。

オオワシ
オオワシは、越冬のために日本にやって来きます。国の天然記念物に指定されていますし、種の保存法の国内希少種として捕獲・殺傷も取引も禁止されています。

上野動物園には、このオオワシ以外にも保護されている動物がたくさんいます。

ケガをして持ち込まれた動物だけではありません。

違法に日本に密輸されたり、売買されているところを押収された、ペット取引の犠牲者ともいうべき、ホウシャガメやガビアル、スローロリスなどもいます。

こうした動物たちのように、保護されても行き場がなく、動物園などに引き取られ、飼育される例が多くあるのです。

もちろん、野生の生息場所に戻せれば一番いいのですが、密猟の場合、そこまで追跡できる例がほとんどないため、こうした飼育が必要とされています。

マレーガビアル(ガビアルモドキ)
インドネシアのスマトラやカリマンタン、マレーシアのマレー半島やスラウェシの淡水沼地や川、 湖などに生息するクロコダイル科のワニ。ワシントン条約で国際取引は禁止されていますが、日本でも密輸や違法取引によってペット業者などが逮捕されています。

動物園の果たしている知られざる重要な役割の一つといえるでしょう。

動物園に行く機会があったら、そこで目にした動物たちの中には、そんな生きものたちがいるかもしれない、ということを、ぜひ思い出してみていただければと思います。
(トラフィック 若尾)

関連情報

アカアシガメとキアシガメ
アカアシガメは中南米に、キアシリクガメは南米に生息するリクガメです。現地で食用にされるほか、日本でもペットとして取引されていますが、ワシントン条約附属書Ⅱに掲載されていて、国際取引には輸出国の許可書が必要です。

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

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環境保全団体です。

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