iPhoneアプリ「ZANPANDA」が生まれるまで


2013年12月16日、WWFジャパンは、自分の食べ残しをシェアして、友人や周囲へおすそわけできるiPhoneアプリ「ZANPANDA」をリリースしました。この企画は、株式会社アサツー ディ・ケイと、株式会社カヤックの協力により実現し、食べ残しから「食」と環境の問題を考えるきっかけ作りとして実施しているものです。

地球環境と「食」の問題

「食」と環境の問題は、人間が自然環境に負担を与える大きな要因の一つとなっています。日本でも「食」の生産や廃棄が、個人が環境にかけている負荷の要因の約3割を占めています。

しかし一方で、日常生活の中では、なかなかこの問題に関心を持つ機会がないことも事実。そこで、このiPhoneアプリ「zanpanda」は、食べ物を無駄にしないという、誰でもできる「アクション」を入り口として、体験や話題性を通じ「食」と環境の問題について親しみやすく考えていただくキッカケを提供します。

どのような思いから、この企画が誕生したのか。この企画の発案者である株式会社アサツー ディ・ケイの高野文隆氏にお話しを伺いました。

空想を現実へ デジタルの持つ可能性

(WWF)今回、企画の発案から設計、アプリの制作とウェブサイトのデザインまで、高野さんはじめ関係者の皆さんに、たくさんのご協力をいただき、実現することができました。ああでもない、こうでもない、と長期間検討を重ねてきましたが、そもそも、どのようなことがきっかけでWWFジャパンへの協力を考えられましたか?

(高野)WWFは、アイディアを世の中に面白く還元できる存在だと以前から感じていて、一緒に何かできないかなと、ずっと思っていました。

私は子どものころからよく思い描いていたことがありました。例えば飛行機の中で赤ちゃんが泣いてしまっている。あれはどうしようもできないけれど、中にはそれを不快に思っている人がいたり、一方でお母さんがいたたまれないような気持ちになってしまったりするかもしれませんよね。

そうした時に、例えば飛行機の中に赤ちゃんのまわりだけ、音が聞こえないようにできないかな、とか、そうした空想的なことをいろいろ考えていました。

最近では実際にデジタルの力で、さまざまなことができる可能性が広がってきています。そうした中で、WWFのテーマについても、アイディアとその方法をマッチさせていきたいと思っていました。

「環境保全」のスケールを日常生活に落とし込む

(WWF)関心を強く持ったポイントとしては、何があったのでしょう?

(高野)WWFの事務所で初めて打ち合わせをした時、WWFは、野生動物保護だけでなく、広い「環境保全」というところに目を向けていて、それを解決していかないと、結局野生動物の保護にもつながっていかない、と言う話を聞き、とても興味深く感じました。

ただ「環境保全」といってもスケールが大きすぎて、日常生活の中に実感として落とし込むのが難しい。ここをなんとかしたいなと思ったのです。

そして、いろいろとアイディアを出し合う中で、一番身近な所で、自分たちが生活の中で目にするというシーンのひとつに「食料の食べ残し」というのがある、という話が出てきました。

(WWF)環境と暮らし、つながっていながらギャップがある、この2つの関係を結ぶ「食」に注目したわけですね。今回ご一緒に実施した企画の面白さは、どこにあると思いますか?

元から日本人は食べ残しが多いという印象も個人的にあり、その「食べ残し」と環境の問題について単に"知らせる"だけでなく、何か"アクションをしてもらう"ことが面白いのではないかと思いました。問題解決のちょっとした糸口にできないかなと、と。

食べ残しを普段からなるべく出さないようにしましょう、ということだけで終わるのではなく、「実際に出てしまった食べ残しをどうするか」。そこからアイディアを膨らませました。

デジタル時代の「アクション」を問う

(WWF)今回の企画では、アプリと同時に、動画も作成していただきましたが、そうした制作の中で、どんなことを考えられましたか? また、このアプリと動画を通じて伝えたいことは何でしょうか。

(高野)SNSが発達していく中で、「いいね!」ボタンを押すことがひとつのアクションになってしまい、「いいね!」を押すことだけで終わってしまっていることがたくさんあるな、と常々感じていました。

SNSの力は大事だけれど、「アクションした気になってしまう」という功罪があるのではないか、と。

そこで、このアプリや動画に触れる方に「いいね!」から一歩踏み込んだアクションをしてもらうにはどうしたらよいか、どのように動機をつけて、関わりを持ってもらうか、ということに神経を集中させて、この企画に臨みました。

本来は、本当に食べ残しがなくなればいいのだけれど、そこまでいかなくとも、このアプリや動画を見た人に何かもう一つ、アクションを起こしてほしいと思います。

食べ残しと環境問題に関する情報を探してみる、でもいいし、とにかく「いいね!」だけで終わらないように。それが私たちもスポットをあてた、大事な焦点だと思います。

(WWF)最後に、これからのWWFの取り組みについてメッセージをひとことお願いします。

(高野)WWFには、アイディアやインスピレーションをかきたてる存在であってほしいです。アクションや活動のテーマをどう伝えるのか。そういうところで工夫をこらして、どんどん世の中に対して働きかけていってほしいと思います。


▼iPhoneアプリ「zanpanda」特設サイト(動画あり)

本企画は株式会社アサツー ディ・ケイと、株式会社カヤックのご協力に実施されました。この場をお借りして御礼申し上げます。

高野文隆氏 プロフィール

株式会社 アサツー ディ・ケイ 統合ソリューションセンター コミュニケーション・アーキテクト本部
クリエイティブ・ディレクター/コミュニケーションアーキテクト

主な受賞歴
・デジタルサイネージアワード2012シルバー賞受賞
・アドフェスト2011プロモ部門銀賞
・NEW YORK FESTIVAL 2011デジタル部門入賞
・SpikesASIA 2010デジタル&モバイル部門入賞
・ONESHOW DESINGN 2010入賞
・釜山国際広告際 2010入賞

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