温室効果ガス排出量取引


WWFジャパンは、温暖化対策につながる重要な政策の一つとして、温室効果ガスの国内排出量取引制度を提案しています。2009年11月には、排出量取引制度を中心としつつも、排出量取引制度だけではカバーできない部門に対する政策も含んだ、総合的なポリシーミックス提案を発表しました。WWFはこの提案を中心とする、追加的な政策の導入を求めています。

排出量取引とは何か

国内排出量取引制度とは、国全体の削減目標を基に、個々の企業やその他の大規模排出者が温室効果ガスを排出することのできる量を排出枠という形で定め、企業等は、自ら排出量を削減するか、他の企業から余った排出枠を買ってくるかを選択することができるようにする制度です。

この制度には、確実な削減量を定めることができること、費用効率的な削減を促すことができること、排出量に「価格」をつけることで、企業の経営に排出量管理を取り入れさせることなどの利点があります。

WWFの提案

WWFは、日本での着実な削減を達成していくための制度として、排出量取引制度を中心とした「ポリシーミックス」を提案しています。企業の工場や発電所など、大規模な排出をするところは排出量取引制度で規制をかけ、自動車や家庭など、その他の部分については、他の政策で同時に排出量削減を進めていく、という案です。

世界の国内排出量取引制度の状況

排出量取引制度を導入する国や地域は徐々に増えてきており、炭素税とともに、二酸化炭素の排出を「費用」としてみなす「カーボン・プライシング制度」として、国際的な温暖化対策の主流になりつつあります。

EU(欧州連合)

EUでは、2005年からEU域内での排出量取引制度が開始されました。EUが始めたのは「キャップ&トレード型」と呼ばれる制度で、域内で一定規模以上のCO2を排出している工場などの施設が対象です。

第一期は2005年から2007年、第二期は2008年から2012年で、第三期は2013年から2020年で、2021年以降も継続される予定です。制度設計の不備や経済危機の影響で、必要な削減量に対して、排出枠が余ってしまい、本来期待された効果が得られていないという大きな批判にさらされましたが、少しずつ改善策がとられています。

アメリカ

アメリカでは、2007〜2010年の間に、国全体を対象とした排出量取引制度に関する議論が盛り上がり、一時期は、導入は時間の問題であるとまで言われました。しかし、議会において法案が通らなかったため、導入に至りませんでした。

他方で、州政府のレベルでは、いくつかの州が実際に排出量取引制度を導入しました。

2005年12月に、アメリカ東部7州が、2009年から発電所を対象とした排出量取引制度の発足を発表しました。RGGI (Regional Greenhouse Gas Initiative)と呼ばれるこの制度は、発電所からのCO2の排出量削減を目的とした制度です。参加州は2017年時点では9州となっています。

西海岸では、カリフォルニア州が、2012年から排出量取引制度を導入しています。カリフォルニア州の排出量取引制度は、RGGIと違って発電所以外の工場なども対象としており、よりEUの仕組みに近い制度です。

ニュージーランド

ニュージーランドでは、2008年に、森林・農業部門に重点を置いた独自の排出量取引制度を設立する法案を可決し、排出量取引制度が始まっています。ニュージーランド政府は、2030年に向けた「炭素予算」(CO2排出の限度量を予算のような扱う仕組みのこと)を定めており、その達成の手段としても、排出量取引制度は活用される予定です。

中国

中国では、北京、広東省、天津、上海、湖北省、重慶、深圳という7つの都市・地方で排出量取引制度の試行事業を実施しています。加えて、2017年中に、中国全土を対象とした排出量取引制度が導入される予定です。

韓国

韓国でも、2012年に排出量取引制度に関する法案が議会を通り、制度設計が行なわれました。2015年からの制度が開始されました。第1期は2015~2017年で、総排出量の約7割をカバーする制度となっています。

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