カムチャッカ・エコリージョン


ロシア極東に位置するカムチャッカ半島は、人間の経済活動による開発の影響を大きく受けていない、豊かな陸と海の自然が今ものこる貴重な地域です。しかし、近年、カムチャッカの生物多様性は、漁業資源の乱獲や地球温暖化、野生生物の密猟などにより、かつてない危機にさらされています。WWFは地域の団体や行政機関、地域住民とともに、この多様な自然を保全するプロジェクトを展開しています。 

カムチャッカの自然と恵み

アジア大陸の東の端に位置する、ロシアのカムチャッカ半島は、素晴らしい景観と、手つかずの自然が多くのこる場所です。

陸域には、雄大な火山、そしてゆたかな森と、川の風景が広がる、人の影響を大きく受けていない、地球上でも希な地域といえるでしょう。その大地は、ヒグマ、トナカイ、ユキヒツジなど、さまざまな動物たちの重要な生息域となっています。

また、海の自然も地球上で屈指の豊かさを誇っています。
ベーリング海やオホーツ海に臨む長い海岸線は、独特な生態系を育み、多様な魚類や鳥類、鯨類、トドやアザラシ類といった多くの野生生物に、生きる場所を提供しています。

このカムチャッカの自然は、豊富な漁業資源を生み出す、豊かな母体にもなっています。
古くから周辺の海域は、漁場として広く利用され、人々に恵みをもたらしてきました。
半島から海底に延びるカムチャッカの大陸棚も、生物資源的が驚くほど多様で、スケソウダラ、カニ、その他の底魚などの豊かな漁場にもなっています。

しかし、近年はその利用が過剰になり、魚などの漁業資源の乱獲が起き、また開発も進んできたことから、自然が脅かされるようになってきました。

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カムチャッカの自然

カムチャッカのシンボル「サケ」

このカムチャッカの豊かさと問題を物語る魚が「サケ」です。
カムチャッカは太平洋の天然サケ類の四分の一が生まれる場所になっており、種数も実に6種のサケ類が生息しています。

このサケは、ヒグマなどをはじめとする、さまざまな野生動物の生存にとって欠かせない、生態系の中で重要な役割を果たしている存在でもあります。
半島の南端にあるクリル湖は、ベニザケのアジア地域最大の産卵域ですが、このスポットには、多くのヒグマや、絶滅が心配されるオオワシなどが、サケを求めて集まってきます。

今も自然の中で暮らす、先住民の伝統的な生活様式においても、サケは重要な存在であり、その文化や歴史にも深く関わっていきました。

また近年は、カムチャッカの沿岸地域を中心とした地域の人々の暮らしと経済にとっても、無くてはならない漁業資源として、広く利用されてきました。

しかし、その資源の減少が今、生態系に広く影響を及ぼす問題として懸念されています。
資源が調査や十分な管理計画の無いままに利用され、自然が壊されようとしているのです。

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川を遡上するベニザケ

日本ともかかわりのあるカムチャッカの自然

カムチャッカの川や周辺の海で獲られているサケの総漁獲量は、毎年20万トンを超えるとみられています。その大部分の輸出先は、日本をはじめとするアジア諸国です。

日本とロシアのサケ貿易は、1980年代以降活発になり、日本市場では、ロシア産の天然のサケに由来する製品の取り扱いが増加してきました。

今日では、ロシアで生産されるシロザケの95%以上、ベニザケの約50%が、日本市場にむけに輸出されていますが、カムチャッカも例外ではありません。
最新の調査では、2010年に1800トンのベニザケと5000トンのシロザケが、カムチャッカから日本に輸出されていることが明らかになっています。

しかし、こうしたカムチャッカ産サケに関する生産や流通に関する情報(サプライチェーン)は、まだほとんどないのが現状です。持続可能な形で操業されているかどうか、サケ漁業を検証したり、そこから買い付けたサケの流通経路を確認する、といった取り組みは、まだほとんど出来ていないのが実情です。

カムチャッカのどこで、どれくらい、どのようなサケが獲られ、ロシアから日本の食卓まで届いているのか。そのトレーサビリティーの確保が、カムチャッカの自然保護を進める上での、一つの課題となっています。

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サケはカムチャッカの水産資源となっている

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加工されるサケ

持続可能な漁業の推進を目指して

 こうした課題を解決するには、太平洋のサケ資源を保全しながら、持続可能な漁業を確実に実施してゆくように、日本とロシアの両国で力を合わせた取り組みを進めてゆかねばなりません。

WWFはこのために、以下の活動を中心とした取り組みを進めています。

  1. 違法な漁業への対策
    サケの保護区における違法操業を食い止めるため、カムチャッカ南部で密漁監視のためのパトロールと、技術的な支援を行なう。2010年夏に行ったパトロール活動では、海洋保護区や河川での密漁者を発見、警告することで、密漁件数の減少に貢献した。
  2. 漁業改善を目指した活動
    海洋生態系への負荷が高いとされる流し網漁による、生態系への悪影響を減少させるため、特に、違法な流し網漁を防止するための活動を展開。その手法を確立し、他のエリアでも応用し、地域全体の漁業改善を目指す。
  3. 国際協力によるサケ資源の保全
    ロシア政府、日本政府、そのほか関係国の協力を促し、違法なサケ漁業監視を強化する。また、正確な漁獲量や輸出量のデータが取れるように、システムを確立する。違法な漁獲によるサケなどを流通させないように、MSC(海洋管理協議会)による漁業認証の取得を促進する。また、こうした流通のプロセスを明らかにできるようにする(トレーサビリティーの確立)。
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密漁されたサケを押収したところ

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密猟のパトロール

関連資料

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

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