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動愛法の改正に対して要望書を提出

この記事のポイント
現在、日本では「動物の愛護及び管理に関する法律(動愛法)」の改正が検討されています。この法律は、ペットなどの愛玩動物の管理と責任を定めるものですが、こうした愛玩動物の中には、絶滅が心配される希少な野生動物や、外来生物となって在来の自然や野生生物に悪影響を及ぼす種が含まれています。WWFジャパンでは2018年より、こうした問題と対策の必要性を指摘。2019年2月21日には、国会議員に対し今回の法改正に向けた要望書を提出しました。

「愛知目標」とペットの問題

世界の生物多様性の保全を目的とした国際条約「生物多様性条約」。
日本もこれを批准する締約国の一つとして、条約の理念を遂行するために「生物多様性基本法」を制定。また生物多様性国家戦略を策定し、国としての環境政策の柱としています。

また、2010年には、生物多様性条約の第10回締約国会議(CBD COP10)を愛知県名古屋市で開催。
生物多様性の保全に向け、世界が2020年までに実現することを合意した、「愛知目標」を作り上げました。

しかし現在も、地球環境と世界の生物多様性は、さまざまな人間活動の影響により、深刻な消失や劣化の危機にさらされています。

その原因の一つに、身近な愛玩動物(ペット)に由来する問題があります。

例えば、ペットとして海外から持ち込まれ、野外に逃げたり放されたりして、在来の自然や野生生物に悪影響を及ぼす例があります。

これは、愛知目標の目標9で解決を目指すことが求められている、外来生物の問題に相当します。
実際に現在、日本では、アライグマやチョウセンシマリス、ハムスター、カミツキガメ、アカミミガメ、グリーンアノール、そして飼育されていたネコなどが野生化し、こうした問題を引き起こしています。

アライグマ

カミツキガメ。どちらも日本各地で確認されている外来生物です。

また、国際的な取引に留まらず、沖縄など国内でも特定の地域だけに生息する絶滅が心配される野生動物を捕獲し、ペットとして販売する問題も多発しています。これは、愛知目標の目標12に該当する、絶滅危惧種の保全にかかわる問題です。

こうした問題について、日本には国として、法制度の整備を含めた対策の強化が求められます。これは、日本が自ら掲げた「愛知目標」を達成する上でも重要な取り組みといえるでしょう。

クロイワトカゲモドキ

ミヤコカナヘビ。いずれも日本の南西初頭に生息する希少な爬虫類。ペットとして取引されています。

「動愛法」の抱える課題と改正の必要性

現在、日本には、ペットのような愛玩動物の扱いや責任について定めた法律として「動物の愛護及び管理に関する法律(動愛法)」があります。

これは同時に、動物の保有や飼育について定めた、国としてのほぼ唯一の法律でもあります。
しかし、この法律には現状、すでに起きている問題に対応する上で、不十分な点が多数見受けられます。
特に法制度上、大きな問題といえるのは次の点です。


法律の目的

法律が規定する目的が、生活環境における動物の管理に限られていること。このため、自然環境への配慮が目的として設定されていないこと。

感染症への対応

愛玩動物がもたらす可能性のある、人獣共通の感染症や動物由来の感染症への対策が、制度的に確立されていないこと。

飼育の義務

飼育している動物を野外に放す、また逃げられてしまうといった例を防止する、飼い主としての管理が「努力規定」にとどまっており、「義務」になっていないこと。

絶滅危機種の販売

絶滅のおそれがある種をペットとして取扱う事業者を厳格に管理する仕組みが盛り込まれていないこと。


WWFジャパンでは2018年より、現国会で検討される動愛法の改正に向け、こうした問題点について、多くの国会議員に説明してきました。
そして2019年2月21日、法改正案を作成している超党派の国会議員に対し、10項目の課題と改善を求めた意見書を提出。
動愛法の改正を通じて、愛知目標の達成と、希少な野生生物保全と、外来生物問題への対応強化を要請しました。

動愛法はこれから、国会に改正案が提出され、具体的な議論が開始されるのは5月以降の見込みです。
WWFジャパンでは今回の要望に続き、他の国会議員に対しても、働きかけを続けて行きます。

意見書の提出。生方幸夫衆議院議員に手渡しました。

福島みずほ議員にも意見書を手渡しました。

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