トランプ大統領令はアメリカの温暖化対策を後退させる


WWFインターナショナル声明 2017年3月29日

WWFインターナショナルでは、3月28日にアメリカのトランプ大統領が署名した温暖化対策の大幅な後退につながる大統領令に対して以下の声明を発表しました。

以下はWWFジャパンによる解説です。


解説

アメリカのトランプ大統領は3月28日、オバマ前政権が進めてきた地球温暖化対策を全面的に見直すとする大統領令に署名しました。 この大統領令では、アメリカ国内におけるエネルギー生産に関するすべての環境規制や政策を見直すよう関係省庁に求めており、中でもオバマ前大統領が温暖化対策の柱として、2015年に打ち出した既存の火力発電所からのCO2排出を規制する「クリーン・パワー・プラン」も含まれています。

「クリーン・パワー・プラン」は、パリ協定においてオバマ政権が提示した2025年26-28%削減目標を実現するための中核的な政策であり、その廃止はアメリカの温暖化対策の大幅な後退につながります。 さらに大統領令ではオバマ前政権が禁止した国有地での石炭の採掘について規制を廃止するとしており、アメリカ国内の温暖化対策の後退のみならず、世界の温暖化対策の推進の機運に大きく水を差すこととなります。

この大統領令によって、アメリカの連邦レベルの温暖化対策が後退することは否めませんが、これによってすべての温暖化対策が進まなくなるわけではありません。 本大統領令はクリーン・パワー・プランを無効化することを狙っていますが、これらの規制の見直しには、長い過程を経る手続きが必要です。そのため実際に効力を発するまでには少なくとも長い時間がかかるでしょう。

また、アメリカの場合は、温暖化政策はもともと連邦レベルだけで進められてきたわけではなく、積極的な州がこれまでも主導してきた面が大きくあります。 州レベルでは変わらず温暖化対策を進めていくと表明している州がいくつもあります。

また積極的な温暖化対策を求める企業連盟もいくつもあり、そのうちの600以上の企業と投資家がトランプ大統領に対して、パリ協定の約束を守るように訴える声明も2017年1月10日に出されています。

また、日に日にコスト競争力を増す自然エネルギーへの転換や省エネルギーの推進は、すでに世界経済の大きな潮流となっています。 アメリカ国内において生み出している雇用の数でいえば、再生可能エネルギーの方が石炭産業より大きいという報告もあります。 ここに竿をさして、すでに時代遅れとなっている化石燃料中心社会へ逆戻りしようとする方針は、むしろアメリカの将来の経済力を弱めるリスクのほうが大きいでしょう。

WWFアメリカのCEOのカーター・ロバーツは、添付の声明の中で

「この決定は、我々の子供や孫たちの将来を害するだけではなく、自然エネルギーが巨大なマーケットとなっている世界経済の中で、アメリカ経済の競争力を失わせるものである。WWFはトランプ大統領とその政権に、国際的な約束を守り、アメリカ経済を守るための明確で効果的な計画を立てるよう強く要請する。我々は、クリーン・エア法の下で必要とされるように、アメリカ人と地域社会を保護するよう促す」

と述べています。

日本は、アメリカの大統領令がもたらす混乱に翻弄されることなく、パリ協定の下の自らの国際約束にのっとって、着実に国内の温暖化政策の推進にまい進するべきです。

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