多摩川河口干潟の保全を求めて


かつての10%程度しか残されていない東京湾の干潟。その一つである多摩川河口の干潟は、春秋に多くのシギやチドリなどの渡り鳥が多く飛来し、カニや貝などの底生生物が生息する貴重な場所になっています。しかし、羽田空港のすぐ近くに残された、この干潟の中央に、現在新しい橋を建設する計画が予定されています。2016年12月28日、WWFを含む5つの自然保護団体は、川崎市が自主的に行なった環境影響評価の結果発表を受け、着工前に必要と考えられる対応を、あらためて川崎市に対して求めました。

東京湾最後の干潟の一つ、多摩川河口干潟

東京湾にそそぐ多摩川の河口に広がる干潟は、塩生植物群落が残る唯一の干潟環境として知られており、同時に絶滅危機種を含めた多くの野生生物の生息地です。

ここで確認された、環境省のレッドデータブック掲載種は鳥類だけで16種。

神奈川県のレッドデータブック掲載種は37種にのぼり、さらにアメリカのアラスカ州や、オーストラリアなどの海外からも、定期的にシギ・チドリ類が飛来し、繁殖地と越冬地を結ぶ、中継地として利用していることが確認されています。

この干潟の中央を通る形で現在、羽田連絡橋(都市計画道路3・4・29号殿町羽田空港線)の建設が予定されています。

WWFでは日本野鳥の会などの団体と共に、2006年にこの計画が持ち上がって以来、川崎市や神奈川県、国土交通省などに対し、十分な調査と環境配慮を求めてきました。

その中で川崎市は、この事業が市の条例が定める環境影響評価(アセスメント)の対象規模を満たしていないながらも、自主的に環境影響評価を実施。

その評価審査書は2016年11月には、川崎市環境影響評価審議会で審議され、同月公開されました。

市環境影響評価審議会で、こうした自主的環境影響評価の案件が審議されたのは、初めてのことです。

懸念される橋の建設計画による影響

川崎市がこうした自主的アセスの実施に踏み切ったことは評価すべきものです。

しかし、その結果の内容は、過去にすでに指摘されてきた、事業による自然環境への影響を懸念するものであり、現状の対策でそれが改善される見込みはありません。

このまま工事が行なわれた場合、多摩川河口干潟の生物多様性は、深刻な打撃を受ける可能性があります。

そこで、多摩川河口干潟の保全に関心を寄せるWWFや日本野鳥の会などの5団体は、2016年12月26日共同で要望書を、川崎市長あてに送付。

自主的環境影響評価審査書がその中で指摘している環境配慮の施策を完全に実施するとともに、その対応計画を速やかに公開するよう強く求めました。

多摩川の河口干潟を守ることは、日本を代表する湿地環境(ウェットランド)の一つを守ることであると同時に、この干潟に頼って、遠くアラスカやオセアニアまで旅をする渡り鳥がつなぐ、世界の自然のつながりを守ることでもあります。

WWFでは引き続き、状況を注視しながら、要請を続けてゆきます。

要望書

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