歴史的な合意なるか!?フランス・パリでCOP21開幕


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現在の国連気候変動交渉の流れ

COP21での「合意」に向けて

2015年に入ってから今回のCOP21までに、既に4回、国連会議が開催されてきました。

これらの会議では、気候変動(温暖化)に関する、2020年以降の新規かつ包括的な国際枠組みを作るための国際交渉が続けられてきました。

その枠組みとは、国際的な地球温暖化対策のルール、目標、支援の仕組み等全体を指し、今回パリで開催されるCOP21で合意することが目標とされてきたものです。

このため、その枠組みは「2015年合意」や「パリ合意」と呼ばれることもあります。成立すれば、1997年に京都議定書が採択されて以降、最も重要な気候変動に関する国際合意となるため、国際社会の注目が集まっています。

京都議定書からの道のり

京都会議「COP3」

これまでの国際社会の気候変動に対する取り組みを振り返ると、まず、2008~2012年を対象とした京都議定書の第1約束期間がありました。

この期間には、先進国を対象に温室効果ガスの排出量削減義務が課せられていました。

その後、それに続く国際枠組みを作ろうとしましたが、国々の間での対立が激しくうまくいかなかったため、2013~2020年までの期間は、各国による自主的な温室効果ガスの削減目標を基礎とした体制で取り組むことになっています(EU等一部の国は2013~2020年も京都議定書の第2約束期間を継続)。

しかし、やはり国際的な枠組みの下で協力して取り組むことの重要性が確認され、2020年以降については、再び、国際的な枠組みを設立することになり、現在まで交渉が続けられることになりました。

ダーバン・プラットフォーム

「パリ合意」までの道のり(クリックで拡大)

その交渉の場として、2011年に南アフリカのダーバンで開催されたCOP17・COP/MOP7での合意に基づき設けられた、ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)です。

以来、COP21での合意を目指した国際交渉はこのADPを舞台に行なわれてきました。

2015年の交渉は、各国の意見を入れ込んだ「交渉テキスト」と呼ばれる合意の下書きを、少しずつ、整理していく形で進められました。

最後の10月に開催されたADP会合の結果として準備されたテキスト案は約60ページになり、未だに、各国の意見がそろっていないことを示す括弧書きや、1つの条項に対して複数の選択肢が存在している状態です。

COP21では、2週間の会期内にこれらの対立点を解消し、この交渉テキスト案を最終的な合意文書へと昇華させることができるかが問われています。

示された政治的な意志と交渉の論点


今回の会議に先立ち、既に170を超える国々が2025年もしくは2030年に向けての温室効果ガス排出量削減目標を含む取り組み内容を国連に提出しています。

この国々の現時点での排出量の合計は、全世界の排出量の9割以上。

その意味では、すでに世界中のほとんどの国々が、COP21で合意を成立させ、国際的な枠組みの下で協働して気候変動対策を進めていく政治的な意志を示していると言えます。

しかし、それでもCOP21は難しい交渉になることが予想されています。代表的な論点は、主に次の2つです。

論点その1:「差異化(differentiation)」

「差異化」は、今回、最も交渉が難しくなりそうな論点と言われています。

これは、端的に言えば、国際的な枠組みの下で各国がやらなければならない義務などを、国のカテゴリー等によって変えるか否かという論点です。

1992年の国連気候変動枠組条約から、1997年の京都議定書を経て現在に至るまで、国連の下での気候変動に対する取り組みは、基本的に、「先進国(日本・アメリカ・EUそしてロシア等の国々)」と「途上国(それら以外の国々)」という2つのカテゴリーに応じて、その義務の重さなどが設定されてきました。

たとえば、京都議定書では、温室効果ガスの排出量削減数値目標を義務として課されたのは先進国だけでした。

また、2010年に合意された「2020年までに1000億ドルの資金を動員する」という目標も、先進国から途上国への資金の動員という形で規定されています。

しかし、90年代以降の世界経済の発展の中で、特に新興国と呼ばれる中国・インドなどの経済的発展とそれに伴う排出量の増大があったため、日本を含む先進国は、これまで通りに「先進国/途上国」という、義務の重さによる区別をなくすべきだと主張してきました。

方や、新興国やその他の一部の途上国は、先進国が歴史的に気候変動(温暖化)問題を引き起こしてきた上に、その対策が決して十分ではなかったことを指摘。依然として、その区別が必要であることを主張しています。

この論点は、排出量削減義務の重さ、報告やその国際的チェックの厳しさ、資金支援の主体はどの国であるべきかなど、主な論点全てに影響を与える論点であり、その意味で、今回の合意で最も重要な論点とも言うべきものです。

「先進国/途上国」という単純なカテゴリー分けは、確かに時代にあわなくなってきているものの、そうかといって、日本とバングラデシュのような経済発展の度合いも排出量の多さも違う国々が同じ責任や能力を持っていることを想定するのは決して公平とは言えないので、先進国と、強硬な立場をとる一部途上国の間での歩み寄りができるかどうかが鍵です。

論点その2:「サイクル/タイムフレーム」

もう1つ、重要な論点として、「サイクル/タイムフレーム」と呼ばれる論点があります。

これは、各国の取り組みを、現在目標として議論されている2025年や2030年を超えて、徐々に強化していく「5年毎のサイクル」を今回の合意の中に組み込めるかどうかという論点です。

すでに述べたように、約170カ国の国々が、今回の会議に先だって、自国の温室効果ガス排出量削減目標を含む国別目標案(Intended Nationally Determined Contributions (INDC);政府の用語では「約束草案」)を国連に提出しています。

政治的な意志の表明という観点からは良い傾向である一方で、それらの国々の目標を足し合わせても、危険な気候変動を防ぐために国際的に必要とされている削減量に全く足りないということがすでにわかっています。

このため、今後は、各国の取り組みを「いかにして引き上げていくことができるか」が鍵となります。

この引き上げの検討を定式化するために、5年毎の見直しのサイクルを作り、2025年・2030年といった目標だけでなく、その先の目標はさらに削減の水準が強化されていくことを確保していくことが必要なのです。

WWFを含めた環境NGOは、特にこの仕組みが、意味のある形で今回の合意の中に含まれることを特に重視しています。


WWFの視点

日本がやるべきこと

WWFジャパンは引き続き、世界各国のWWFのオフィスと協力して、新しい国際枠組みが、気候変動による脅威を食い止めるに足る枠組みとなるように、各国政府に働き掛けていきます。

世界では、すでに各地で気候変動の影響が顕れてきており、将来の世界の平均気温上昇は、産業革命前と比較して、少なくとも2℃未満に抑えることが必要です。

島嶼国や後発開発途上国などでは、2℃の気温上昇でも甚大な被害が起き得るため、1.5℃未満に抑えるべきであると主張しており、WWFもこうした主張を支持しています。

日本も、今回の会議までに、自国の2030年に向けての温室効果ガス排出量削減目標を提出しました。

しかし、「2030年までに2013年比で26%削減する」というその目標は、気候変動の脅威を食い止めるという観点からは、あきらかに不十分な目標であり、日本の責任や能力から考えれば、もっと野心的な目標を掲げるべきでした。

また、アメリカ、中国、EU、インドなど、既に目標を提出している各国の目標も、日本に比べれば評価はよいものの、決して充分ではありません。

そのような中で、日本がCOP21で建設的に合意に貢献するためには、上で述べた差異化の論点において、先進国と途上国の主張を折衷するような案を提起していけるかどうか、そして、5年毎の見直しの議論で具体的な案を提起していけるかどうか、などが重要です。

削減目標で十分な貢献ができない分、他国への資金支援等の形で排出量の削減に貢献していく意志を示すことも重要です。

WWFジャパンは、そのための提言活動をCOP21の場でも行なっていきます。

気候変動問題と森林

地球の陸地の3分の1は森林です。そして陸上の生物の8割は森林に存在しています。中でも熱帯雨林が最も生物多様性に富んでおり、地球の酸素の4割はここで産まれているだけでなく、炭素の吸収と貯蔵力も陸域ではナンバーワンです。

しかし、森林が失われたり荒廃すれば、吸収源であった森林は一転して温室効果ガスを排出する側に回ります。

現実には世界の森林は毎分サッカー場24個分の規模で失われ、過去25年間に南アフリカの面積に匹敵する森林がこの地上から消えました。森林減少と森林劣化は、運輸部門に次ぐ二酸化炭素排出源になっているのです。

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この森林減少と劣化に歯止めをかけなければ、2030年までにアマゾンの4分の1は木の生えていない場所になるとも言われています。

COP21で締結が期待されている国際合意において、森林が気候変動にプラスにもマイナスにも作用することをしっかりと認識し、熱帯林を抱えている途上国に対する資金支援を増強すること、そして政府だけでなく企業も「森林破壊フリー」宣言をすることをWWFは求めています。


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