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白保サンゴ礁地区保全利用協定を沖縄県知事が認定

世界最大級のアオサンゴ群落で知られる沖縄県石垣島の白保地区で、地域の人々が策定したサンゴ礁の海の保全利用協定が、2015年8月26日、翁長雄志沖縄県知事の認定を受けました。保全利用協定とは、環境に配慮した観光に取り組む事業者が、フィールドである自然環境の「保全」と「持続可能な利用」を目的として策定する自主的なルールのことです。これにより、今後のエコツアーの受け入れなどに向けた、サンゴ礁の保全につながる地域の活動に、新たな一歩が記されることになりました。

地域が自ら定めた「観光のルール」

世界最大級のアオサンゴ群落を擁した石垣島・白保の海。

ここでは、地域が主体となったサンゴ礁保全が展開されており、WWFジャパンもサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」の取り組みを通じて、長年にわたりその活動を支援してきました。

その一環として、WWFジャパンの呼びかけにより、白保地区の住民によるサンゴ礁保全組織「白保魚湧く海保全協議会」が設立されたのは、2005年のことです。

この協議会が最初に取り組んだのが、観光利用が白保のサンゴに及ぼす影響を軽減するためのシュノーケル観光のルールの策定でした。

白保のサンゴ礁

ダイビングなどにより生きているサンゴが折られるなどの被害を受けるケースは、白保のみならず各地のサンゴ礁の海で生じており、サンゴとその自然を脅かす要因とされてきました。

そこで、WWFジャパンではこうした問題に配慮した「エコツーリズム」の推進が、地域での保全活動を促進する上で欠かせない取り組みであると考え、地域の方々がこの問題について話し合う場を準備。

観光事業者だけでなく、公民館(自治会)関係者や一般の住民の方々にもご参加いただき、観光により生じるサンゴへの問題や、求められる取り組みについての話し合いをコーディネートしました。

地域の方々の参加を得た話合い

なぜルールが必要?

この話し合いでは、地域の方々からさまざまな意見が出されました。

「白保地域みんなの海なのに、事業者だけが利益をあげるのはおかしいのではないか」
「白保は住宅地であり、リゾートではない。水着のまま村の中を歩かれるのは困る」などなど。

そこで、話し合いでは観光に訪れる方々に対し、守ってほしいマナー集「白保へお越しの皆様へ」を取りまとめました。

さらに、シュノーケルなどで白保サンゴ礁を利用している全ての観光事業者に対しても、サンゴへの配慮事項や安全、地域社会への配慮事項についてのまとめを作成。その遵守を呼びかけることにしました。

また、このルールでは地域で受け入れる観光客の人数を抑制しつつ、観光事業の安全確保と、地域のサンゴ礁保全活動への参加、地域活動への貢献を徹底するために、新規事業者の参入にも一定の条件を設けました。

これらのルールは、地域の人々の合意のもとでサンゴの保全と利用を長期的に実現し、両立してゆく上で、欠かすことのできない共通の認識となるものです。

始まったエコツアーの取り組み

エコツアーの様子

その後、この一連の観光に関する地域のルールは2006年、いわゆる「エコツアー」のルールとして策定されることになりました。

そして、WWFジャパンでは、地域の小中学生に向けた環境学習やWWF会員向けのツアー、保全活動を支援している企業の社員を対象とした研修、さらに、子どもたちの交流事業などを実施する際に、白保魚湧く海保全協議会に加盟する事業者とともに、このルールに則った企画の実施を行なってきました。

また、地域主導のエコツアーの定着を図るため、海での活動に加えて、地域興しの取り組みと連携しながら、集落内での観察会や史跡めぐり、サンゴ石を利用した地元の街並みなどを巡るプログラムの開発を推進。

「サンゴ礁文化」と呼ばれる白保の暮らしとサンゴ礁との繋がりに触れ、その保全の必要性を理解してもらうための取り組みを進めてきました。

こうしたエコツアーは、県外から観光客を呼び込んで地域に収入をもたらすと共に、サンゴ礁保全に必要な費用をもまかない、活動の持続性を確立する一助となることが期待されています。

「夏花(なつぱな)」による白保でのエコツアー

2014年3月には、WWFの特別協力による旅行会社HISの「サンゴ礁と共に生きる島人に触れるホームステイ サンゴ礁環境保全と島文化を学ぶ石垣島4日間のスタディツアー」がスタート。

これまでに複数回にわたって開催され、WWF会員をはじめとする、たくさんの方がご参加くださいました。

ツアーを現地で受け入れるのは、白保の有志が設立したNPO法人「夏花(なつぱな)」。

「白保魚湧く海保全協議会」と同様、WWFが地域主体のサンゴ礁保全の定着のために立ち上げを支援してきた団体です。

ツアーでは、「しらほサンゴ村」の設備なども利用しながら、サンゴと白保での暮らしについてレクチャーを行なうと共に、集落の散策や白保サンゴ礁でのシュノーケル、地域住民の家庭でのホームステイなどを実施。

さらに、実際の保全活動として、サンゴを脅かす赤土の流入を食い止めるために、農地周辺に「グリーンベルト」を植栽するボランティア活動を行なってきました。

自然と文化、人の暮らしに触れつつ、サンゴ礁の保全必要なことを学んでもらい、活動にも取り組んでもらうこのツアーは、参加者の方々はもちろんのこと、受け入れを行なう地域の人たちの中にも、活動への新たな意識や、課題の認識をもたらす機会となっています。

県が認めた白保の「保全と利用の両立」

白保地区では、こうしたエコツアーによるサンゴ礁の保全と地域の活性化の両立を、さらに進めてゆくため、策定した観光に関する自主ルールを、「白保サンゴ礁地区保全利用協定」に改定。

参加者へのサンゴ礁保全のための事前の説明を徹底することや、フィールドの過剰利用を抑制するための配慮、サンゴや赤土の状態の定期的なモニタリング調査の実施と、参加者の安全確保のためのルールや地域の伝統的な利用や暮らしへの配慮事項を盛り込みました。

また、サンゴ礁海域の利用に加えて、サンゴ礁文化の暮らしに触れる集落観光やサンゴ礁の恵みを体験する伝統的定置漁具「海垣」漁での体験の際のルールも明記。

サンゴ礁にかかわるさまざまな人の活動を視野に入れたこの保全利用協定には、白保内の12の事業者が参加。

NPO夏花が代表事業者として参加し、白保魚湧く海保全協議会も地域の子どもたちへの環境教育、自然体験活動を行なう立場から、この協定に加盟しています。

そしてこの保全利用協定は、2015年8月26日、沖縄県知事の認定を受けました。

これによって、白保での取り組みは、改正沖縄振興特別措置法に基づき、県の「環境共生型観光地づくり支援事業」の支援を受けることが出来るようになりました。

これは、これまでの活動の価値が改めて認められるとともに、未来に向けた新たな取り組みに対する期待を示すものでもあります。

地域が主体となったサンゴ礁の生物多様性の保全と、その生態系サービスの持続可能な利用の実現を目指すWWFでは、今後も「エコツーリズム」の定着を模索しつつ、この豊かな白保サンゴ礁が次世代に受け継いでゆく取り組みを支援してゆきます。

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