また早まりました、今年は8月13日に「アース・オーバーシュート・デー」到来!


国際シンクタンクの「グローバル・フットプリント・ネットワーク(GFN)」は、8月13日が、2015年の「アース・オーバーシュート・デー」であると発表しました。これは、人間による自然資源の消費量が、地球が持つ一年分の再生産量とCO2吸収量を超えた日、を意味します。つまりこの日から、2015年の残されたおよそ5ヶ月あまりを、人類は地球の生態系サービスの原資に手を付けながら、「赤字状態」で使っていくことになります。

尽きることのない世界の消費、でも地球の生態系は...?

今、経済や人口、資源の需要・消費が、世界規模で増加を続けています。

しかし、地球の大きさは同じまま。地球が持つ生産力、たとえば、木材や水産物(シーフード)といった森や海の恵みを生み出す力や、大気中の二酸化炭素を取り込む力は、基本的には大きく変わることがありません。

それにもかかわらず、消費が一方的に増大した結果、現在は、人類による「自然資源の消費が、地球の生物生産力を超過」する「生態的オーバーシュート」という事態が、起きるようになりました。

これはつまり、本来使ってよい規模を越えた「地球の使い過ぎ」を意味します。

この使い過ぎた分は、どこから持ってきて使っているのか? それは、さまざまな資源を生み出す母体そのものを、削る形で使っています。

さまざまな生きもののつながりで組み立てられている地球の生態系は、新たに命を生み出す形で「再生」する力を持っています。

生態系そのものが大きく損なわれ、その再生力が失われない限り、地球は一定の生産力を持っている、ということです。

しかし、現在の消費は、再生産によって生み出される「利子」どころか、「元金」にあたる「生態系そのもの」を食いつぶす速さで拡大しています。

この事態が続けばどうなるか。
「元金」が失われることで、使える「利子」が減り、さらに元金が失われる悪循環が待っています。

2015年はこれから「借金生活」

1961年の時点では、人間は、地球の生態系が一年間に供給する自然資源の3分の2しか消費していませんでした。

ところが、1970年代に入ると消費と供給のバランスが逆転。生態的オーバーシュートが始まりました。

その年、1年間分の地球の生物生産力を、年末を待たずに人類が使い尽くしてしまう日、すなわち「アース・オーバーシュート・デー」の到来も、年々早まっています。

2015年は8月13日がこの「アース・オーバーシュート・デー」ですが、この日は2014年に比べ4日早い到来となっています。

現在の消費は、1961年と比較するとほぼ倍に増加。また、その規模は、1年間で地球1.5個分を少し上回るほどになっており、現在も減少の兆しを見せていません。

※「gha(グローバルヘクタール)」とは、人間による地球への負荷を計算するために用いられる単位

このまま消費が増大するとどうなるのか。国連が予測する人口と消費の増加に基づいて試算すると、2050年までには、地球2個分の生産能力が必要だ、という結果が出ました。

ここまで過剰に地球の「使い過ぎ」が、実際に可能なのか。それだけの力を生み出す生態系が、その時点で存在しているのか。それはわかりません。

しかし、一つ明らかなことは、地球の生態系の限界を超えて消費を続けていくと、今のこの消費に支えられたくらしは、間違いなく維持できなくなる、ということです。

このツケを減らす為に、今年は地球温暖化対策にとって重要な年!

「地球の使い過ぎ」は、国や地域によっても、差があります。
日本を含めた先進国は特に使い過ぎの度合いが高く、もし世界の人が日本と同じ生活をしたら、1年間に地球2.3個分の自然資源が必要になります。

そして、その使い過ぎた分は、すべて未来から前借しているものです。

とりわけ大きな負担になっているのが、特に化石燃料の利用によって排出された二酸化炭素(CO2)の吸収に必要な面積で、環境に与える負担のおよそ半分を占めます。つまりは、2015年に入ってから排出した二酸化炭素は、8月13日以降の排出量は、1年間でみると海にも森にも吸収されず大気中にたまり、温暖化をいっそう悪化させてしまうということを意味しているのです。

毎年のこうした負債が、全て積み重なり、未来の世代に引き継がれてしまうのです。

今年は、地球温暖化の直接的な原因ともなっている二酸化炭素の排出を今後どう減らしていけるのか、地球温暖化対策にとって非常に重要な年となります。

年末にフランス・パリで開催される国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、2020年以降の全ての国を対象とした気候変動・温暖化対策の大枠が合意される予定となっており、この合意によって世界がどの程度気候変動を防ぐことが出来るのか、すでに起きてしまっている影響を軽減できるのかなどが決まるからです。

今後、IPCCのシナリオに沿って、二酸化炭素の排出量を、現在の水準から少なくとも30%減らせば、アース・オーバーシュート・デーは、2030年には9月まで遅らせることが出来るとGFNは推計しています。

※エコロジカル・フットプリントのその他の構成要素は、現在の状態のまま拡大を続けると想定する。

世界的な気候変動(地球温暖化)だけではなく、土壌侵食、耕作地の生産性の低下、森林破壊、漁業資源の崩壊、水不足や砂漠化、そして野生生物の減少・絶滅など、すでに始まっている世界各地の生態系の悪化は、明らかになり始めています。

WWFは1998年より、こうした地球環境の劣化を「生きている地球指数(Living Planet Index:LPI)」として数値化し、同時に、その原因となっている消費による環境への圧力の大きさを「エコロジカル・フットプリント」にまとめ、「生きている地球レポート(Living Planet Report)」として発表してきました。

今の消費生活の先には、どのような未来があるのか。

自然環境と、人の暮らしは、どのような影響を受けるのか。そして、危機を避けるためには、自然の恵みをどのように利用し、持続可能な未来を築いてゆくべきなのか。

今を生きる人類に対する大きな問いが示されています。

関連情報

関連サイト

グローバル・フットプリント・ネットワーク(GFN)

持続可能性の指標である「エコロジカル・フットプリント」の発展・普及を通じ、持続可能な経済の構築を目指すNPO団体。パートナー団体と協力して さまざまな調査研究・方法論の標準化を図り、経済活動が地球生態系の許容範囲内で行われるよう、資源勘定(バランスシート)の提供を通じて政策決定者へ提 言している。

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