日本の削減目標:「2度目標と整合的」は大きな誤認


声明 2015年6月2日

削減目標の上乗せと具体的な対策でより深堀りを目指すべき

本日、政府・地球温暖化対策推進本部(本部長・首相)が日本の「約束草案」の政府原案を策定した。本年12月にフランス・パリで開催される国連会議で、2020年以降の温暖化対策に関する新しい国際的枠組みに合意するため、各国は、自国の排出量削減目標を含む約束草案(国別目標案)を、12月の同会議よりも「充分前に」国連に提出することになっている。今日までに、すでに10の国と地域が提出している。

政府原案は、日本の温室効果ガス排出量削減目標として、「2030年までに2013年比で、26%削減する」ことを掲げている。

WWFジャパンは、これまでにも、この目標案では、温暖化問題の解決に当たってリーダーシップを発揮しているとは言えないことを指摘してきた。再エネ・省エネの可能性を徹底的に見直し、少なくとも30%以上の削減目標にするべきである。また、背景となっている2030年のエネルギーミックスについても、再生可能エネルギーの可能性が不当に低く抑えられてしまっている点も指摘してきた。

各国は、それぞれの国別目標案の中で、自国の目標がなぜに国際的にみて「野心的かつ公平なのか」を説明することを期待されている。今回策定された草稿では、この日本の目標は、国連気候変動枠組条約2条に書かれた「危険な気候変動を避ける」という究極目的に「整合的である」と説明されている。

しかし、そもそもこの目標案は世界的に2度目標を達成する時に必要な削減量からは程遠い。日本の長期目標である2050年80%削減にも整合していない。さらに、すでに提出しているEUやアメリカとの比較でいえば、たとえば、EUには、2030年時点での一人当たりの排出量で劣り(EUは6.5トン、日本は8.6トン)、アメリカには、平均での年削減率で劣る(アメリカは平均2.6~2.8%削減、日本は2.5%)。そもそも、アメリカやEUの目標も充分でないことを踏まえると、日本の目標は、国際的に先頭を切って貢献していると主張するに足る目標ではない。

現在、ドイツ・ボンにて開催中の国連気候変動枠組条約会議やG7での国際的な反応も含め、最終策定での上乗せに期待する。また、深刻な温暖化の影響は完全には予見しえないことを踏まえると、やがて本決定される目標でさえ、それを上限とするのではなく、それを超えるような削減を今後、具体的な対策の中で目指すべきである。第1に、国内的に、再生可能エネルギーや省エネ対策の強化が必要である。

また、現在議論中の電気事業者に関する温暖化対策の枠組みの議論を通じて、石炭火力発電所の増加も止めなければならない。第2に、国際的に、他国での温室効果ガス排出量削減を資金・技術支援を通じて削減していくことを具体化するべきである。おりしも、WWFヨーロッパ政策オフィスが他団体と合同で本日発表した報告書によれば、国際的に、日本は最も石炭に対して資金的支援を行なっている国である。日本は、排出量が最も多い石炭への国際支援ではなく、再エネや省エネへの支援で貢献していくべきである。

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