多摩川河口干潟に影響を及ぼす羽田連絡道路の建設に対する意見書


共同記者発表資料 2014年11月17日

首都圏に残る貴重な自然「多摩川河口干潟」に悪影響を及ぼす「羽田連絡道路」建設計画の見直しを求め、内閣府・国交省・神奈川県等に申し入れ

多摩川河口干潟の環境写真

(公財)日本野鳥の会(事務局:東京、会長:柳生博 会員・サポーター数4万8千人)、(公財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン、事務局:東京、会長:徳川恒孝 個人サポーター:約4万3千人、 法人サポーター:約420社)、(公財)日本自然保護協会(事務局:東京、理事長:亀山章 会員数2万6千人)は、羽田空港と対岸の川崎市を結ぶ羽田連絡道路建設計画に対し、予定地の東京湾に残る貴重な自然干潟の一つである「多摩川河口干潟」の重要性を考慮し、干潟に直接的な影響を及ぼすと考えられる当計画の見直しと、自然環境の保全を目的とした公開の議論の場の開催、そして、後世に引き継ぐべき、地域の自然資源として「生物多様性保全エリア」として位置づけ整備することを盛り込んだ意見書を、内閣府、国土交通省、神奈川県、川崎市、羽田空港周辺・京浜臨海部連携強化推進委員会に提出しました。

多摩川河口干潟は、埋め立て等により干潟の大部分が失われた東京湾奥部にあって、今なお良好で、かつ地域を特徴づける干潟生態系をとどめている場所です。プランクトンからゴカイ類、貝類、藻類、魚類、渡り鳥に至るまで、生き物同士のつながりが保たれています。また、この生態系があることにより、水質の浄化がされ、私たち人間にとっても有用な魚介類の稚仔魚が育っています。首都圏にありながらも、多くの人が本来の自然に触れられる場所であり、自然観察や散策等に利用し、さまざまな自然からの恵み(生態系サービス)を受けている場所です。

この多摩川河口干潟は、科学的側面からも重要で、確認されたレッドデータブック掲載種(鳥類)は、環境省基準で16種、神奈川県基準で37種に及び、(公財)山階鳥類研究所の資料による標識調査によれば、米国アラスカ州、豪州各地などから定期的にシギ・チドリ類が利用していることが確認されています。

多摩川河口干潟は、環境省の「日本の重要湿地500」及び「モニタリングサイト1000事業」におけるシギ・チドリ類調査地に、また国土交通省により策定された多摩川水系整備計画でも「生態系保持空間」に位置づけられ、国際的な鳥類保護組織であるバードライフ・インターナショナル(BirdLife International )が選定した重要野鳥生息地(IBA:Important Bird Area;「東京湾奥部」)にも指定されています。

多摩川河口干潟は、そこで暮らす多くの生きもの、そして、私たち人間にとっても高い価値を持った場所と位置づけられます。この羽田連絡道路の計画見直し(中止)、及び、自然環境の保全を目的とした公開の議論の場の開催、そして、後世に引き継ぐべき貴重な自然として、生物多様性保全エリアとして位置づけ、人々が永続的に利用し、心潤う空間とすることを求めています。

本件に関する連絡先

  • (公財)日本野鳥の会 自然保護室 TEL.03-5436-2633(担当:葉山・山本)
  • (公財)世界自然保護基金ジャパン 自然保護室 TEL.03-3769-1713 (担当:前川)
  • (公財)日本自然保護協会 自然保護室 TEL.03-3553-4103(担当:志村)

意見書 2014年11月17日

多摩川河口干潟に影響を及ぼす羽田連絡道路の建設に対する意見書

内閣総理大臣 安倍晋三 様
国土交通大臣 太田昭宏 様
神奈川県知事 黒岩祐治 様
川崎市長 福田紀彦 様
羽田空港周辺・京浜臨海部連携強化推進委員会 座長 和泉洋人 様

公益財団法人 日本野鳥の会
公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン
公益財団法人 日本自然保護協会

多摩川河口は、塩性植物群落と河口干潟を有する東京湾唯一の自然環境であり、国土交通省の多摩川河川環境管理計画でも、自然保全ゾーンと生態保持空間に位置づけられている大都市圏に残された貴重な環境です。
人間にも動植物にも高い価値を持つ多摩川河口干潟を活かすことは、国際戦略特区においても、個性的で活力ある地域づくりになると考え、以下を表明し、要望します。

  1. 良好な干潟生態系が形成されている多摩川河口干潟を破壊する羽田連絡道路の建設に反対します。
  2. 羽田空港周辺・京浜臨海部連携強化推進委員会において、環境保全のために、環境保護団体や研究者を含めた公開の議論の場を設けることを求めます。
  3. 多摩川河口干潟の自然環境は、本特区の重要な地域資産として位置付け、体験、観察、研究ができるよう生物多様性保全エリアとして整備することを提案します。

理由

埋め立て等により多くの干潟が失われた東京湾奥部にあって、多摩川河口干潟には、今なお良好な干潟生態系が形成されています。プランクトンからゴカイ類、貝類、藻類、魚類、渡り鳥に至る多様な生物で構成される生態系は、水質の浄化、都会の中で本物の自然に触れられる自然観察や散策の場などとして、多くの生態系サービスを供給しています。

多摩川河口干潟には、レッドデータブック掲載種が、環境省基準16種、神奈川県基準37種を数え、山階鳥類研究所の標識調査結果の資料では、米国アラスカ州、豪州各地などからのシギ・チドリ類の渡りが確認されています。こうしたことから、多摩川河口干潟は、環境省の「日本の重要湿地500」及び「モニタリングサイト1000事業シギ・チドリ類調査地」、国際的な鳥類保護組織であるバードライフ・インターナショナル(BirdLife International)選定の重要野鳥生息地(IBA;「東京湾奥部」)に指定されています。

多摩川河口干潟の重要性から、日本野鳥の会と世界自然保護基金ジャパンは2006年に連絡道路が構想された際にも見直しを求めました。

羽田空港周辺・京浜臨海部連携強化推進委員会において、国道357号整備の方針が出されています。羽田連絡道路は、すでにある首都高速横羽線、首都高速湾岸線、国道15号に加えて新たに整備される国道357号の、約5kmの範囲の中にさらに作られる道路になります。

国道357号が整備されると、羽田空港と川崎市殿町地区は約15分で結ばれます。重要な自然環境と引き替えにしなければならないほどの必要性のある道路とは考えられません。

複雑で多くの人が関与する環境問題の解決には市民の参加が重要であることは、国際的にも一般的な考え方になっています。京浜臨海部基盤施設検討会において課題となっていた「環境」面の検討を、羽田空港周辺・京浜臨海部連携強化推進委員会において、環境保護団体や研究者を含めて公開の場で議論することが重要です。

以上

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