COP18終了!「ドーハ・クライメート・ゲートウェイ」採択される


カタールのドーハで開催されていた国連気候変動会議(COP18・COP/MOP8)が、2012年12月8日、「ドーハ・クライメート・ゲート ウェイ」と呼ばれる一連の決定をパッケージとして採択し、閉幕しました。今回の会議は、2015年に予定されている新しい国際枠組み合意へ向けての節目となる会議でしたが、合意の中身は決して十分なものではありませんでした。日本も含め、各国が国内での議論を尽くして準備をし、次回以降の会議で交渉を加速していけるかが課題となっています。

会期を延長しての合意採択

今回の会議は、政治的機運が高まっていた2009年のデンマーク・コペンハーゲンでの会議(COP15)や、2011年の南アフリカ・ダーバンでの会議と比較すれば、比較的順調に行くのではないか、という観測もありましたが、結局、会期を一日延長しての終了となりました。

2011年の南アフリカ・ダーバン会議でのCOP17・COP/MOP7において採択された「ダーバン合意」では、2015年までに、2020年からの新しい国際枠組みについて合意しており、今回はその「2015年」へ向けての最初のCOPでした。

今回の会議は、以下の4つが大きな目的でした。

  • ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)の下での2015年までの作業計画を作ること
  • 同じくADPの下で、「必要な削減量」と「各国が誓約した削減総量」との間の甚大な差を埋めるための方策を打ち出すこと
  • バリ行動計画の中で積み残した議題に合意し(例:途上国への資金支援等)、枠組条約の特別作業部会(AWG LCA)の作業を完了すること
  • 京都議定書の第2約束期間の数値目標を定め、議定書の特別作業部会(AWG KP)の作業を完了すること

約2週間の難しい交渉を経た結果として、おおよそ、以下のような内容に合意しました。

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ADP(ダーバン・プラットフォーム特別作業部会)

2013年3月1日までに各国やオブザーバーが提出する意見を基に、今後も議論を続けることが決定されました。2013年は、ワークショップやラウンドテーブルでの(交渉よりも)議論が継続される可能性が高くなりました。

ただし、2014年のCOP20までには、交渉の基礎となる文書を用意することを決めました。また、来年2013年のCOP19では、「必要削減量」と「誓約された削減総量」の差を埋めるための方策を打ち出すことも決めました。

AWG LCA(国連気候変動枠組条約の特別作業部会)

焦点となった途上国への資金支援については、具体的な金額は合意に書き込まれませんでした。

イギリスなどいくつかのヨーロッパ諸国が、2013年~2015年の期間内での資金支援を宣言しましたが、既存の支援を組み換えただけとの見方が強くありました(日本は具体的な数字を発表していません)。

また、既に合意された「2020年に1000億ドル」という数字へ向けて、検討作業を進める道筋は曖昧ながら示されましたが、全般的に途上国からの不満が大きく残りました。

さらに、「適応」対策分野において、気候変動への影響に適応しきれなかった場合に生じる「損失と被害」(loss and damage)への対応を検討するメカニズムについても、新たな資金支援に繋がることを懸念したアメリカと途上国との間での対立があり、実質的には議論は先送りになりました。

しかし、全体としては、AWG LCAで残っていた議論を完了させることには成功し、AWG LCAはその役割を終えました。

AWG KP(京都議定書の特別作業部会)

2013~2020年の第2約束期間の数値目標が合意されました。参加する先進国全体で1990年比で2013~2020年の期間に18%の削減となることを目指すことになりました。

日本は従来より参加しないことを宣言していますが、この改正の採択によって、いよいよ議定書の第2約束期間が動き始めます。

また、第2約束期間への参加国以外は、CDMの削減クレジットを移転・獲得することができなくなりました。日本は、プロジェクトに参加してクレジットを作ることはできますが、その売買は基本的にはできなくなります。

不充分な合意内容

全体として、2015年合意へ向けてのスタートとしては、決して順調とは言えない船出となりました。

WWFは、気候変動の科学が警告している現状に比して、今回の会議の進展があまりに遅いことに強い懸念を示しています。

2012年は、北極の海氷面積の夏季最小記録更新や、世界銀行の報告書等によって、気候変動の影響の予想以上の進展についての危機感が高まった年でした。

しかし、今回の会議での遅々とした議論の進展・成果は、その現実を反映しておらず、WWFとしては強く懸念を抱いています。

今回の会議では、「具体的な野心(削減目標)の引き上げをどうやって行っていくのか」「途上国の資金支援をどうやっていくのか」といった点について、日本も含めた各国はあまり具体案を出せず、それ故に、交渉が前に進まなかった側面があります。

次回以降の会議では、国内での議論を十分に行なった上で参加し、交渉を加速していくことが、世界全体に求められています。

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