マウンテンゴリラの推定個体数が増加


2012年11月、WWFは絶滅の危機に瀕している野生のマウンテンゴリラの推定個体数が、880頭であることを発表しました。これは、2010年に推定されていた781頭より、多いことを示す朗報です。マウンテンゴリラは、世界でわずか2カ所、ウガンダのブウィンディ国立公園と、ウガンダ、コンゴ民主共和国、ルワンダの国境、ヴィルンガ火山群にのみ生息しています。

ウガンダ、ブウィンディ国立公園のマウンテンゴリラ

発表されたこのマウンテンゴリラの個体数は、2010年に行なわれた調査の推定数に、今度行なわれた個体数調査の結果を合わせたものです。

今回、ウガンダのブウィンディ国立公園において行なわれた調査では、合計400頭のマウンテンゴリラが生息していることが確認されました。

この400頭には、36の家族グループと、グループに属さす単独で行動する16頭のオスがいることがわかっています。この36のグループのうち、10グループが観光や研究のために、人間に慣らされています。

この調査は、ウガンダ野生生物局が中心となり、WWFも参加する国際ゴリラ保護プログラムや、コンゴ自然保護研究所、ダイアン・フォッシーゴリラ基金などと協力しながら進められました。

また資金的には、WWFスウェーデンがWCSやマックスプランク研究所などとともに、関係機関を支援して行なわれたものです。

今回の結果と、3つの国の国境に位置するヴィルンガ火山群に480頭という、2010年に得られた推定数を合計すると、マウンテンゴリラは880頭が生息していることがわかりました。世界にたった2カ所の生息地ですが、いずれの地域でもここ10年は出産も確認され、個体数が増加する傾向にあります。

オスのマウンテンゴリラは身長が約1.5メートル、体重は200キロにもなります。

進む保護活動の裏で

「マウンテンゴリラは、大型類人猿で唯一、個体数の増加が見られる種。集中的な保護活動を展開し、地域コミュニティの巻き込みに成功したおかげです」と、WWFのアフリカ大型類人猿プログラムのデビット・グリアは述べています。

実際、多くのマウンテンゴリラのグループが、研究者や観光客の存在に慣らされ、地元に多くの観光客を呼ぶ貴重な観光資源になっています。そして、その収益は保護活動に使われるだけでなく、地元の学校建設や井戸掘りの資金としても役立てられ、人々が積極的に保護活動に参加する動機を作り出してきました。

しかし一方で、生息地である森林の減少や狩猟罠による事故、あるいは人間からの病気の感染という深刻な脅威も続いています。

さらに現在、イギリスの石油会社SOCOが コンゴ民主共和国政府の採掘許可を盾に、現地が「ゴリラの生息地ではない」という主張のもと、石油開発を計画。新たな脅威となっています。

2012年6月に開催された世界遺産委員会では、このSOCOの開発の動きに対し、「マウンテンゴリラの生息地ではないが、世界遺産指定地での鉱物資源の掘削は、世界遺産の精神に反するものであり、公園の開発がゴリラや他の生物にとって脅威になり得る点を無視した行為である」と指摘。コンゴ政民主共和国政府に対し、採掘許可を取り消すよう強く要請しました。

オイルマネーを求める経済開発を優先すれば、保護管理は疎かになり、マウンテンゴリラは再び絶滅の縁に追いやられるでしょう。 開発行為はより多くの人々が公園内に入りこむことにつながり、さらなる森林破壊や密猟の呼び水となります。

今回明らかになった追加個体数も、マウンテンゴリラが絶滅の危機から脱するに、到底十分な数とはいえません。WWFは今後も調査と地域の保護活動への支援を続けながら、貴重な生息環境を破壊する問題に対し、厳しい姿勢で臨んでいきます。

 

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マウンテンゴリラの典型的な群れは、一頭のシルバーバックと呼ばれるオスのリーダーと、3~4頭の成熟したメスと、その若い子どもからなっています。

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密猟されたゴリラの腕。3歳の若い個体のもの。

 

 

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