スマトラの森が問う、APP社の「成果」と「評価」


インドネシア、スマトラ島の貴重な熱帯林の破壊に依存する紙パルプ生産が問題視されている、大手製紙メーカー、アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)社。最も問題視される自然林破壊に実質的な改善が、見られないにもかかわらず、指摘されている問題から目をそらせるかのような環境報告などが、一層の批判を呼ぶなか、2012年9月には、自社の「持続可能性ロードマップ」の第一回目の報告を発表しましたが、その「成果」にも疑問が指摘されています。

「評価」されない「成果」  

アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)社は、これまでに幾度となく、スマトラ島の自然林の伐採を停止し、調達する原料の100%を植林木にすると宣言しては、その自らの約束を破り続けてきました。

強まる批判を受けてか、2012年6月には、新たに発表した「持続可能性ロードマップ」で、環境・社会への配慮を再度強調。世界的な製紙メーカーであるAPP社とのビジネスに関わる多くの企業からも注目を集めました。

ところがこの発表の直後、WWFも協力し、スマトラ島中部のリアウ州を中心に、森林伐採の監視活動に取り組む現地NGOの連合体、アイズ・オン・ザ・フォレストからは、そのロードマップが、何の保全的意味も持たないことが報告され、期待は大きく裏切られることとなりました。

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スマトラ中部の森林伐採の現場

APP社は、2012年9月には、「持続可能性ロードマップ」の第一回目の四半期報告を行ない、このロードマップが成果を生んでいると発表しました。しかし、アイズ・オン・ザ・フォレストやグリーンピース、インドネシアのNGOグリーノミクスなどが、その報告書の分析を行ったところ、この「成果」には、世界が期待するような「評価」に値するものが事実上伴わないことが、明らかになりました。

【参考情報】アイズ・オン・ザ・フォレスト 記者発表資料

2012年9月21日

またしても保全効果なし APP社がジャンビ州での伐採一時停止を発表

 アイズ・オン・ザ・フォレスト(ペカンバル)
2012年9月5日、APP社は、2012年6月5日に発表した「持続可能性ロードマップ2020」の「第一回四半期進捗報告書ハイライト」を発表した。アイズ・オン・ザ・フォレストは、報告書「SMG/APP社:自然林破壊は続く」でこのロードマップを分析し、同社のロードマップは、インドネシアの自然林をさらに皆伐するためのものとしている。APP社のロードマップは、何らかの自然林の保護をするのではなく、同社のパルプ工場がインドネシアの熱帯林でパルプ生産を継続する、というだけの内容であった。

「第一回四半期進捗報告書」はこちら(APP社へのリンク)

APP社の進捗報告書には、言及に値する事柄は何ひとつない。同社が6月に発表したいわゆる「誓約」の追加として、一つの「ハイライト」を宣伝していること以外は。

「ジャンビ州の2つの独立系パルプ材供給会社、テボ・マルチ・アグロ(TMA)社とリンバ・フタニ・マス(RHM)社は、同地域のAPPグループのウィラカリヤ・サクティ(WKS)社と同様に、伐採許可地内に「保護価値の高い(HCV)」地域があるかどうかの評価期間中、自然林伐採を一時停止することに合意した。」
参照されているジャンビ州の地図によると、テボ・マルチ・アグロ(TMA)社は1ヵ所、リンバ・フタニ・マス(RHM)社は3ヵ所の伐採許可地を有している。アイズ・オン・ザ・フォレストの調査では、

  • テボ・マルチ・アグロ(TMA)社の伐採許可地では、計画された森林破壊はすでに終了したとみられる。
  • リンバ・フタニ・マス(RHM)社の伐採許可地の一つは、APP社が何年にもわたって「タマン・ラジャ保護区」として宣伝し、皆伐することはないと誓約している地域である。
  • リンバ・フタニ・マス(RHM)社の他の2つの伐採許可地では、自然林の皆伐はすでに終っている。
    自然林は、ほぼ残っていない。
     

したがって、アイズ・オン・ザ・フォレストは、今回の追加的な「伐採一時停止」の発表によって、追加的に保護されることになる自然林は実際にはない、と結論づけている。残っているわずかな森林は、すでに法律およびAPP社の以前の「誓約」によって保護されている。つまり、APP社の6月の発表と同様、9月5日の発表は、保全的価値をもたらすものではなかった。今回も、同社の世界的な販売促進のためのグリーンウォッシュを、また1つ生み出したに過ぎなかった。

【原文】Latest APP moratorium in Jambi without conservation gain - again

EoF News (PEKANBARU)-- On 5 September, APP published "Highlights of First Quarterly Progress Report" for its “Sustainability Roadmap 2020”, launched on 5 June 2012. Eyes on the Forest had analyzed the original Roadmap in “SMG/APP: The Pulping Continues”, calling it a roadmap to clear more natural forests in Indonesia. APP’s Roadmap failed to protect any additional natural forest while allowing its pulp mills to continue pulping Indonesia’s tropical forest unabated.

                             
Highlights of First Quarterly Progress Report can be found here
APP’s progress report contains nothing worth mentioning, except that the company advertises one "highlight" as an addition to its previous so-called commitments:
“Two independent pulpwood suppliers in Jambi – Tebo Multi Agro (TMA) and Rimba Hutani Mas (RHM) - have agreed to join APP’s own Wira Karya Sakti (WKS) company in the region, by suspending natural forest clearance with immediate effect while HCV assessments are conducted.”
According to APP’s accompanying Jambi map TMA has one and RHM has three concessions blocks. To the knowledge of Eyes on the Forest:

  • The TMA concession appears to already have finished its planned deforestation.
  • One of RHM’s concession blocks is the Taman Rajah reserve which APP has been advertising for years and has already been commited as areas that are not to be clear cut.
  • The other two RHM concession blocks have already finished their natural forest clearing . They have almost no natural forest remaining.

Eyes on the Forest thus concludes that the announcement of additional Moratorium are actually not protecting any additional natural forest. The little forest remaining is already protected by law and by previous “commitment” of the company. Thus, just as in APP’s original announcement in June, no conservation benefit was generated by APP's announcement this week. APP simply generated another piece of greenwashing for its global sales force.

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