APP社と違法伐採  PEFCが調査を要請


東南アジアのスマトラ島で熱帯林の伐採を続けるAPP社が、保護を義務付けられている樹種で違法に伐採された木材を受け入れていたことが明らかになりました。同社は第三者機関による認証を受けたことを以て、操業が持続可能なものであることを主張してきました。しかし、それらがいずれも裏付けのないものであることも、WWFなどにより、久しく指摘されているところです。急激な森林の消失が進むスマトラ島において一向に改まらない、APP社のこうした行為は、ますます島の貴重な生物多様性を危機に追い込む、最大の原因の一つになっています。

止まらない熱帯林破壊と環境広告

世界屈指の生物多様性の豊かさを誇りながらも、今最も急激に森が失われている、東南アジアのスマトラ島で、再び製紙会社、APP(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)社による森林破壊の一端が明るみに出ました。

同社は熱帯林と泥炭地を破壊しながら紙製品を生産し続け、その結果、トラやオランウータンといった野生生物は絶滅の危機に追いやられ、自然林は次々とアカシアなど紙の材料になるプランテーション(植林地)、すなわち「木の畑」に置き換えられています。

また、こうした植林地の開発は大量の炭素を排出し、地球温暖化の促進をもたらしているほか、地元住民との土地の利用権などをめぐる紛争の原因にもなっており、企業としての操業の在り方が問われています。

これに対し、APP社は「第三者機関によって操業が持続可能であると認められている」と再三にわたり主張。自社の環境配慮を、マスメディア向けの発信や自社広告を通じて、アピールしてきました。

しかし、WWFは2012年2月、調査によってこの主張が、「認められている」としていた認証機関や審査機関のいずれによっても支持されていない事実を明らかにしました。

明かされた違法行為

そして、2012年3月には、APP社が保護を義務付けられた樹種で違法に伐採された木材を受け入れている事実が指摘されました。これは、世界的に活動を行う環境NGO、グリーンピースが新たに発表した報告書の中で、追及しているものです。

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グリーンピースは1年におよぶ調査を通じて、APP社およびAPP社に紙の原材料を供給している会社が、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)と、インドネシアの国内法で保護が定められている樹種、ラミンを伐採しているという事実を明らかにしました。

そして、同団体は、違法に伐採されたラミンが、スマトラにあるAPP社の工場で見つかったという証拠をインドネシア警察に提出。「これは違法木材を『一切認めない』という同社が公に掲げる主張を覆すものだ」との厳しい主張を突き付けています。

これを受け、APPの紙を購入していた企業や、APPの操業を認証してきた認証機関からは、抗議の声が上がっています。

まず、アメリカのナショナル・ジオグラフィック協会はAPP社との関係を公式に断つと宣言。過去にAPP社との取引があったことを認めつつも、ここ数年間は取引を行なっていないことを強調しました。

さらに、APP社やその関連会社に認証を発行してきた、国際的な認証制度の一つであるPEFCは、認証にあたった審査機関、SGSに抗議するとともに、APP社に対して調査を要請しています。

WWFは過去に行なわれたAPP社との対話の中で、真に持続可能な森林の管理・利用を推進するよう、再三にわたり働きかけ、同社の誠意に期待してきましたが、破壊的な森林破壊や、それを糊塗する環境配慮をアピールする行為は改まる兆しを見せていません。

WWFは、こうした行為を改めるよう強く求めるとともに、同社が取引を行なっている世界の企業に対し、現状についての調査と情報発信を継続しています。

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