「地球温暖化対策に関する選択肢原案」に対する10の意見


日本のエネルギーの未来は、原発は、温暖化対策はどうなるのか? 2011年3月に起きた福島第一原発での事故を受け、現在日本の「エネルギー政策の見直し」作業が進められています。2012年5月28日の経済産業省による「エネルギー選択肢の原案」の発表に続き、6月上旬には環境省が「地球温暖化対策の選択肢の原案」を、提示しようとしています。WWFはこの環境省による原案提示に先立ち、作業部会の各委員に対し、10項目の意見を申し入れました。

未来に向け、真に安全で安心なエネルギーを!

2012年5月28日、経済産業省資源エネルギー庁の諮問機関である総合資源エネルギー調査会基本問題委員会により、「エネルギー選択肢の原案」が提示されました。

これは、2030年の国内の電力供給の内訳について、いくつかの選択肢を示したもので、電力全体に対して、自然エネルギーや原子力の占める割合を、それぞれ目標として明記したものです。

この原案にある原発の比率をもとに、環境省の中央環境審議会(中環審)地球環境部会が現在、「地球温暖化対策の選択肢の原案」を、提示しようとしています。これは、日本が今後、地球温暖化の防止にどう取り組むかを示すもので、6月上旬に提示される見込みです。

この提示に先立ち、WWFジャパンは下の10の項目について意見をまとめ、2012年5月31日に、中環審地球環境部会の各委員に対して、申し入れを行ないました。

この意見書は主に、地球温暖化対策を進める上で重要な役割を担う、中環審の地球温暖化対策部会が、原発の新規増設や稼働率の上昇を前提とした選択肢を排除し、真に温室効果ガスの削減につながる「省エネ」や「再生可能(自然)エネルギー」の導入を、最大限に高めた選択肢を提示すべきである、としたものです。

意見の10の項目は以下の通りです。

  1. 非現実的な原発比率の選択肢を残さないこと
  2. 原発は温暖化対策ではない:原発と温暖化対策がトレードオフであるような見せ方をすべきでない
  3. 温暖化対策は省エネの強度で決まる:省エネの強度を選択できる選択肢を出すべき
  4. 温暖化対策を行なわないという選択肢をはずすこと
  5. 対策の中の施策を吟味するべき:温暖化対策の高位ケースに上乗せした温室効果ガス削減最高ケースの提示も検討すべき
  6. 再生可能エネルギーの導入は最大限目指すのが必然:電力システム改革の必要性
  7. 経済モデルによる計算結果の見せ方は、前提条件を明らかにし、特定の利益に誘導する提示をしないこと
  8. 温暖化対策に法的な位置づけを与えること
  9. 2020年目標を同時に検討して結論を出すこと:国際公約した25%を提示する努力をするべき
  10. オフセットと国際貢献分を分けた検討を織り込むこと

この 1)中環審地球温暖化対策部会と、2)総合資源エネルギー調査会基本問題委員会から出された、それぞれの選択肢原案に加え、3)原子力委員会から出される選択肢案を合わせた3つの案を基にして、最終的には「エネルギー・環境会議」から、国民に向けた選択肢が提示されることになっています。

これは、おそらく6月中には提示されるものと考えられますが、その内容については、多くの国民が支持する選択肢を提示することと、政府が場を設けると約束した「国民的議論」の中で、国民がきちんと意思を表明できるようにする必要があります。

残念ながら、今までの3つの委員会における議論の過程では、原発に依存した既存のエネルギー政策を温存しようとする力が強く、安全かつ温暖化の進行を抑えるエネルギー政策へ大胆にシフトする選択肢は、弱められてきました。WWFジャパンはこの点について、強い危惧を抱いています。 

意見書

WWFジャパンのエネルギーシナリオ

 

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