2012年 中西部太平洋のマグロ会議(WCPFC)始まる


2012年3月26日からグアムにて中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の会議が始まりました。これは、25の国と地域が参加する、中西部太平洋のマグロ資源の保全と利用を目的とした国際会議です。日本は、刺身マグロ供給の実に40%をこの海域に依存しており、国内生産者にとっても、消費者にとっても、持続可能なマグロを考えるうえで、要となっている地域であるといえます。WWFはこの会議に参加し、各種マグロの資源管理のあり方と、WCPFCの方向性について提言を行なっています。

中西部太平洋のマグロ資源をめぐって

マグロ類の過剰な漁獲が今、世界的な問題になっています。
その資源管理に携っている、5つの国際機関の一つであるWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の第8回年次会合が、2012年3月26日から30日まで、米領グアム諸島で開催されています。

日本でも多く消費されている、メバチや太平洋クロマグロ、さらにビンナガやキハダといったマグロ類についての資源管理のあり方が議論されます。
特に注視されるのは、2008年に採択された管理として、メバチの漁獲量を2001-2004年の平均値から30%削減する、という措置の結果です。

この点を含め、WWFはWCPFCの加盟諸国・地域に対し、資源管理のための明確な目標を定め、事前の合意に基づいた漁獲管理の方式を採用するよう求めています。

また、少なくとも中西部太平洋において、マグロの持続可能な資源管理を実現させるため、主な4種の魚について、それぞれ以下の提案を行ないました。

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メバチ(Thunnus obesus)日本では刺身などで多く利用されている。

メバチ

メバチの資源回復させることを目的に、WCPFCの科学委員会が勧告した漁獲可能なレベルに従い、次の目標値として、2006年-2009年の平均的な漁獲量から32%以上減少させるか、2004年レベルよりも39%以上減少させることを求める。また、そのための実効性のある管理措置の採択を強く望む。

キハダ

獲り過ぎて資源回復ができないレベルに陥る前に、予防原則に則って、WCPFCの科学委員会が勧告する漁獲量の水準を維持し、2001年―2004年のレベルに抑えるよう求める。

太平洋クロマグロ

太平洋クロマグロの小型魚(0-3才魚)の漁獲量を、2002-2004年の漁獲レベル以下に、確実に抑えられるよう、すべての例外的措置をなくすよう求める。また、太平洋クロマグロの漁獲と生産を手掛ける全ての国に対し、実効性のある漁業管理の実施を求める。

南太平洋のビンナガ

太平洋沿岸諸国によるビンナガの「はえ縄漁業」について、管理措置の強化と混獲(不要な魚やウミガメなどを獲ってしまうこと)の問題への対応を支持する。しかし、効果的な隻数制限や努力量管理の早急な検討、および島しょ国地域の漁業管理導入が必要と考える。また、漁船の数の規制などによる効果的な管理措置が、WCPFCと各地域の管理機関によって導入されるよう求める。

注目されるWCPFCのゆくえ

このほか、マグロ漁の操業時に、違法な漁獲が行なわれていないか、随時状況をチェックする機能を確立するため、2013年までに、すべての漁船にオブザーバー(監視員)が乗船することが必要と考えています。
また、トレーサビリティの確保や適切なデータの蓄積のため、ICCAT(大西洋マグロ類保存委員会)などで導入されている漁獲証明制度の導入を強く働き掛けています。

さらに、WCPFCは混獲の問題に対する責任があることから、海鳥、サメ類、ウミガメ、海棲哺乳類について、十分な科学的調査に基づいた、適切な混獲防止の措置の策定を早急に導入するよう求めてゆきます。

WWFはグアムでの会合で、WCPFCの加盟国、協力地域、また非加盟協力国に対し、上記の問題点や勧告に留意するよう求め、働きかけてゆきます。

世界の海のマグロ類の資源管理にかかわる国際機関。海域や魚種によって管轄が異なる。
くわしく見る


記者発表資料 2012年3月30日

WCPFC:太平洋のまぐろ資源管理、失敗に終わる

【グアム発】3月30日、中西部太平洋まぐろ類委員会 (WCPFC)の第8回年次会合が閉幕。課題となっていたメバチ、キハダの過剰漁獲や漁船の増加の抑制などを目的とした、より実効性の高い措置への改定 は、各加盟国間の利害が対立した結果、失敗に終わった。これにより、世界で最も資源量が多いとされる海域での有効な資源管理措置に疑問が残ることになる。

特に漁獲による資源への負荷が高まりつつあるメバチについては、現在過剰漁獲状態にあるにも関わらず、状況を改善するための有効な打開策を打ち出せなかった。また、生産増加が懸念されるキハダについても、実効性のある管理措置は確立できなかった。

今回のWCPFCにおける成果としては、ヨゴレ(Carcharhinus longimanus:サメの一種)や海棲哺乳類の保全措置が採られた。一方、巻き網漁業によって混獲されるジンベイザメや脆弱なマグロ類の保全措置に対しては無策であった。

WWF は、ビンナガを漁獲対象とした中国や台湾による延縄(はえなわ)漁船の急激な増加に対しても懸念を抱いている。ビンナガの生産量は近年倍増しており、同時 に海鳥など絶滅の恐れのある種の混獲のリスクを増大させている。閉幕に際して、WWFは環境保全団体を代表し、WCPFCに対して次回会合でビンナガの保 全管理措置を採択するよう求めた。この意見表明は、日本や太平洋島嶼国によって支持された。

WWF国際漁業プログラム・マグロ保全担当であ るダニエル・サダバイは「マグロ資源の持続可能な管理に向けた歩みは、不明瞭で落胆するほどの遅さであり、後退した感が否めない措置もある。優良な漁業管 理措置を導入しない限り、WCPFCは世界で最も豊かな漁場の一つである中西部太平洋海域の将来を危ういものとしている」と述べた。

WWF はWCPFCおよびその加盟国に対し、次回会合において速やかに予防原則に基づいた管理措置の採択が実現されることを強く要望する。消費者や流通関係者に よる持続可能なまぐろの需要が世界的な増加傾向にあるなか、WCPFCが予防原則に従ったまぐろ管理措置の採択に失敗したことは極めて遺憾であると、 WWFのサダバイは述べている。

太平洋海域におけるまぐろ漁業は、漁獲努力量の削減を奨励するような仕組みが真剣に検討されるべき時が来て おり、太平洋沿岸域で長期的な経済活動を可能とする、持続可能な漁業管理の仕組みづくりに本腰を入れて向き合うべきである。WWFジャパンの山内愛子は、 「WCPFCは、太平洋のまぐろ漁業に対する責任をしっかり果たすべきであり、特に規制が必要となっている努力量については、漁船数を資源量に見合った適 切な数へ抑えるよう道筋を定めるべきである」と述べている。

注釈

予防的なアプローチによる漁 業管理は、長期的に検討した際に資源状況や環境の健全性に許容不可能なリスクをもたらす操業の禁止を原則とする。予防的なアプローチの導入とは、多くの場 合、事前に合意した管理措置の指針(または「漁獲管理方策」)に基づいて意思決定することである。

 

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