インドネシア:ボルネオ島でのREDD+デモンストレーション事業


続く森林減少の中で

インドネシアでは毎年、117万ヘクタールに及ぶ森林が失われており、世界で最も森林減少・森林劣化率が高い国となっています。この森林損失の原因には、合法違法を問わず非持続的な伐採が行なわれていること、森林火災、アブラヤシ農園や鉱山事業、また小規模なコミュニティによる農園のために、森の皆伐が行なわれていることが挙げられます。

そのような中で、ボルネオ島(カリマンタン島)の東カリマンタン西部に位置するクタイバラ地区には、今も240万ヘクタールに及ぶ森林が、連なって残されています。

ボルネオ島は、ゾウと大型類人猿(オランウータン)、そしてサイが、同じ生息地に見られる、地球上でも2カ所しかない場所の内の一つであり、未発見の種が今も多く残されていると思われる島です。

特にその中央部の2200万ヘクタールに及ぶエリアは「ハート・オブ・ボルネオ」と呼ばれ、世界で最も生物多様性が豊かな場所の一つとして、インドネシア・マレーシア・ブルネイの3カ国はその保全と持続的管理を共同で宣言しました。WWFも、保護区づくりと持続的な森林管理を通じ、ボルネオ島の3分の1に当たるハート・オブ・ボルネオの森林保全に協力しています。

このハート・オブ・ボルネオに位置するクタイバラ県には、現在20万ヘクタール以上に及ぶアブラヤシ農園の開発計画があり、持続的な開発がなされるよう早急に対策を取らなければなりません。

WWFのREDD+事業

WWFはクタイバラで、先住民や地域コミュニティが意思決定や公平な利益配分にしっかりと参加した姿を見せるべく、準国レベルのREDD+事業モデル作りを行っています。併せて、官民様々なステークホルダーと連携し、インドネシアのREDD+戦略と方法論づくりに参画しています。

REDD+からもたらされる金銭的なインセンティブがインドネシアの森林保全に繋がるには、それ以外の非常に利益が上がる土地利用、すなわちアブラヤシの農園開発や鉱山事業、木材その他資源ビジネスと、競合できるだけのものでなければなりません。

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クタイバラ件では、コミュニティフォレストリーへのコンセッション(伐採権)付与をWWFは支援しています。

インドネシアの法律では、コミュニティのグループが森林内の資源の管理と利用にあたる「村落林(Hutan Desa)」という方式を、森林管理方法の一つとして認めています。WWFはクタイバラ地区にある52000ヘクタールの森林を村落林とするよう提案していましたが、2011年5月に地区林業局により認可されました。村落林となったことで、コミュニティが森林を管理することが出来るようになったのです。コミュニティによる土地所有が強化され、権利が守られただけでなく、コミュニティの収入を増やす機会ももたらされたのです。

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今後REDD+事業がクタイバラで実行されることで影響を受けるコミュニティからは、自由で事前の情報に基づく合意(FPIC Free, prior and informed consent)を得なければいけません。WWFは2011年5月にリンガン・メラペ村でREDD+に関する初のワークショップを開催しました。その結果、村の森で炭素計測活動を実施することと、そのプロセスに村として参画することに同意してくれました。

WWFはまた、クタイバラ県の木材会社であるラタ・ティンバー社(PT Ratah Timber)に対し、この地域の森林では低インパクト伐採を実施するよう働きかけています。ラタ・ティンバー社との合意により、炭素計測を実施するための恒常的サンプリングプロット(調査区画)を設置中です。

さらに、環境NGOネイチャー・コンサーバンシーとも協力し、アメリカ合衆国政府とインドネシア政府間で2850万ドルの環境スワップが行なわれることとなりました。
このスワップは、クタイバラを含めたハート・オブ・ボルネオの重要地域3カ所で、グリーンな経済成長とコミュニティ開発を支援することを目的としています。アブラヤシの農園が森林ではなく荒廃地に開発されるよう持続的土地利用計画に投資したり、保護区管理の向上に資金を充てることが計画されています。

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