eシフト・市民委員会:「脱原発・エネルギーシフトの基本方針」


現在、政府の会議において「エネルギー基本計画」の改定に向けた議論が進められており、序盤の論点整理や基本的な方針を示した文書などが発表されています。WWFジャパンも参加する「eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)・市民委員会」では、こうした動きに対する、市民としての代替案の作成を進めています。その第1弾として、日本のエネルギー基本計画の策定に向けた基本的な考え方をまとめた「脱原発・エネルギーシフトの基本方針」を発表しました。

2011年12月8日 eシフト・市民委員会による提言 

はじめに

東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、日本のエネルギー政策の見直しが政府で始まっています。

これまで、エネルギー政策は人々の生活に大きな影響を与えるものでありながら、ごく一部の人々の間で決められてきました。しかし、今回の未曾有の悲劇を受け、日本がエネルギーについてどのような選択をするべきなのか、多くの人々が真剣に考え始めています。「このままではいけない」と、多くの人々が真摯に感じています。

これから日本政府がエネルギー政策の今後について行う決定は、人々のそのような気持ちを受け止め、反映させるものでなければなりません。

私たちeシフト・市民委員会は、エネルギー問題について様々な形で関わってきた市民団体・研究者・NGO等が集まったグループです。これから、日本がどのような決定をするべきか、市民の立場から検討し、その考えを1つの案としてここに取りまとめました。これは、先ほど総合資源エネルギー調査会基本問題委員会がとりまとめようとしている基本方針に対するオルタナティブ(代替案)として提示するものです。市民の立場から、多くの市民が感じている、エネルギー政策の「シフト」のあり方を、具体的な案としてまとめました。

「エネルギー政策は知らぬ間に決められていた」のではなく、人々が、より明るいエネルギーの将来を選び取るための案として、この「脱原発・エネルギーシフトの基本方針」が役に立つことを切に願っています。

この基本方針案は、まず、今後のエネルギー政策を考える際に鍵となる国内と世界に関する現状認識についての説明から入ります。そして、その2つを受けて、10の「原則」と7つの「柱」を提示しています。

今後、政府が検討する「エネルギー基本計画」の代替案を検討していくに当たっても、これらの「原則」と「柱」を基礎として、検討をしていきます。

1.現状認識(1)東日本大震災および原発事故が明らかにしたもの

1−1.原子力発電所のリスク

東日本大震災と原発事故は、まず何よりも、原子力発電所の安全神話を根本から突き崩すものでした。地震による原子炉へのダメージ、津波による非常用電源の喪失というハード面での不備だけでなく、その後の対応においても事態を悪化させてしまったというソフト面での不備もあり、原子力というエネルギー源に頼ることのリスクを不幸な形で明確にしました。原発一般の危険に加えて、とりわけ、地震国日本における原発の危険性も明らかにしました。さらに、原発で日常的に働く人々に被曝を強いているという現状も、改めて認識されるようになりました。

1−2.放射能汚染の拡大

原子力発電事故によって広がった放射能汚染により、周辺住民は日常生活を奪われ避難を強いられることとなりました。また、放射性物質は、食品・水、海洋・土壌の汚染という形で日本中に拡散し、経済活動・健康的な日常生活を脅かす問題に拡大しています。現在も続く被害状況から、原子力発電はひとたび事故が起こると大惨事を招き、持続可能な社会の構築を根底から壊してしまうものとなるということを知らされることになりました。

1−3.既存エネルギー・システムの脆弱性

原発事故以降、もう1つ明らかになったのは、電力を始めとする日本のエネルギー・システムが、意外なほど脆いという事実でした。
地域独占体制の下で地域間の連携が軽視された結果、系統が分断され、地域間の電力の融通に限度があること、巨大電源への依存によりその電源が失われた時の影響が広範囲に渡ること、非常時に代替となるようなエネルギー源の確保に時間がかかることなど、エネルギー・システムの脆弱性の観点から多くの教訓を残しました。

1−4.技術万能主義の失敗

これまでのエネルギーに対する考え方は、「技術の発展によって、問題は常に乗り越えていける」といういわば技術万能主義でした。技術が発達すれば、原子力の安全性は確保され、化石燃料の問題も解決されると信ずる一方で、エネルギーを大量に消費することが前提となる社会構造が省みられることが少なかったといえます。その結果として、私たちは、環境問題や原子力に関連する様々な問題を引き起こしてきてしまいました。技術の発展が重要であることは変わりませんが、全ての問題について「いずれ技術が解決してくれる」という考え方の危険性が、徐々に明らかになってきました。

1−5.情報公開の遅延・情報の不透明性・伝達方法の問題

エネルギーをめぐる情報の公開性やその公開・普及のあり方についての問題が浮き彫りになりました。まず、エネルギーをめぐる情報が、驚くほどに公開されていません。エネルギーの消費実態が統計としてそもそも整備されていないところもあれば(例:業務部門)、たとえ整備されていたとしても、その公開が阻まれているケースが多くあります(例:工場等のエネルギー消費)。また、政策を講じるために必要なエネルギー関連情報が共有・公開されていないことも明らかになりました。原子力に関する情報は、極めて不透明な形でしか情報が公開されてきませんでした。
さらに、仮に公開がされたとしても、必要なタイミングでは公開されなかったり、極めて解り難い形での公開であったり、その中身の正確性に問題があったりします。震災直後の計画停電に関連した情報の伝え方は、大きな混乱を巻き起こしました。
多くの国民が、エネルギーのあり方を議論するにあたって必要となる情報が、適切な形で公開されていないことが解ってきました。

1−6.さらなる省エネルギーの可能性

震災・原発事故によって引き起こされた電力供給不安は、節電に関する取組みを促しました。一方では緊急的かつ無理に実施されたものもありましたが、他方で、人々の生活や企業の生産活動の中にあった無駄な電力消費に改めて目を向けるきっかけにもなりました。
今回の危機の中で見いだされた節電および省エネルギーの可能性を、中長期の取組みにつなげていくことが重要です。

2.現状認識(2):世界の潮流

2−1.自然エネルギーの台頭

2008年のリーマンショック以降、世界経済は混迷の様相を強めています。多くの先進国各国の経済状況は悪く、経済の加速度的な成長を見せていた新興国においても、一部その成長の鈍化が見られます。
しかしそのような中にあっても、近年、自然エネルギーは世界的に急速な勢いで拡大しています。REN21の世界自然エネルギー白書(Global Status Report 2011) によれば、2009年の時点で、自然エネルギーは世界の最終エネルギー消費の16%を占めています。また、2010年中に増えた世界全体の発電設備194GWのうち、約半分が自然エネルギーの増加であったと報告されています。
この自然エネルギーの急激な伸びは、ビジネスや雇用の拡大にも繋がっています。自然エネルギーに投資された金額は、2009年の1,600億ドルから2010年の2,110億ドルへと伸びています。2004年の220億ドルと比較すれば、わずか7年の間に10倍近く市場が成長したことになります。
自然エネルギーは、新たなエネルギー源として成長をしつつ、世界経済の重要なけん引役でもあるといえます。

2−2.化石燃料依存の限界

「安い石油の時代は終わった」と国際エネルギー機関(IEA)も2010年の報告書において認め、いまや、多くの研究者の間で、石油を始めとする化石燃料の枯渇へ向けてのプロセスが始まっていることが認識されています。これに呼応するように、非在来型の化石燃料の活用が広まっていますが、他方で、そうした非在来型の化石燃料はコストが高い上に、その開発や利用が自然環境に与える懸念も広がっています。

2−3.緊急性を増す気候変動対策

CO2を始めとする温室効果ガスの排出量は世界的に増え続けています。北極海での夏期の解氷面積の劇的な減少や、世界的な異常気象の多発、大陸氷河の減少による淡水資源の減少、生態系への影響など、事態は深刻化しています。こうした気候変動による影響は、単なる環境の変化にとどまらず途上国の発展の足かせとなり、また、先進国経済にも悪影響を与え得るものです。
世界的に、気候変動問題への対策が急務となっており、危険な水準での進行を食い止めるために残された時間はあまりありません。このような状況を受け、既に世界各国で気候変動問題への対策が進んでいます。

2−4.原子力ルネッサンスの頓挫

福島原発事故以降、いくつかの先進国が原子力政策を転換しました。ドイツでは、2009年以降、脱原発政策を見直す流れが強まっていましたが、福島原発事故以降、再度その方向を転換し、2022年の全廃を決めました。また、スイスでも、2034年を目処とした脱原発の方向性が打ち出され、イタリアにおいても国民投票で原発政策が否定されました。原発には前向きと言われるアメリカにおいても、実質的には原発の建設はほとんど進んでおらず、推進国フランスにおいてすら、原発政策を問う動きがでてきています。最近の研究では、原子力発電所は作れば作るほど、高コストになっていく構造があきらかになってきたことも背景にあると考えられます。少なくとも先進国に関しては、原子力のルネッサンスと言われた潮流は頓挫しています。

2−5.新興国の台頭

世界全体としてみれば、エネルギー需要拡大の傾向は止まることなく、今後も増え続けることが予測されています。人口が70億人を超え、90億人へと近づいていく世界の中で、持続可能な経済社会を築きながら、エネルギー消費を減らしていくことは、世界の一層大きな課題となっていきます。特に途上国では、新興国を中心に、今後も大きな需要増加が予測されています。
そのような状況の中、途上国では、中国やインドなどの新興国における原発建設計画がありますが、それらの国々においてすら、本当に原発が計画通りに建設されるかどうかは不透明です。さらに、途上国の中にも、改めて見直そうという動きがあります。

3.エネルギーシフト実現に向けた10の基本原則

以上の課題および世界の潮流を踏まえ、今後作成されるエネルギー基本計画は、以下の原則に基づくものとするべきです。

1)安全・安心の確保

エネルギーの供給や消費によって、人々の生活や健康が損なわれることがないようにしなければなりません。また、危険の存在によって、人々に不安を与え続けることがないようにしなければなりません。これからのエネルギー・システムは、自然災害への耐性も強く、大規模な災害が起きた際にも、人々が生活を営む上で最低限のニーズを満たすことが必要です。

2)持続可能性の達成

地球規模および世界各地での環境、貧困・開発問題は、多くの地域・分野で悪化しています。有限な資源および環境の中で、現在世代および将来世代にとっての公平性を維持しつつ、多様な価値を尊重した社会経済活動を営むことが必要です。新しいエネルギー社会のあり方は、それらの問題を悪化させず、解決へと向かわせるものでなければなりません。

3)真の自給の追求

日本の国土は自然資源に恵まれています。途上国が急速に発展をしており、エネルギーの安全保障は重要な課題です。国内の自然資源を有効に活かし、日本に必要なエネルギーの大部分を国内で自給できる体制をつくることが必要です。

4)気候変動の抑制

ますます深刻化している気候変動問題に対処することは緊急かつ重要な課題です。電気や熱等のエネルギーの供給側だけでなく、消費側のシステムも温室効果ガスの排出量を最小にするものでなければなりません。

5)地域資源を活かした地域社会の活性化

災害対策や地域活性化のためには、一ヶ所に集中して依存する従来のエネルギー・システムを改め、分散型で、地域の自然資源等を活かしたエネルギー・システムを構築することが必要です。また、その活用を通じて、地域社会の活性化がはかられるべきです。

6)世界のエネルギー貧困解決への貢献

世界には、未だに14億人もの人々が、電気にアクセスできていないという「エネルギー貧困」が存在しています。日本におけるエネルギー技術や産業の発展は、こうした問題の解決につながるものでなければなりません。

7)経済成長の再考

これまでの日本のエネルギー供給計画は、従来型の経済成長を前提に考えられていました。これからは、持続可能な豊かさを追求する中で、経済発展とエネルギー供給の関係を見直す必要があります。成長ではない「満足度」の指標が求められています。

8)核不拡散

日本の原子力政策は、再処理や高速増殖炉など世界の核不拡散戦略に抜け道をつくりかねないプルトニウム利用政策です。大量の核兵器保有にも通じるようなプルトニウム保有を前提とした原子力政策は改められなければなりません。被爆国であり非核三原則を有する立場からも、核の拡散につながるような政策は断じて避けなければなりません。

9)国際平和

エネルギー資源をめぐる権益の争いは、しばしば国際紛争の直接的・間接的原因となってきました。地下資源ではなく、地表の太陽光や風、水、森林等を活用することで、技術協力や人材交流を進め、むしろ、国際平和の希求に役立つエネルギー利用とならねばなりません。

10)情報および政策決定へのアクセス

これからのエネルギー政策は、市民・国民が全員で議論し立案して行くようなものとなるべきです。市民・国民が積極的にエネルギーに関係する意思決定に参画するためには、まず広くエネルギー関係情報が公開され、誰でも政策決定プロセスへのアクセスができるよう、保障されなければなりません。

4.エネルギーシフト実現に向けた具体的な8つの柱

(1)自然エネルギーを飛躍させ、分散型エネルギー社会を構築する

  • 野心的な普及目標の設定:自然エネルギーの大幅な拡大に向けた、野心的な目標を設定することが必要です。少なくとも、2020年・2030年・2050年のそれぞれの時点について、一次エネルギー供給/電力/熱に自然エネルギーが占める割合についての目標を設定するべきです。
  • 固定価格買取制度の充実:2011年8月に成立した固定価格買取制度は、自然エネルギー普及へ向けた第一歩と言えます。しかし、肝心の買取価格が未設定であることや運用において課徴金上限の設定可能性が残っているなど、実際の制度運用の中で解決すべき課題もあります。上記の目標達成手段として充実させていく必要があります。
  • 導入支援策:自然エネルギーの導入には、初期において費用が高くなることが多いため、支援が必要です。補助金、ファンド、特別な融資など、各地域やエネルギー源の特性にもあわせた支援策が必要です。
  • 持続可能性基準の設定:自然エネルギーの推進が、無秩序な開発を招き、自然環境や人々に悪影響を与えるものとならないように、必要に応じて自然エネルギー源に関する持続可能性基準を設定することが必要です。
  • 優先接続・発送電分離の実現・総括原価方式の廃止:既存の電力システムを改め、地域分散型のエネルギー・システムを作り、さらに各地域間の連携を強化することが必要です。需給のバランスをとれるスマートグリッド、自然エネルギーの優先接続、発送電分離・電力自由化も推し進めるべきです。
    膨大な原発建設費用や広告宣伝費、寄付金等も含めた電力会社のコストを電力料金に転嫁する総括原価方式は廃止するべきです。
  • 地域主体のエネルギー社会構築:地域が、地域の自然資源を有効に活用し、その地域の特性に合ったエネルギー源の開発・利用をできるような体制(権限・財源・人材等)を整備することが必要です。たとえば、地域の農林水産業の発展と相乗効果を生み出すことも検討されるべきです。また、自然エネルギーからの「熱」を有効に活用できる体制・街作りも検討されなければなりません。

(2)エネルギー大量消費社会からの脱却

  • 「足るを知る」省エネへ:これまでの省エネは、その先に「更なるエネルギーの大量消費」が前提とされていました。それは、エネルギーを大量に消費するような社会のあり方が「豊かな社会」だと考えられていたからです。
    エネルギー消費は人々の生活を支え、便利にする重要な要素ではありつつも、それを徒に増やし続けることが、必ずしも幸せで健康的な社会に繋がるわけではないことに、多くの人々は既に気がつき始めています。これからは、本当に必要なエネルギー消費の水準はどれくらいなのかを見据えながらの省エネ、つまり、「足るを知る」省エネが必要です。
  • 総量目標の設定:これまで、省エネルギーに関する目標といえば「GDP当たりの最終消費エネルギー」などの形での目標が掲げられることが多くありました。こうした「原単位目標」は重要ではありますが、同時に、エネルギー大量消費社会そのものから脱していくための、総量での目標(エネルギー消費量)も設定していくべきです。
  • 環境政策強化による雇用確保へ:日本ではエネルギー多消費産業による温室効果ガス排出が全体の3分の2を占めています。しかし一方で、この産業が占めるGDPと雇用は1%以下です。
    こうしたエネルギー多消費産業でCO2総量削減義務や経済的インセンティブを導入し、かつ再エネ固定価格買取制度などを導入すれば、対策投資発注が他の産業に出て、雇用の確保にもつながります。しかもエネルギー多消費産業もエネルギーコストを削減できることになり、国際競争力の強化につながります。日本全体としてのエネルギー大量消費を減らし、エネルギーリスクを軽減させ、国内産業強化と雇用確保のためにも、エネルギー多消費産業を中心とした排出削減政策、対策需要を引き出す政策が必要です。
  • 省エネ政策の一層の強化:省エネ法やそれに基づくトップランナー基準など、これまでの省エネ政策は、一定の成果を挙げてきました。
    しかし、今後の日本が置かれる状況や世界のニーズを考えれば、これまでの成果に安穏とせずにさらなる省エネ促進が必要であることは明らかです。そのためには、省エネ政策の強化が必要であり、特に、トップランナー基準の拡大・深化、住宅・建築物の省エネ基準の義務化、経済的手法の導入、省エネルギー機器導入時の財政支援策の拡充、工場・事業所等のエネルギー消費量等の公開、スマートグリッドの活用、街づくり等での効率的な交通機関の整備を奨励、素材を通じた省エネルギー対策の強化などが必要です。
  • 個別機器や対象にとらわれない全体的な省エネ:これまでの省エネは、個別機器の技術や対象機器が偏重されるあまり、地域全体やシステム全体としての効率性がないがしろにされてしまってきた傾向がありました。
    たとえば、家庭の中の個々の機器の省エネ性能が上がっても、結果としてよりエネルギーの浪費を促すような状況になってしまっては意味がありません。これは、地域や部門といった単位でも同様です。全体的に見て、省エネが達成される仕組みづくりが必要です。

(3)原子力発電所を全廃する

  • 原子力発電所の全廃方針を明確化:福島原発事故のもたらした損害と影響を見れば、もはや原子力発電に依存する選択肢はあり得ません。原子力発電をエネルギーの選択肢から外し、このまま全廃していくことを明確にするべきです。
    既存原発の運転停止および廃炉プロセスの管理:運転停止をした原子力発電所の使用済核燃料の取り出し、中間貯蔵などの方針を明確にし、核廃棄物となる建屋や部品の放射線レベル低減のために時間をかけ、作業者の被曝を減らし、安全に廃炉へと持っていく工程表を準備するべきです。
  • 核燃料サイクルの廃止と共に、適切な使用済み核燃料の管理:既に破綻している核燃料サイクル政策は廃止し、六ヶ所村の再処理施設への使用済み核燃料持ち込みは中止すべきです。また、原子炉建屋上部のプールでの使用済核燃料保管は非常に危険です。せめて、敷地内での冷却保管、さらに乾式貯蔵へと切り替えていくことが必要です。
  • 核廃棄物の処理:今後は原発の運転を停止し、核廃棄物を発生させないことが重要である一方、既存の原発から発生してしまった核廃棄物については、適切な管理の下に処理を行う方法を決定していかねばなりません。その際には、海外に押し付けたり、特定の地域に負担を押し付けたりすることがないようにしなければなりません。
  • 原発輸出の禁止:自国内での安全すら確保できない技術を、他国でのエネルギー需要増に乗じて輸出する政策はやめなければなりません。安全でコントロールしやすい自然エネルギーの輸出、技術協力に切り換えるべきです。

(4)化石燃料依存から脱却する

  • 化石燃料依存からの脱却を前提とした政策:各分野での脱炭素化を進めるとともに、化石燃料の調達方針にあたっても、この方針を前提とするべきです。
  • 非在来型化石燃料には頼らない:非在来型化石燃料として台頭してきているメタンハイドレート、シェールガス、タールサンド等には依存するべきではありません。

(5)産業としてのクリーンエネルギー技術を育成・輸出し、同時に雇用を創出する

  • 研究開発支援:現状、原子力偏重である研究開発予算等を、自然エネルギー重視に変えていくべきです。
  • 自然エネルギーおよび省エネルギー技術海外普及へ向けての体制整備:海外での技術ニーズを把握し、ハード面だけでなく、ソフト面も含めた総合的なパッケージを提供できるような体制を整えるべきです。
  • 自然エネルギーや省エネルギー普及のための人材育成体制:これからの自然エネルギー普及や省エネルギーの社会的な実施に備え、人材の育成に国内外で取り組むべきです。

(6)政策決定プロセスに市民がより参画できるようにする

  • 政策決定プロセスの透明化:政策決定に関する情報を、その根拠も含め、前もって一般に公開し、人々が参画しやすい環境を確保するべきです。また、インターネットを活用し、議論自体をオープンかつ多くの人が参加できるようにするべきです。
  • データ公開(各種統計など):政策決定に使われる政府が有する情報・データ等、及び、事業者が保有する情報・データ等ついては市民に対して、アクセスしやすい形で公開がされるべきです。

(7)社会の豊かさを重視したエネルギー・システムを目指す

  • 経済成長とエネルギー消費の分離:これまで、経済の成長とエネルギー消費は連動するものと考えられてきました。これが、エネルギー大量消費を生み出す一因となってきました。大量消費を改めるためにも、経済成長とエネルギー消費を明確に分離することを、政策目標として掲げるべきです。このためには、消費されるエネルギーの確保を目的化するのではなく、エネルギー消費によって何を達成したいのか、つまり、どのようなエネルギーサービスを期待するのかの見定めも必要です。
  • 社会問題の解決の文脈におけるエネルギーの役割の確認:これまで、日本や世界に存在する様々な社会問題(地域社会の衰退・過疎化、格差の拡大、農業の衰退等)とエネルギー政策は、互いに独立しているかのように議論がされてきました。しかし、持続可能な社会を形成していくためには、エネルギー政策でも、明示的に、「社会問題の解決に役に立つのか」を問うていくことが必要です。

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