エネパネ「発電の費用に関する評価報告書」を発表


2011年10月21日、自然エネルギーへのシフト(転換)を推進する団体の連合体eシフトの中に作られた「エネルギーシナリオ市民評価パネル(エネパネ)」は、「発電の費用に関する評価報告書」を発表。2004年の政府試算と3.11後に複数の機関・専門家が行った発電コスト分析を比較し、原子力発電のコストが低く見積もられていることなどの問題点を浮き彫りにしました。報告書は、エネルギー政策の見直しに際して、6項目を勧告しています。

政府の議論、省庁の試算を市民の立場から評価

2011年10月21日、エネルギーのあり方として、自然エネルギーへのシフト(転換)を推進するeシフトのなかに作られた「エネルギーシナリオ市民評価パネル(エネパネ)」は、「発電の費用に関する評価報告書」を発表しました。

エネパネは、各種エネルギーシナリオや、関連論文・情報について評価・分析し、自然エネルギーへのシフトを進める観点から、その成果を取りまとめて発信する小委員会です。

WWFジャパンを含む、エネルギーや地球温暖化問題に関わるNGOのメンバーが参加して共同作業を行ないます。

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現在、政府のエネルギー政策の見直しの議論が始まり、官邸の「エネルギー・環境会議」下の「コスト等検証委員会」や内閣府の「原子力委員会」下の「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」で、発電コストや原発事故コストが再検討されていますが、今回の報告書は、これを市民の立場で評価し、見直し議論に影響を与えようというもの。

過去に原発が安いコストを理由に推進されてきたように、コストの議論は、今後のエネルギー政策に大きく影響します。

そこで、エネパネの最初の作業として、既存の発電コストに関する試算や、3.11後に行なわれた試算を分析・評価し、その比較や問題点を洗い出して報告書にまとめました。

分析の結果が指摘するもの

明らかになった問題の一つが、これまでのコスト計算では、考慮する費用の範囲が非常に限られているということです。つまり発電の費用に関する基本的な考え方から見直す必要があるのです。

これまでの発電コストは、電力会社の視点に立つ狭い意味で捉えられ、電気料金に含まれる費用(原発に関連する政府予算、広告宣伝費、自治体への寄付金など)も計算から外され、さらに、環境(地球温暖化や地域の自然破壊)や原子力事故リスク(放射性物質汚染など)といった社会的な費用は、算定不能として考慮されてきませんでした。

逆に、環境の保全によって得られる便益、省エネ推進や再生可能エネルギーの増加とそれによる化石燃料やウラン燃料の輸入減少によるエネルギーの安全保障、地域活性化や雇用の増加など、プラス面のさまざまな便益については、コストという視点では評価・検討されてきませんでした。

今後は、従来のコスト試算の範囲を超え、環境、事故リスク、損害賠償、地域経済、雇用といった、これまで外部費用とされていた点も考慮に入れた費用分析を行なう必要があります。

また、福島第一原発事故によって、空気・水・土壌の広範囲にわたる深刻な放射能汚染が起き、さらにそれが環境・生活・社会・経済にも途方もなく大きな被害をもたらしていますが、この現実を受け止め、エネルギー政策の見直しに反映させなくてはなりません。

事故の検証と被害への賠償、そして将来世代にわたる健康被害も含めた予測とその対応について、議論の大前提として共有するべきです。

ただ、一つ忘れてならないのは、こうした損害すべてが貨幣価値に換算できる訳ではないということです。この報告書でも勧告しているように、原発を費用だけで検討すること自体検証される必要があるのです。

報告書には、得られた知見と、それに基づく勧告を盛り込みました。今後、政府が進めていくエネルギー政策の見直し議論に、しかりと組み込まれるよう働きかけていく予定です。ぜひ、今後の議論の行方にも注目してください。

関連情報

共同記者発表資料

発電の費用に関する評価報告書(PDF)

eシフトについて

脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会 tel: 03-6907-7217  fax: 03-6907-7219

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