アムールヒョウの森に200人のボランティアが集結!


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

極東ロシアの沿海地方(プリモルスキー地方)では、5月15日は「チョウセンゴヨウ(紅松)」の日です。栄養価の高い実をつけるチョウセンゴヨウは、森に生きる野生生物にとって貴重な栄養源となります。しかし今、森の豊かさを支えてきたとも言えるこの樹種は、伐採や森林火災のために急激に減少しました。この日、絶滅が危惧されるアムールヒョウが生息する森で、ロシア中から集まった200人のボランティアにより、約3万本のチョウセンゴヨウの苗木が植えられました。

森を支えるチョウセンゴヨウの危機

日本から海を挟んでほど近い極東ロシア。そこに生きる絶滅の危機に瀕するシベリアトラ(アムールトラ)やアムールヒョウなどの大型の肉食動物は、森の生態系の豊かさを象徴する生き物です。

トラやヒョウは、シカやイノシシなどの草食動物が、森に生息していなければ、生きることができないからです。そして、シカやイノシシなどの存在は、森に多様な草や木、木の実などがあることの証でもあります。とりわけ、栄養価の高い実をつけるチョウセンゴヨウは、極東ロシアの森の生態系を支える重要な樹種です。

しかもこの木は、森の豊かさを支えるだけでなく、昔からこの地域に暮す人々の貴重な収入源にもなってきました。チョウセンゴヨウの実は、料理に使われる「松の実」として、ロシア国内はもちろん、隣国の中国や朝鮮半島、日本、アメリカなどにも輸出されているからです。

ところがチョウセンゴヨウは、木材としての商品価値も高く、これまで大量に伐採されてきました。そのためロシア政府は、2010年7月に、「ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)」の付属書3に掲載し、違法伐採の取締りを強化。そして11月には、史上初のトラの保護回復のための国際会議としてロシアで開催された「世界トラ保護会議」に先立ち、伐採を全面的に禁止しました。

しかし、毎年発生する森林火災の影響もあり、森の劣化は深刻で、かつての豊かな生き物たちのつながりは、危機的な状況に置かれています。

200人の願いをこめて

そのため、ロシア国内から集まった200人のボランティアが、森の回復のために約3万本のチョウセンゴヨウの植林を行いました。苗木が植えられたのは、2011年5月15日。沿海地方で定められたばかりの新しい休日「チョウセンゴヨウの日」です。

植林は、この沿海地方のハサンスキー地域(Khasanskii District)で、シティバンクの支援により行なわれました。そして偶然にもこの日、付近で、まだ新しいアムールヒョウの足跡が発見されました。極東ロシアに生息するヒョウの亜種で、世界にわずか40頭といわれるアムールヒョウの一頭が、この地に生息している証です。

たくさんのボランティアを前に、カサンスキー地方政府の代表アレクサンドル・ナリズニー(Aleksandr Naryzhnyi)は、「みなさんが心を込めて植えた苗は、きっと大地に根付き、成長することでしょう。みなさんの温かい気持ちが、この若い木々に宿りますように」と述べました。。

森の回復へ 長い道のり

WWFは今後50年で、沿海地方南西部の針葉樹と落葉樹が織り交ざる温帯林(針広混交林)の森を1.5倍にする目標を掲げています。この日行われたアムールヒョウの森での植林も、その目標を達成するためのものです。

しかし、たくさんの苗木を植えたからといって、森の豊かさを取り戻せたことには到底なりません。新たに植えられた苗が、十分に成長し実をつけるようになるまでは、何十年という長い年月がかかります。森林火災や雑草などから若い木を守り、いったん劣化してしまった森を元の状態に回復させることは、決して簡単なことではありません。

そのためWWFでは、森を回復させる取り組みと同時に、残っている森をこれ以上失わないために、森林火災の防止やこの一帯を「アムールヒョウの森」として国立公園化することを目指し、国や地域の行政、住民、土地の管理者などへの働きかけにも力を入れています。

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