野生のトラの未来を決める 世界トラ保護会議「トラサミット」


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

2010年11月21日から24日まで、ロシアのサンクトペテルグルクで、世界トラ保護会議「トラサミット」が開催されます。トラが生息する13の国と、その保護活動を支援する国々、世界銀行などの国際組織の代表が参加し、トラを絶滅から救う話し合いを行ないます。その数わずか3,200頭といわれる野生のトラを、絶滅の危機から救うことはできるのか。その鍵となる今回の「トラサミット」の行方が注目されます。

トラに迫り続ける絶滅の脅威

現在、世界に生きる野生のトラは約3,200頭。この100年間にトラの個体数は約97%減少し、生息地は90%減少したといわれており、まさに絶滅寸前の危機にさらされています。 その主な要因は、生息地である森林の減少と密猟。この問題を解決できなければ、次の寅年である2022年には、野生のトラは完全に姿を消してしまう可能性もあります。

トラ生息国では、森林の開発、密猟などトラの生存を脅かすニュースが、今も跡を絶ちません。
2010年5月、トラの生息地の一つである、インドネシア・スマトラ島の熱帯林から、その脅威の実情を捉えた映像が発信されました。 野生のトラを調査するために設置された自動ビデオに、アブラヤシなどのプランテーション(植林)を拡大するため、道を切り開く一台のブルドーザーが撮影されたのです。

そもそもこのエリアは、開発が法律で禁止されている保護区。こうした森林の開発は明らかな違法行為です。 しかも、この1週間前、同じカメラは、一匹の野生のトラの姿を捉えていました。問題の映像は、トラの生息地で森林の開発が進められている、確かな証拠映像となりました。

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スマトラでの違法伐採を捉えた動画

サミット開催国でも会議を目前に一頭が犠牲に

極東ロシアでも問題が起きています。
2010年6月、中国との国境地帯で、トラの毛皮などを密輸しようとした中国人が逮捕されました。

その様子を公開した映像は、6頭から10頭分に相当するトラの毛皮などが、荷物から出てくる様子を捉えています。犯人は懲役3年の刑を受けましたが、こうした問題が今も続いていることは、トラにとって大きな脅威です。

また、11月15日には、同じくロシア極東の沿海地方で、男性がトラに襲われ負傷する事件が起き、その現場から銃で撃たれた一頭のオスのトラの死骸が発見されました。

男性がなんのために森に入ったのか、経緯はまだ調査中ですが、この地域は、密猟者の非常に多い地域でもあり、トラが脅かされ続けていることは、間違いありません。

スマトラと極東ロシアに生息するトラの個体数は、それぞれ数百頭あまり。1頭でもその数が失われることは、トラの未来に大きな影響を及ぼすことになります。

また、トラはその地域の自然の豊かさを象徴する野生動物でもあります。 トラが生きるためには、食物となる草食獣が多く生息していなければならず、それらの動物が生きる森は、さらに多くの動植物が息づく、まさに多様性に富んだ森に他なりません。
森林の生態系の頂点に立つトラを守ることは、その森の自然全体の豊かさと、バランスを守ることでもあるのです。

ロシアでつかまった密輸犯

「トラサミット」の開催に期待されること

多くの国が発展途上国であるトラ生息国では、密猟を禁止し、すみかである森林の開発を禁止する法律があっても、実際には守られていなかったり、実行のための十分な資金がないのが現状。残されたトラ生息地を調査、保護するためには、国境を越えた国際的な支援と協力が欠かせません。

今回、ロシアで開催される「トラサミット」は、一つの野生生物の保護を目的とする国際会議としては、世界で初めての国際会議です。
ここでは、トラ生息国だけでなく、支援国、国際機関などが、危機的な状況に置かれたトラの減少を防ぎ、生息数を回復させるための話し合いを行ないます。

特に期待されているのは、野生のトラを2022年までに倍増させる「首脳宣言」の採択と、その確実な実行のために欠かせない人員の確保、資金支援を盛り込んだアクションプラン「世界トラ回復プログラム(Global Tiger Recovery Programme=GTRP)」の成立です。

1970年代からトラの保護活動に取り組んできたWWFも、今回の会議に参加。トラを絶滅から救うための、大きな目標と、そのための具体的な改善策の約束が、確実に実現するよう期待しています。

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