ユキヒョウの山を守れ!密猟防止支援を実施中


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

モンゴル、ロシア、中国、カザフスタンの国境地帯に広がる、アルタイ・サヤンの大山脈群。絶滅危惧種ユキヒョウが生きるこの自然を守るために、長らく行なわれてきた現地でのパトロール活動が、今、危難に直面しています。WWFジャパンでは、この活動を支援するため、この春から「ユキヒョウ マグカップ」の販売を行なっています。

ユキヒョウの生きる山

その広さ、100万平方キロ以上におよぶ、アルタイ山脈と、東西両サヤンの山脈群の大自然。日本の国土の2.6倍もの広さをもつ、この中央アジアの山岳地帯には、地球の自然を代表する貴重な景観が今も残ります。

その山々に広がる生態系の頂点に立つ動物が、ユキヒョウ(Panthera uncia)です。
ユキヒョウは、山岳地帯にすむ大型の肉食獣で、ヒマラヤ山脈と中央アジアの山岳地帯に分布しており、アルタイ・サヤンの山地は、いずれもその重要な生息域になっています。

ユキヒョウの存在は、その場所が、生物多様性の宝庫であることを示す、ひとつの証でもあります。
なぜならそこには、食物となって、ユキヒョウの暮らしを支えられるだけの草食獣が、数多く生息していることになるからです。

たとえば、頭に立派な角を持つアルガリ(Ovis ammon)は、体長2m近く、肩の高さは1m、体重が100キロを超える、世界でも最大級の野生のヒツジ類の一種。
群れを作って暮らしていますが、このような大型の草食獣が生きるためには、豊富かつ多様な植物が、年間を通じて生育していなくてはなりません。

実際、周辺に広がる砂漠やステップ(草原)、山麓の森林地帯から、岩と雪に覆われた高山帯まで、多彩な景観を持つこのアルタイ・サヤン地域は、多くの高山植物や、森林性の植物、コケ類が生育する場所として知られてきました。
また、地域で生活する人々も、その恵みを受けて暮らしています。

脅かされる自然

現在、アルタイ・サヤン山脈の一帯には、ユネスコの世界遺産に登録されている地域が6つあり、国際的にもその景観の価値が評価されています。
しかし、現場の保全活動の現状は、決して楽観できるものではありません。

特に大きな脅威となっているのは、観光による環境への過剰な負担や、森林の違法な伐採、野生動物の密猟といった、自然の破壊です。さらに近年は、中央アジアの各地で盛んになっている地下資源の開発や、地球温暖化による気候の変動も問題になり始めています。

この山々の生きものたちのシンボルであり、生物多様性の豊かさをも示す、ユキヒョウについても、推定個体数は650~1,200頭(モンゴルとロシアの推定個体数)と、非常に少なく、今なお生息環境の開発と、毛皮を狙った密猟により、危機にさらされています。

また、アルガリも生息域が分断されており、サイガやアカシカといった大型草食獣も、この10年あまりの間に5分の1以下にまで数が減少。アルタイおよび東西サヤン山脈とその周辺における、生物多様性の劣化は、年々深刻になりつつあります。

困難な保護への道

アルタイ・サヤンの自然を守るため、モンゴル政府は、2009年までに16カ所の保護区を設置。約200名のレンジャーをスタッフとして配し、保護区の管理にあたらせてきました。

しかし、広大な保護区を管理するのは容易なことではありません。
レンジャーは時には、600平方キロにおよぶ森林や、3,500平方キロ以上の草原、砂漠地帯を、パトロールする必要に迫られてきました。

さらに、レンジャーのトレーニングも十分に行なうことができず、密猟の取り締まり活動も、なかなか成果を出すことが出来ませんでした。

この現状を改善するため、今からおよそ9年前、自動車で密猟をパトロールする部隊「Irves(モンゴル語で「ユキヒョウ」の意)1」が、WWFモンゴルの支援のもと、初めて編成されました。

その後、地方政府や地元のコミュニティとも連携しながら、2008年までに「Irves 5」まで結成された「ユキヒョウ隊」は、アルタイからゴビにかけての中央アジア各地を奔走し、違法に採取された木材や塩、密猟された野生動物の毛皮、魚などを数多く押収。違法な採掘や伐採を取り締まり、めざましい活躍を果たしました。

ところが2009年、思わぬ事態が発生しました。
パトロールに使われていた、ロシア製の四輪駆動車4台が、相次いで故障し、実質的な取り締まり活動ができなくなってしまったのです。

日本からも支援を

WWFモンゴルとWWFロシアでは今も、地域の住民を対象に、密猟や違法伐採を行なわないよう呼びかける情報発信や普及活動を展開し、パトロール支援に頼らない取り組みを継続しています。

しかし、これらの活動だけで、密猟を防ぐのは容易なことではありません。
どれほど地道な活動を続け、人々の理解と共感を得ることができても、万一、密猟者が高性能の四輪駆動車を駆って、どこからか乗り込んでくれば、一度に何十という野生動物が犠牲になってしまうからです。

そこで、WWFでは再び、自動車によるパトロール隊を支援するため、新たな車両の調達に取り組んでいます。

WWFジャパンでも、この動きを支援するべく、2010年の春から、通信販売「パンダショップ」で、「ユキヒョウ マグカップ」を発売。一個あたり1,000円を、密猟対策車の購入のため資金としてモンゴルに送金する取り組みを行なってきました。

アルタイ・サヤンで今起きている問題は、確かに日本とはほとんど関係のない、見知らぬ世界の問題かもしれません。
しかし、そこには国や、政治経済に関係なく、未来に向けて保全するべき、価値のある自然が、今ものこされています。

ユキヒョウが生きるアルタイ・サヤンの山を守る人々の取り組み。
日本からの支援は、2010年9月末日まで行なわれる予定です。

20100906d.jpg

アルヤイ・サヤンの生態系の頂点に立つユキヒョウ。モンゴルには最大で1,000頭ほどしか生息していないとみられる

20100906h.jpg

世界屈指の規模を誇る、アルタイ・サヤン地域の針葉樹林(タイガ)。世界の10大河川に数えられる、オビ、エニセイの両大河の水源にもなっている

20100906j.jpg

モンゴルのアルタイ・サヤン山脈を中心としたユキヒョウの分布域(緑の部分)

20100906b.jpg

アルガリの調査。ウマを使っての調査も行なわれている

20100906k.jpg

見事な角を持つアルガリ。草食獣の減少は、そのままユキヒョウの危機を意味し、生物多様性が多様さを失うことを物語る

20100906i.jpg

パトロール隊の車両。密猟や違法伐採の検挙は、単にこれらの問題を抑制するだけでなく、罰金による収入を得ることにつながる。これらの罰金は、保護のための資金に役立てられている

20100906c.jpg

ゴビにつらなる砂漠の環境。アルタイ・サヤン地域は、世界でも屈指の景観の多様さを誇る

20100906e.jpg

フィールドを走る「ユキヒョウ隊」の自動車。

20100906g.jpg

ご支援をお願いいたします

ユキヒョウ マグカップでモンゴルの活動を応援しよう

WWFジャパンでは、マグカップの販売を通じて、9月末までに集めた支援金を、モンゴルに送金し、密猟対策活動に充てることにしています。ぜひ、ご協力くださいますよう、お願いいたします。

  • この支援商品は完売いたしました!ご支援ありがとうございました
20100906n.jpg

寄付のみの受付は終了いたしました!

2010年9月末日まで受け付けておりました、臨時のご寄付については、期限をもって受付を終了させていただきました。ご支援いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

現在は、マグカップの売上げによるご支援のみを受け付けております。在庫がなくなり次第、こちらも終了させていただきますので、ご了承いただきますよう、お願い申し上げます。

関連情報

アルタイ・サヤンの自然について

WWFインターナショナルのサイト(英語)
http://wwf.panda.org/what_we_do/where_we_work/altai_sayan_mountain/

 

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP