日本でも海のエコラベルを!消費者意識を調査


環境に配慮した製品の証である「エコラベル」。近年注目が高まっていますが、その普及は、まだごく一部の製品に限られています。WWFは2010年2月、世界の海を守る上で、大きな力となる「シーフードのエコラベル」が、日本の消費者にどれくらい受け入れられるのか、その動向を調査した新しい研究結果を発表。シーフード版エコラベルの可能性について指摘しました。

失われる海の恵み

今、世界各地で、漁業資源の枯渇が心配されています。

世界の海で生産される水産物(シーフード)の量は、国際食糧農業機関(FAO)によれば、50年前の倍以上に増加。さらに、同機関が把握している世界の漁業資源の約4分の1が、「獲りすぎ」の状態にあるとされています。

しかし、普段の生活の中で食べているシーフードを選ぶ時、どの魚が資源を枯渇させるようなやり方で漁獲されたものなのか、私たちは確かめる術がありません。
乱獲されたシーフード製品を、知らず知らずのうちに購入し、海の環境破壊に、間接的に加担してしまっている可能性もあります。

この問題への対策の一つとして、エコラベルを利用した取り組みがあります。
これは、魚や貝などを獲りつくすことなく、「持続可能」な形で漁獲されたシーフード製品に、エコラベルを貼り付けて販売する、というもの。
消費者はこのラベルを確認することで、海の環境に配慮した製品を、自らの意思で選択することができます。

このシーフードのエコラベル制度は、日本でどれくらい有効に普及・活用されるのか?

その可能性について、WWFジャパンでは2010年2月10日、調査結果をまとめた報告書『日本の水産物市場におけるシーフードエコラベルの潜在需要分析』を発表しました。この研究は、WWFジャパンとWWFアメリカが委託した、アメリカロードアイランド大学の若松宏樹氏を中心とするグループにより、行なわれたものです。

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日本の消費者の意識

今回の調査は、生活協同組合「コープとうきょう」の全面的な協力を得て、のべ約160名の方に参加いただいて行なわれました。

その結果によれば、購入時に「シーフードのエコラベルを見たことがあるし、買ったことがある」という人が、26%だったのに対して、「見たことが無い」という人が約60%を占めており、エコラベル自体を認識している人が、全体としてまだ少ないことがわかりました。

一方、これらの人たちに、「乱獲」や「違法操業」に関する情報を提供して行なった調査では、海の資源や漁業が抱えている問題などに対する関心が、確実に高まったことが確認され、エコラベルの持つ意味を理解する人も、多いことが分かりました。

また、エコラベル商品については、店頭など並ぶなど、普段の生活の中で手の届く場所にあれば、価格が多少高くても積極的に購入したい、とする人も多く、潜在的な需要のあることが、明らかになりました。

このようにエコラベル商品の購入を求めたいという人からは、単にラベルがあるかないか、ということだけでなく、その漁業資源の現状についても知りたい、という声も出ており、WWFでは、こうした漁業の現場や現状についての情報発信を、エコラベル製品の販売拡大に併せ、実施することが有効なのではないかと考えています。

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報告書『日本の水産物市場におけるシーフードエコラベルの潜在需要分析』(PDF形式:2.9MB)

持続可能なシーフードの利用を進めよう!

日本は、世界でも屈指のシーフード消費大国。その消費の動向は、地球の水産資源の未来を左右する大きな要素として注目されています。

しかし、この日本で、消費者がどの程度、シーフードのエコラベル商品に関心を持っているか、また、どのくらい価格が上がってもそれ購入するか、といった点に踏み込んで行なわれた検証は、今回のWWFによる調査が実施されるまで、ほとんど行なわれてこなかったのが現状です。

WWFジャパンは、世界で起きている水産資源の乱獲や違法操業といった問題を解決するため、今回の研究結果を踏まえながら、「海のエコラベル」MSC(海洋管理協議会)による、環境に配慮した健全な漁業の認証と、MSCマークをラベルとして活用したシーフード版エコラベル制度の普及拡大を、関係者や消費者に呼びかけてゆきます。

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WWFが普及を目指す「MSCマーク」。
国際的な海のエコラベルとして知られる
MSCI0263
http://www.msc.org/

関連資料

報告書

記者発表資料 2010年2月10日

日本のシーフードエコラベルに関する研究報告書を発表

【東京発】WWF ジャパン(財団法人世界自然保護基金ジャパン)は2月10日、研究報告書「日本の水産物市場におけるシーフードエコラベルの潜在需要分析」を発表した。エ コラベルの付いた水産物商品が、どの程度日本の消費者に受け入れられるか実験を通して検討した。その結果、水産物のエコラベルが付いていることが購入時の 判断基準の一部となりうること、またエコラベル付商品に対しては価格プレミアム(*)が存在することが明らかとなった。

  • (*)価格プレミアム・・・商品購入における重視要素別に支払っても良い価格の幅

こ の研究は、WWFアメリカとWWFジャパンが共同で実施し、米国ロードアイランド大学の若松宏樹氏を中心としたグループに研究を委託したもの。エコラベル の付いた水産物商品が、ラベルの意義を認知した上でどの程度日本の消費者に受け入れられるかを、競売(オークション)実験手法によって検討した。この手法 は入札額によって参加者の商品に対する評価額を測るもので、多様な製品に関する消費者の評価を調査する目的で利用される。実験では一般的なアンケート調査 とは異なり、参加者が実際に落札した商品を買い取る必要があるため、より商品に対する現実的な評価額を得ることができるとされている。今回の実験参加者は 約160名。コープとうきょうの全面的な協力を得て実施した。

研究では、日本の消費者を対象として、

  1. エコラベルの有無が購買行動の判断基準となるか、
  2. エコラベル付き商品に価格プレミアムが生じるか、
  3. 消費者がエコラベル商品を評価するにはどのような宣伝情報が効果的か、

の3点を明らかにするために実験を行い、水産物エコラベルの潜在需要分析を行った。

こ の結果、消費者は、通常の水産物購入時にエコラベルを重視することが少ないものの、エコラベルに対する認識はあり、選択できる状況にあれば積極的にエコラ ベル付商品を購入することが明らかとなった。また、消費者が資源の乱獲問題や違法操業問題といった情報を得た場合には、エコラベル付商品に対し、ある程度 の価格を支払う傾向にあることが示された。これまで日本の消費者がどの程度水産物のエコラベル付商品に関心を持ち、価格プレミアムを支払うかという客観的 な検証がほとんどされてこなかった。今回の研究結果は持続可能な水産物消費を考える上で新しい見解となるだろう。

WWFジャパンは、世界で起きている水産資源の乱獲や違法操業といった問題の解決のため、この研究結果を、国内で持続可能な水産物消費を流通関係者や消費者へ呼びかけるうえで活用していく。

  • 現在、国際食糧農業機関(FAO)によってモニターされている漁業資源では、約4分の1が「獲りすぎ」の状態にあると発表されている。そのため持続可能な漁業資源利用を目指し、世界各地で様々な漁業管理が実践されている。
  • こ うした生産者の取り組みを消費者が支援する仕組みの一つが「エコラベル」だ。水産物の「エコラベル」の理想は、消費者がエコラベル商品に価格プレミアムを 付けることで、生産者が商品の付加価値を図るためエコラベル取得を目指し、持続可能な生産に移行していくという点にある。 

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