ラベルで読み解くマグロ情報


生で、また凍った状態で日本に持ち込まれ、売られているマグロ。私たちが日常生活の中で手にいれる、切り身になったそのマグロが、どこで、どのような方法で漁獲され、運ばれてきたのかは、なかなか分かりません。しかし、スーパーなどでマグロを買う時、パックに貼られた価格や重さを示すラベルには、少しだけそれを読み解くヒントが隠されています。

何が書かれている? JAS法ラベル

普段は価格や重さ以外、あまり見ることのない、魚介類のパックに貼られているラベル。ここには、価格や重さの他にも、いくつかの情報が書かれています。この表示はJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)という法律で義務づけられているもので、表示をしなかったり、嘘や誤った表示をすれば違法になります。
これらの情報を注意深く見てみると、そのマグロがどこから、どういうコースで日本にやって来たマグロなのか、ある程度、推測できることがあります。

チェックポイント
その1: 名称
その2: 原産地
その3: 養殖
その4: 解凍

その1: 名称

そのマグロの種類が書いてあります。しかし、気をつけなくてはいけないのは、ラベルに表示された名前は、必ずしもマグロの魚種名ではない場合が多いこと。同じマグロでも、さまざまな通称で表記されている例が多いことです。

本まぐろ 正式な種名はクロマグロ。本まぐろの名で売られているケースも多い。値段が高いので、他のマグロとは区別しやすい。
めじ、めじまぐろ、
ヨコワ
クロマグロの若魚。日本近海で獲れたものが、刺身用に売られている。成魚と比べ、トロが少ないので、値段は比較的安め。
インドまぐろ 正式な種名はミナミマグロ。冷凍、生、両方で流通している。最初、インド洋で漁獲されたものが日本に入ってきたため、今もこの名前で流通している。
鉢まぐろ、ばち 正式な種名はメバチ。トロが少ないため赤身が主。味もよく、本マグロ、インドまぐろなどと比べて値段が安いため、人気がある。
トンボ、びんちょう 正式な種名はビンナガ。ツナ缶に使われることが多いが、刺身での流通もあり。びんちょうトロ、などという表記で安く売られていることも。

その2: 原産地

そのマグロがどこで獲られたかが示されていますが、港名や国名、海域名などが併記してあることが多いため、なかなか分かりにくい表示になっています。国産なのか、海外産なのか、一部はこのように見ると分かります。

漁獲海域名:

日本船が漁獲した場合、太平洋産、インド洋産、といった海域を表記します。外国船が漁獲した場合でも、国名の他に漁獲海域を併記することができます。これは、その海域で漁獲されたマグロであることを示しています。

国名:

書いてあるものと、そうでないものがあります。基本的には、国名が書いていないものは、日本の漁船が漁獲したものになります。一方、海外の国名がかかれているものは、その国からの輸入品、ということになります。ただし、ここに書かれる輸出国とは漁獲した船の船籍が書かれるのが原則です。

例えば、
「大西洋産」 → 日本船が大西洋で漁獲
「台湾・インド洋産」 → インド洋で台湾船籍の漁船が漁獲。輸入品

日本の港の名前が入っているもの 日本船が漁獲した場合、マグロが最終的に水揚げされた港の名(またはその都道府県名)が書かれているケースもあります。また、日本船が海外の漁場で漁獲したマグロでも、国産扱いとなります。例えば、日本船がミクロネシアで漁獲したマグロが、日本の●●港で水揚げされると「●●港産」という表記になります。
飛行機で空輸した輸入品 輸入品については、飛行機で空輸した場合は、水揚げを行なった国が輸出国として表記されます。例えば、中国船が公海で漁獲した生マグロを、パラオで水揚げし、飛行機で日本に輸出すると、これは「パラオ産」となります。
蓄養マグロの場合 蓄養した国が原産国になります。例えば、フランス船がリビア沖で漁獲し、トルコで蓄養したマグロは「トルコ産」となります。

このように、現在のラベルの表記は、必ずしも漁獲した海域や船の船籍を正しく示しているとは言い難い場合があります。マグロの資源管理の単位にあわせた海域の表示は、今後の重要な課題といえるでしょう。
しかし、ある程度は、魚種名と漁獲海域の情報を得ることができるため、消費者がそのマグロの資源が枯渇しているかどうかを確認する際、一つの参考になります。

その3: 養殖

「養殖」という表記のあるマグロは、餌を与えて飼育されたマグロのこと。つまり、天然資源であるマグロを捕まえ、餌をやって大きく育てる「蓄養」も、「養殖」と表示されます。「養殖」と聞くと天然資源に影響を及ぼさないものと考えられがちですが、近畿大学が生産している完全養殖のマグロ以外は、すべて蓄養マグロです。消費者への誤解を避けるためにも、蓄養と養殖を区別した表示が必要といえるでしょう。
なお、「養殖」と書かれていなければ、天然マグロということになります。

その4: 解凍

解凍された冷凍マグロには「解凍」の表示が必要です。冷凍されておらず、「解凍」という表記もなしで売られていれば、「生マグロ」ということになります。

    

情報の公開について

このように、わずかな表記からも、いくつかのマグロに関する情報が見えてきます。お店などでも、日頃から情報に注意してみれば、どのようなマグロを買うのが適切か、少しずつ分かってくるでしょう。
一般の消費者としては、できるだけ資源や環境への負荷が少ないマグロを購入するように心がける一方で、情報の開示や提供を求めてゆくことが大切です。

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