世界渡り鳥の日:渡りの距離は何が決める?


広報担当の大倉です。
今の季節、日本ではたくさんの渡り鳥を見ることができます。たとえば、シギ・チドリ類の渡り鳥は、北へ向かう渡りの季節を迎え、南方から日本に飛んできます。

5月10日は渡り鳥とその生息地を守る「世界渡り鳥の日」です。

みなさんは、鳥たちが実際に、どこからどこまで飛んでいくのか、考えてみたことはありませんか? 

オオハクチョウ。体重8~12kg。体長140cm。

鳥が渡る距離を、体重と飛び方から調べた研究者がいます。国立極地研究所の渡辺佑基准教授です。

196種の渡り鳥について調べた結果を、昨年、公表しました。それによると、羽ばたく鳥では、体重が重いほど渡りの距離は短くなるそうです。

例えば、体が大きくて重いツルやハクチョウは、2,000~3,000キロの距離です。一方、体の小さなアジサシのなかまは、北半球から南半球にかけて1万キロの距離を飛ぶことがわかったというのです。

マナヅルの群れ。体重4.75~6.5kg。体長130cm。 極東ロシアのアムール川流域から中国南部や日本の鹿児島県まで飛ぶ。

これは、当然とも言える結果に思えます。
翼をずっと羽ばたかせる飛び方では、エネルギーの消耗が大きいため、体重が飛ぶ距離を決めるというのは納得できます。

しかし、ここに飛び方も加味すると違ってきます。
上昇気流や風に乗りグライダーのように滑翔する鳥の場合には、体重と渡りの距離には関係がなかったのです。

たとえば、体重500g程度の小さなミズナギドリも、体重9kgもある大きなワタリアホウドリも、こうした飛び方で同じくらいの大移動をしていました。エネルギーの消耗には大きな差がないからです。

キョクアジサシ。体重100g前後。体長35cm。 北極から南極まで、毎年、何万キロも往復する。

この調査研究は、現在位置を記録する装置を鳥の体に取りつけることによって可能になりました。

科学の目が、これまでの標識を用いた調査では、確かめることの難しかった事実を明らかにしたのです。興味深い研究の今後に注目が集まります。

ヨーロッパトウネン。体重17~44g。体長14cm。 ノルウェー北部からアフリカ沿岸部などへ飛ぶ。 

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C&M室 メディアグループ所属
大倉 寿之

メディアを通じた環境情報の発信を担当しています。ESDなど教育に関わる仕事も手がけています。

90年代の諫早干拓問題やオゾン層破壊の話題はけたたましくアラーム音が鳴り響く「警告の赤」。一方、今の温暖化の進行や自然資源の過剰消費は、いつみても「要注意の黄」がともっている状態なのかもしれません。これに慣れっこになってはいけない、そう思いながら、環境ニュースに日々感度の高いアンテナを張っています。

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