太平洋クロマグロの回復に向けた合意はならず...IATTC会合が閉幕


エクアドルのグアヤキルより、水産担当の山内です。
IATTC(全米熱帯まぐろ類委員会)の年次会合が、時間延長の末、閉幕しました。

今年は、注目されていた太平洋クロマグロ(本まぐろ)の長期的な資源回復や、サメの保全措置、漁船・漁獲努力量に関する提案が議論されましたが、ことごとく合意に至らず、IATTCが地域の漁業管理機関として、機能を果たせていない実情が浮き彫りになりました。

クロマグロ

太平洋クロマグロについては今回、アメリカ政府から、初期資源(人が獲る以前の量)の4%まで激減した資源量を、「2030年までに、60%以上の確率で20%まで回復させる」という計画が提案されました。

これは、最近導入され始めた「管理戦略」という新しい考え方に基づくもので、WWFが要望していたレベルにも近いものでしたが、IATTCはこれに合意できませんでした。

背景には、年々複雑化するマグロ資源管理の現状があります。

会議が開かれたグアヤキルの町。

たとえば、この「管理戦略」では、まず回復目標や維持すべき資源のレベルを決め、漁業管理のあり方を検討。さらに、科学者が行なう膨大なシミュレーション結果から、最適な方法を選択します。

しかし、その中には、漁獲の削減や禁漁等を含む、さまざまな手法とその組み合わせがあり、成功の確率もそれぞれ違うため、どうしても複雑になります。

「管理戦略」は一度、各国が合意できれば、その後の資源管理や見直しなどが、公平かつ迅速にできる反面、合意に至るまでが非常に困難なのです。

IATTC年次会合の会場。

今回、合意できなかった理由の一つにも、例えば日本は国内に漁業関係者が多く、こうした考え方や回復計画に理解を得ることへの困難があったようです。

しかし、日本代表団は、会合の最後に「9月のWCPFC(日本近海を含む中西部太平洋を管轄する漁業管理機関)北小委員会会合では、新しい回復計画の策定に積極的に貢献する」と表明しました。

減少を続ける太平洋クロマグロに、時間は残されていません。

その未来に対し、一つ大きな責任を背負う形になった日本が、今後の国際交渉の中で、約束した責任を果たすことを切に願っています。

さすが南米?町の中の公園にはイグアナの姿が。

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