アラスカ生まれの赤ちゃんと東アジアの干潟


初夏を思わせる日が多くなってきました。この季節は、鳥たちにとって巣をつくり、繁殖期を迎える大事な季節です。

そんな自然の一コマを捉えた写真が、アラスカから届きました。

アラスカ北部を流れるコロビル川流域で撮影された、オオソリハシシギの卵とヒナです。

毎年、オーストラリア等で冬を越すオオソリハシシギは、春になると、繁殖のためアラスカやシベリアを目指し、1万キロ以上におよぶ「渡り」の旅をします。

洋上を何日も飛び続けるこの旅で大事なのが、途中で立ち寄る、黄海や日本の沿岸をはじめとする、東アジアの干潟。

越冬地を飛び立った時の体重と、こうした「中継地」の干潟に到着した直後の体重を比べると、出発時の半分(240g)ほどになっています。

オオソリハシシギの卵とヒナ

そして、ここに滞在する3週間ほどの間に、干潟にすむゴカイなどを食べに食べて、体重を元に戻し、再びアラスカへ向け、飛び立つのです。

中でも、毎年7万羽のオオソリハシシギが飛来する、黄海沿岸の鴨緑江干潟は、その最大の中継地 。まさに、渡り鳥の楽園です。

ですが黄海では、埋め立て等により、過去50年で干潟の65%が失われてきました。生物の豊かさも、汚染や過剰な漁業が原因で、低下しているといわれています。

シギたちは、ちょうど今頃の季節から、雪が溶けたアラスカのツンドラで巣を構え、卵を産み始めます。

中国遼寧省にある鴨緑江干潟。毎年春には、10万羽ほどの渡り鳥が飛来します。

今年生まれるヒナたちが、立派に育ち、壮大な地球の「旅」を続けられるか。

それは、私たちが黄海の自然を守れるかどうかにかかっているといってもいいでしょう。

WWFでは、5月28日、黄海の保全と、持続可能な漁業をテーマとしたセミナーを東京で開催します。ぜひご参加ください。(自然保護室 安村)

オオソリハシシギの成鳥。夏羽は赤く色づく

撮影(C)Xing Lianhong

この記事をシェアする

自然保護室長(淡水・リーダー開発・PSP)
安村 茂樹

修士(生物化学・早稲田大学)
サンゴ礁センター駐在時に地域住民主体の環境調査を立ち上げ(現在も石垣島、久米島で継続中)。南西諸島域にて、多分野の研究者と協働した野生生物有害化学物質汚染調査、生物多様性評価調査を指揮。GIS手法を用いた保全重要域図は生物多様性条約で示されたEBSAに、野外調査ではオキナワトゲネズミ再発見や久米島沖のサンゴ大群集発見に寄与。UNEP/GEF黄海プロジェクトと連携した日中韓湿地保全活動をリードし、2020年より緊急支援や淡水・教育活動に関わる部門を統括。

沖縄のサンゴ礁と森、中国・韓国の干潟の保全に従事。国際会議でサイドイベント主催やロビー活動をする機会をいただきました。国際、環境、NGO-この3ワードが合わさるWWFで、何をすべきか考え、その仕事の醍醐味を実感し、行動する。そんな機会を一人でも多くのスタッフに提供したいです。晴れの日に気が向いたら、自転車で通勤し、休みは、川でカヌー漕いでいます。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP