「適応」のギャップを埋めよう


国連気候変動会議の会場、ペルーのリマより、温暖化担当の小西です。

会期が中盤に差しかかったCOP20の会場に、猛烈な台風22号がフィリピンに接近し、50万人もの人が避難しているというニュースが飛び込んできました。

この数年、フィリピンは毎年のように大型台風に見舞われています。昨年のCOP19の直前にも台風30号の直撃を受け、フィリピンの交渉官は涙を流しながら交渉の進展を訴えました。

このような強大な台風など一つ一つの極端な気象現象が、どの程度温暖化の影響であるかを明言することはできません。しかし、温暖化が進むと、 台風などの嵐が強大化し、海面上昇とあいまってより深刻な被害をもたらすことが予想されています。

昨年のCOP19で、フィリピンの台風被害への連帯を求めて断食する人々の行動は世界のメディアの注目を浴びました。

そのため、すべての国が温暖化を抑制する「緩和」を行ないながら、深刻化の一途をたどる温暖化の影響にどう対応するかという「適応」を進めなければなりません。

しかし、この「適応」には「緩和」ほど高い関心が寄せられていません。

5日、WWFインターナショナルは「3つのギャップ」と題する記者会見を開き、緩和・適応・資金の3分野でそれぞれ求められている水準と現状とのギャップを指摘し、特に適応のギャップを埋める必要性を訴えました。

WWFのサンデップ・ライ。WWFインターナショナルは毎日、記者会見を開いています。

この会見で、WWFインターナショナルのサンディップ・ライは、「先進国の緩和が不十分だと、途上国の温暖化被害が増大し、適応のコストも増大する。緩和と適応を切り離して考えることはできない。適応は緩和と同様に明確な達成目標を定め、2015年合意に入れるべきだ」と主張しました。

国際交渉の場で、世界がどうこの問題に取り組むのか、しっかりと議論し、その方向性を明確にすることは、解決に向けた重要なステップになります。

今回のリマでのCOP20では、他の論点と同様に、適応の議論の前進が期待されています。

新しい国際枠組みは来年、フランスで合意されます。

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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