スマトラ島の森から仔ゾウのトミィの近況が届きました!


森林担当の川江です。
みなさんは、仔ゾウのトミィを覚えてくださっていますでしょうか?

私が担当しているインドネシア・スマトラ島から、"WWF Save Sumatra"という公式Facebookページを通じて、6歳に成長したトミィの写真が届きました!

トミィは2009年7月に、島南部のブキ・バリサン・セラタン国立公園の近くで保護された、親からはぐれてしまった仔ゾウです。

当初は何とか森へ返そうと野生のゾウの群れを探しましたが結局見つからず、公園の自然保護に活躍している「ゾウ・パトロール」のチームに引き取られました。

当時、パトロール隊で唯一のメスのゾウだったアルニが母親代わりとなりましたが、とてもよくトミィの面倒をみてくれるので、トミィは今では本当のお母さんのように慕っているといいます。

2009年に拾われた時、1歳で体重150kgだったトミィも、今や6歳で体重500kg、人の背丈くらいの大きさにまで成長!立派に牙も生え、好青年に育っています。

牙が生え始めた頃には、森に帰ったのか、約ひと月の間戻ってこなかったという不良少年化(?)報告もあったとか。やんちゃなお年頃なのかもしれません。

スマトラ島ではいま急速に熱帯林が失われていますが、トミィたちが暮らすこの世界遺産の森も、例外ではありません。

トミィがなぜ群れからはぐれて迷子になってしまったのか、正確には分かりませんが、熱帯林の減少が背景にあると推測されます。

さらに、森の消失によってすみかを追われた野生のゾウたちが森から出てきて農地を荒らしたり、人と遭遇して事故を起こしたりする事態も相次いでいます。

WWFは、人との衝突を減らし、野生のゾウを森に返すため、訓練されたゾウとゾウ使いによる「ゾウ・パトロール」を行ってきました。

トミィも、最近ではこの「ゾウ・パトロール」隊の一員として、背中にゾウ使いを乗せて訓練も始まっているとのこと。

頼もしく成長したトミィですが、これ以上、トミィのようなゾウを増やさないためにも、WWFはスマトラの森の保全に取り組んでいきます。

6歳に成長したトミィ。WWFインドネシアのスタッフから手渡しでビスケットをもらっています。(C)WWF Indonesia

ゾウ・パトロールの訓練中のトミィ。(C)S.Kawae / WWF Japan

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自然保護室長(森林・野生生物・マーケット・フード・コンサベーションコミュニケーション)、TRAFFICジャパンオフィス代表
川江 心一

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士課程修了。
小学生の頃に子供向け科学雑誌の熱帯雨林特集に惹きつけられて以来30年間、夢は熱帯雨林保全に携わること。大学では、森林保全と地域住民の生計の両立を研究するため、インドネシアやラオスに長期滞在。前職でアフリカの農業開発などに携わった後、2013年にWWFに入局。WWFでは、長年の夢であった東南アジアの森林保全プロジェクトを担当し、その後持続可能な天然ゴムの生産・利用に関わる企業との対話も実施。2020年より現職。

小学生の頃に科学雑誌で読んだ熱帯雨林に惹きつけられると同時に、森林破壊のニュースを知り「なんとかしなきゃ!」と思う。以来、海外で熱帯林保全の仕事に携わるのが夢でしたが、大学では残念ながら森林学科に入れず・・。その後、紆余曲折を経て、30半ばにして目指す仕事にたどり着きました。今でもプロジェクトのフィールドに出ている時が一番楽しい。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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