【インタビュー】写真家・前川貴行さん


写真展「アフリカの野生を守る~カメルーン・ロベケ国立公園より~」の開催にむけて

WWFジャパンが保全活動を支援している中部アフリカの国、カメルーンのロベケ国立公園。2014年1月11日から、このフィールドを舞台にした、WWF+前川貴行 写真展「アフリカの野生を守る~カメルーン・ロベケ国立公園より~」が、全国13か所で開催されます。今回、写真家の前川貴行さんに、撮影スタッフとしてWWFスタッフと同行した時の撮影時の様子など、お話を伺いました。

(WWF)まず、カメルーン現地での撮影に苦労された点は?

(前川)野生動物が人に慣れていないことですね。 東アフリカでは野生動物も、ある程度人の姿を見る機会が多いから、警戒心を持ちつつも、はるか遠くから発見されてもすぐ逃げてしまうということはなく、ある程度の距離までは近づかせてくれる。
だけれど、カメルーンの動物たちはかなり遠くからでも人の姿を見たら逃げてしまうから、なかなか近づけません。隠れながら望遠レンズで狙っていくということをしていた。そういった意味で苦労したというのはあります。

ロベケ国立公園にて。ヨウムやアフリカアオバトの撮影のため、レンジャーが即席で作ったシェルターよりレンズを覗かせる前川貴行さん。

(WWF)その動物との距離感は、今までにフィールドで感じたものとは、やはり違いましたか?

(前川)野生動物はもともとそうなのだから、逆にガンガン近づける方がおかしい。本来の姿なんだなと改めて感じました。
車でサファリをするケニアのサバンナや、日本の地獄谷のサルとの距離感とは、全然かけ離れた世界でした。日本のサルも、他の地域に行くと警戒心の強さがまったく違ったりもしますが、同じアフリカの中で比べても、特にその差は顕著だと感じました。

ロベケ国立公園に棲むニシローランドゴリラ。マウンテンゴリラと異なり、頭頂部が赤茶色なのが特徴。

(WWF)撮影をしていて一番心に残ったことは?

(前川)ロベケの自然のすごさで一番衝撃を受けたのは、アフリカアオバトとヨウムの大群の乱舞でした。あとはレンジャーなり、そういう人たちの人柄の良さとか、道中の茶屋のおばちゃんとかの気持ちの良さみたいなのも感じました。一生懸命やっている人たちと一緒に行動できたのは、すごくよかったと思います。

ヨウム。ロベケ国立公園には、エサを求めてこのヨウムが毎朝、数百羽以上集まってくる場所がある。

(WWF)ロベケはWWFが森や動動の保全活動を行なっている現場の最前線です。そうした活動を強く感じる瞬間はありましたか?

(前川)今回の取材の中では、WWFの現地事務所なども訪れました。そこには、つい最近捕まえた密猟者から押収した象牙が置いてあったりする。そういうのを見たり、話を聞いたりすると、密猟者と戦っていることを目の当たりにした思いがします。
ゾウが殺戮された現場も、かなりショッキングでした。頭蓋骨には銃弾の穴がいくつも空いていて、かなり危険な現場でもあることがわかります。
その中で、レンジャーたちは強い意志をもって密猟者をとりしまっているわけです。そのために彼らが体を鍛えていたりする日常なども、少しずつ知ることができた。密猟もエスカレートしているけど、それを何とか阻止しようとしている人の戦いを強く感じました。

WWFのスタッフとレンジャーたちの見つめる先には、マルミミゾウの無残な姿が。おそらく密猟の犠牲になったと思われる。

(WWF)WWFのスタッフやレンジャーと一緒に撮影していく中で、彼らの仕事に対してどのように感じましたか?新たな発見はありましたか?

(前川)大変な仕事だというのを感じました。 ロベケ国立公園は基本的にアクセスする車道がありません。レンジャーたちはみんな歩いて、広大なジャングルの中を移動して監視しなくてはならないから、まずそれ自体が大変です。
現地の人だからできることですが、一度ジャングルに入ったら、川の水を飲み、1週間くらいそこで過ごす。そういうのを見ると、この人たちはこのジャングル、この森と共に生きているのだということを、強く感じます。
誰もが単に与えられている仕事をしているのではなく、自らの意志でこの自然を守ろうとしていた。そしてすごく動物のことがみんな好きなんだと感じました。それがすごくよかったです。

狩猟民族バカ族。WWFのスタッフやレンジャーがジャングルに入る際の案内役等として活躍している。

(WWF)今回は、野生動物だけでなく、森の様子、保全活動の現場、また地元の人々の暮らしまで、さまざまな切り口で撮影をされましたが、WWFの写真展を通じて何を伝えたいと思いますか?

(前川)カメルーンのロベケは、自然が濃厚で、野生の感覚が濃厚で、人馴れしていない場所でした。
撮影した写真も、いわゆる動物に間近に迫って、ガンガン撮っているのとは違った写真です。
それは僕の中でもハードルの高い、なかなかがっぷりと組み合わせてもらえない、奥の深い自然でした。その辺を感じてもらえたらいいかなと思います。

ロベケ国立公園から昇る太陽。

※アフリカの森とその自然、そして保全活動の最前線を紹介する、WWF+前川貴行 写真展「アフリカの野生を守る~カメルーン・ロベケ国立公園より~」は、2014年1月~10月の期間中、全国13カ所で開催されます。

前川貴行 プロフィール

1969年、東京都生まれ。動物写真家。日本、北米、アフリカ、そして近年はアジアにもそのフィールドを広げ、野生動物の生きる姿をテーマに撮影に取り組み、雑誌、写真集、写真展など、多くのメディアでその作品を発表している。2008年日本写真協会賞新人賞受賞。第一回日経ナショナルジオグラフィック写真賞グランプリ。

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