(4)未来へ引き継ぐべき世界
エコロジーの危機
現在のまま、消費が拡大を続け、生物の多様性が失われ続ければ、そのつけはいずれ人類に返ってきます。
金融機関が経済性を考慮しながら活動するように、環境のことを考えて行動しなければ、食料やエネルギーの入手はさらに難しくなり、調達のためのコストも増大します。生物多様性の喪失は、現在起きている経済危機よりも深刻な事態をもたらすことになる、ということです。
WWFインターナショナルの事務局長ジェームス・リープは、人類をはじめ、全ての生命が頼ってきた生態系への信頼が揺らごうとしている、と「エコロジーの危機」を訴えます。
「私たちの人類の大半は、現在のライフスタイルを維持し、経済成長を続けようと躍起になっています。しかしこれは、天然資源という元本を過剰に引き出しながら行なわれています。地球の環境に対する私たちの需要が、今と同じペースで伸び続ければ、2030年代の半ばまでには、私たちはライフスタイルを維持するために、地球が2個、必要となるでしょう」。
過剰な利用という現状をまず食い止め、さらにこの流れを長期にわたって回復させていくためには、どうすればいいのか。
WWFの『生きている地球レポート』では、最重要課題である温暖化防止のためのエネルギー効率の向上や、二酸化炭素の大幅削減、エコシステム・アプローチなどを含めた、いくつかの「持続可能性のためのカギ」を提案しています。

グローバル・フットプリント・ネットワークのマティース・ワケナゲル代表理事は、2008年版の『生きている地球レポート』の発表に際して、次のように言っています。
「地球の資源利用が、赤字の状態で続くならば、経済は厳しい結果を招くことになるでしょう。資源量が限界に達し、生態系が崩壊すれば、大規模なスタグフレーション(景気が後退し、物価が上昇する現象)の引き金を引くことになりかねません」。
未来へ引き継ぐべき世界
未来に対して抱えた大きな負債。そして、今も続く消費の超過と、環境の悪化。
あらゆる現状の問題を即座に改善する手立ては、どれほど考えても出てきません。しかし、一つ確かなことは、現状の状況が、私たちにとって日常の出来事が積み重なってきた結果であることです。
そして、現在の政策や投資、その全ては、21世紀の100年を決定付ける大きな要因に他なりません。今求められているのは、より大きな視野で取り組むべき社会の変革です。
消費や環境を考える個人が、生産方法が明らかな木材や水産物を求め、自ら太陽光や風力による電力を選びとることのできる、資源の無駄を徹底的に省いた社会を作ることができれば、「負債」は少しずつ返済してゆくことができるでしょう。
私たちは、500万種とも、1,000万種ともいわれる生物たちと、地球という一つの環境を共有しています。あらゆる自然の恵みも、そのつながりがあってこそ。そのことを忘れることなく、個人、地域、国、国際社会、その全てにおいて、人類はどの道を選ぶのか。私たちは今、問われています。



