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WWFの活動

「WWF南西諸島生きものマップ」プロジェクト

九州から台湾にかけて連なる南西諸島。温帯と亜熱帯、双方の気候と動植物相をあわせもつ南西諸島は、世界的に見ても貴重な自然環境が、今も残る場所です。 WWFジャパンは、2006年10月より、ソフトバンクモバイル株式会社の携帯電話のリサイクル収益金による支援を受け、「WWF南西諸島生きものマップ」プロジェクト(南西諸島生物多様性評価プロジェクト)を発足しました。

プロジェクトの概要

2006年10月に開始したこのプロジェクトは、GIS(地理情報システム)を用いて、様々な生物・環境情報を処理し、生物多様性優先保全地域(BPA:Biodiversity Priority Area)を抽出する取り組みです。

その成果を「南西諸島生きものマップ」として公開することを通じて、南西諸島における生物多様性地域戦略の策定への関心を喚起し、保全と持続的な利用の促進を目指したものです。プロジェクトは、50名以上におよぶ哺乳類、鳥類、サンゴ類などの多様な分野の専門家や地域NPO、行政関係者の協力を得て実施しました。

対象地域

鹿児島県及び沖縄県にまたがって広がる南西諸島の陸海域

  • 大隅諸島、トカラ列島、奄美諸島
  • 沖縄諸島、大東諸島、宮古諸島、尖閣諸島、八重山諸島

プロジェクトの構成

  1. 生物多様性優先保全地域の地図作り
  2. 緊急フィールド調査
    ・ 哺乳類、両生爬虫類、昆虫類、甲殻類、貝類
    ・ 海草藻類、造礁サンゴ類
  3. 自然資源の現状と保全に関する住民意識アンケート調査
    ・ 石垣島、奄美大島

協力者

哺乳類、鳥類、両生爬虫類、昆虫類、魚類、甲殻類、貝類、海草藻類、造礁サンゴ類を専門とする研究者や地元有識者。プロジェクト会合にオブザーバーとして、環境省、林野庁、沖縄県、鹿児島県の担当部局が出席。

 

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問題と機会

南西諸島は、その生物多様性の豊かさから世界自然遺産の候補地となっています。
しかし、ヤンバルクイナなど在来の生物に悪影響を及ぼす外来種への対応、法的な保護区域の面積が不十分であるといった課題が指摘されており、登録には至っていません。
また、自然環境を不可逆的に破壊してしまう埋め立てなどの開発行為も少なくありません。

一方、2008年には生物多様性基本法が施行され、県や市町村は生物多様性地域戦略を策定することが規定されました。
南西諸島の自然環境の保全に限らず、その恵みを賢明に活用した地域の活性化、持続的に利用した次世代への継承を目指すためには、「南西諸島生物多様性地域戦略」を作ることが必要です。

2010年10月には生物多様性条約の会議が日本で開催されます。自治体や様々な関係者が連携した地域戦略の策定と実行を進めることは、ホスト国の責務の一つといえます。

 

これまでの主な活動

  • 「地域検討会の開催」(2007年9月、2008年6月、2009年6月)
    哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類、甲殻類、海草・藻類、昆虫類、貝類の専門家らが一同に会し、それぞれ の生物群にとって重要な地域の素案し、生物多様性優先保全地域の選定方法・基準を検討。
  • 「重要サンゴ群集選定会合」(2007年9月、2007年11月、2008年3月)
    日本サンゴ礁学会保全委員会と共同で、南西諸島の重要サンゴ群集の選定方法、潜水調査プロトコールを検討。 2008年7月、選定した154群集を発表。同年8月から10月にかけて、潜水調査を実施。
  • 「フィールド調査」(2007年12月~)
    【哺乳類】    沖縄本島産希少哺乳類の生存と分布の確認調査
    【ウミガメ類】薩南諸島のウミガメ類の重要産卵地の抽出
    【昆虫類】移動力の低い昆虫類の分布調査(奄美大島、宮古島)
    【甲殻類】琉球列島の飛沫転石帯に生息する甲殻類
    【甲殻類】沖縄島大浦湾沿岸における甲殻類の種多様性について(速報)
    【貝類】種子島の陸産および陸水産貝類の現況調査
    【貝類】喜界島における非海産貝類の現況調査
    【海草藻類】大隅諸島(屋久島・種子島)及び奄美大島における海草藻類
    【サンゴ類】    南西諸島重要サンゴ群集広域一斉調査と画像解析
    【アンケート】    自然資源の保全と利用の将来像に関する住民調査報告書
  • 「生物多様性優先保全地域地図を公開」(2009年12月)

主な成果物

報告書と地図を、印刷物で入手をご希望の方は、送料として500円分の切手を同封し、住所、氏名、電話(メールアドレス)を明記の上、下記までお送りください。

  • 〒105-0014 東京都港区芝3-1-14  WWFジャパン「南西多様性マップ」係。

生物多様性優先保全地域地図が出来るまで

地図が出来るまで

生物多様性優先保全地域(BPA)は、生物群重要地域(TPA)の重なりや島々に生息する固有種の分布、自然度の高い植生や海岸環境の有無、集水域等を考慮して抽出しました。

BPAの抽出には、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、昆虫類、魚類、甲殻類、貝類、海草藻類、サンゴ類といった生物群ごとに作成した重要地域のデータを用いました。また、集水域、植生自然度、自然海岸のデータも既存のデータを活用しました。

以下は、久米島を例に、それぞれのテーマや生物群ごとに、重要なエリアを示した地図です。

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GISを用いて様々なデータを重ね合わせると、TPAが多く重なる領域、自然度が高い環境やTPAが多く集まる集水域を視覚化することが出来ます。BPAは、全てのTPAの和集合に占めるBPAの面積が30%以上となる条件を設定し、抽出しました。

今回公開した「生物多様性優先保全地域地図」は、南西諸島を広域的に、また、土地利用などの社会状況を加味せず、自然科学的な視点で捉えたものなので、色分けした区分が、厳密に保護区もしくは開発の適地であることを示したものではありません。

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TPAなどを重ね合わせて作成した地図

今回のプロジェクトで得られた地図、抽出手法、課題等の情報を「たたき台」「呼び水」として活用し、様々な関係者が連携した「地域版・多様性マップ」を作成する必要があります。

この「地域版・多様性マップ」は、生物多様性地域戦略を策定する上での基盤となります。
地図づくりをきっかけとした地域づくりを進めていきましょう。

 

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これから期待される展開

今回のプロジェクトの結果をもとに、BPAに占める保護区の割合を見たところ、奄美諸島の陸域と沖縄諸島の海域では共に10%ほどである一方、八重山諸島の陸海域では70%以上が保護区となっており、地域により保護区設定の落差が大きいことが分かりました。

以上の観点から、WWFジャパンでは、県・市町村に対しては、生物多様性基本法に基づいた南西諸島の「生物多様性地域戦略(*)」の早期策定を、また政府に対しては、奄美・沖縄地域の振興開発計画における生物多様性分野への予算化を働きかけていきます。

  • (*)生物多様性地域戦略:2008年6月に施行された生物多様性基本法では、地方公共団体が生物多様性地域戦略を策定することが努力義務として規定されている。戦略には、対象とする区域、当該区域内の生物多様性保全及び持続可能な利用に関する目標、総合的かつ計画的に構ずべき施策を定める必要がある。

地域レベルでの戦略策定の意義について

WWFジャパンのサンゴ礁保護研究センターでは、白保自治公民館と連携し、「白保村ゆらてぃく憲章」の策定を支援しています。ゆらてぃく憲章は、村づくりの基本計画として位置づけられるものですが、“海と緑と心を育む、おおらかな白保”を将来目標とし、さらに「世界一のサンゴ礁を守り、自然に根ざした暮らしを営みます」として、サンゴ礁の保全を盛り込んでいます。また、サンゴ礁文化の継承や、自然と調和した産業の育成にも取り組むことが謳われています。

この憲章の制定は、サンゴ礁保全が地域で合意された重要課題と位置づけられたことを意味しており、白保自治公民館を中心に、村を挙げたサンゴ礁保全への取り組みを可能としています。憲章の策定前は、ボランティア活動として捉えられてきた自然保護が、地域づくりの一環として位置づけられたことで、多様な主体の参加や活動の広がりが見られるようになっています。

南西諸島は小さな島々からなり、それぞれに特徴のある自然生態系を有しており、生態系サービスを多面的に享受してきた暮らしと文化を有しています。南西諸島生物多様性優先保全地域の発表を機に、島ごと、地域ごとに地域の自然や生態系への関心が高まり、生物多様性の価値や重要性が再認識され、地域社会と自然環境が共生する地域マップづくりや地域戦略の策定に向け、WWFジャパンも一層の努力をしてゆきます。

 

関連情報

久米島応援プロジェクトについて

 

ソフトバンクモバイル株式会社の支援

ソフトバンクモバイル株式会社では、ソフトバンクショップなどで携帯電話を回収し、そのリサイクルによって発生した収益を社会貢献活動として、2002年度より毎年多様な団体に寄付しています。2005年1月に実施した携帯電話利用者向けアンケートの結果、リサイクル収益の環境対策への使用を望む回答が全体の68%と最も多かったことから、2005年度のリサイクル収益の寄付先としてWWFジャパンが選定され、「WWF南西諸島生きものマップ」プロジェクトが支援されることになりました。

ソフトバンクモバイル株式会社 ケータイリサイクル について

 

南西諸島生物多様性評価プロジェクト 協力者 一覧

哺乳類
    伊澤 雅子   琉球大学理学部 
    山田 文雄   森林総合研究所
    半田 ゆかり  奄美哺乳類研究会
    阿部 優子   奄美哺乳類研究会
    舩越 公威   鹿児島国際大学  
    丸山 勝彦   沖縄県立首里東高校  
    阿部 愼太郎 環境省那覇自然環境事務所

鳥類
    中村 和雄    沖縄大学大学院非常勤講師
    高 美喜男     奄美野鳥の会
    川口 和範    奄美野鳥の会
    川口 秀美     奄美野鳥の会
    鳥飼 久裕     奄美野鳥の会
    佐野 清貴    カンムリワシリサーチ 
    嵩原 建二     沖縄県立美咲特別支援学校
    花輪 伸一    WWFジャパン

両生類・爬虫類
    太田 英利    兵庫県立大学
    岡田 滋    鹿児島県環境技術協会 
    亀崎 直樹  日本ウミガメ協議会   
    戸田 守     琉球大学熱帯生物圏研究センター
    亘 悠哉     森林総合研究所

昆虫類   
    屋富祖 昌子 元琉球大学農学部  
    山根 正氣  鹿児島大学理学部
    渡辺 賢一     県立八重山農林高校 
    長田 勝     
    松比良 邦彦 県農業開発総合センター
    前田 芳之    芳華園      
    山室 一樹  奄美マングースバスターズ

魚類
    立原 一憲     琉球大学理学部
    太田 格    沖縄県水産海洋研究センター 
    米沢 俊彦     鹿児島県環境技術協会

甲殻類   
    藤田 喜久  海の自然史研究所    
    鈴木 廣志     鹿児島大学水産学部
    成瀬 貫      琉球大学 
    諸喜田 茂充    琉球大学名誉教授

貝類   
    黒住 耐二  千葉県立中央博物館    
    小菅 丈治     東海大学沖縄地域研究センター
    名和 純      潟の生態史研究会

海草藻類
    香村 真徳     沖縄県環境科学センター
    吉田 稔    有限会社海游

造礁サンゴ類
    興 克樹    ティダ企画有限会社
    酒井 一彦   琉球大学
    山野 博哉   国立環境研究所
    安部 真理子 沖縄リーフチェック研究会 
    井口  亮    琉球大学理工学研究科
    入川  暁之  慶良間海域保全連合会 
    岡地  賢    有限会社 コーラルクエスト 
    木村  匡    自然環境研究センター 
    佐藤  崇範   環境省石垣自然保護官事務所 
    鈴木 倫太郎  駒澤大学応用地理研究所
    野沢 洋耕   黒潮生物研究所
    藤井 賢彦   北海道大学
    小林 朋代   国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター
    山川 英治   沖縄県環境科学センター
    長田 智史   沖縄県環境科学センター
    上野 光宏   石西礁湖サンゴ礁調査(個人事業所)
    松本 毅    YNAC 屋久島野外活動総合センター
    梶原 健次   宮古島市役所

植物
    横田 昌嗣   琉球大学理学部      
    久保田 康裕  琉球大学理学部 
   
GIS他
    柴田 剛    エアロ・フォト・センター
    島崎 彦人   国立環境研究所
    中井 達郎   国士舘大学
    岡松 香寿枝  Coaching STEP   

行政 (オブザーバー)
    林野庁  九州森林管理局 
    林野庁  鹿児島森林管理署 
    林野庁  沖縄森林管理署 
    林野庁  西表森林環境保全ふれあいセンター 
    環境省  自然環境計画課 
    環境省  那覇自然環境事務所 
    環境省  奄美自然保護官事務所 
    鹿児島県 環境保護課 
    沖縄県  自然保護課 

WWF
    上村 真仁  サンゴ礁保護研究センター
    前川 聡   サンゴ礁保護研究センター
    町田 佳子  自然保護室
    草刈 秀紀  自然保護室
    安村 茂樹  自然保護室

所属先は当時
敬称略・順不同

2009/12/16

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