WWFジャパンは、重要な役割を果たす政策の一つとして、温室効果ガスの国内排出量取引制度を提案しています。2009年11月には、排出量取引制度を中心としつつも、排出量取引制度だけではカバーできない部門に対する政策も含んだ、総合的なポリシーミックス提案を発表しました。WWFはこの提案を中心とする、追加的な政策の導入を求めています。
排出量取引とは何か
排出量取引とは、各企業・国などが温室効果ガスを排出することのできる量を排出枠という形で定め、排出枠を超えて排出をしてしまったところが、排出枠より実際の排出量が少ないところから排出枠を買ってくることを可能にし、それによって削減したとみなすことができるようにする制度です。
排出量取引 入門編
排出量取引制度の「試行的実施」に当たってのポイント
パンフレット
WWFの提案
1997年に採択された京都議定書において、日本は 6%の温室効果ガス削減を約束しました。しかし、2007年の温室効果ガス排出量は、京都議定書の基準年(1990年)よりも9%も増加してしまっています。経済不況の影響で、2008年度以降の目標達成は、森林吸収源や海外からのクレジットに頼ることで達成できそうだという見通しですが、温暖化対策の傾向としては決して望ましい方向に向かっていません。
2009年のコペンハーゲン会議へ向けたプロセスの中で、選挙による政権交代によって誕生した日本の新政権は、前政権の中期目標(2020年までに2005年比で15%削減)を引き上げ、2020年までに1990年比で25%を削減するという目標を掲げました。
この目標は、WWFが目標とする「地球の平均気温上昇を産業革命前と比較して2度未満に抑える」という水準からすれば、十分と言い切ることはできませんが、先進国としての責任を一定程度果たすことができる意義のある目標といえます。
WWFは、今後は、日本がこの中期目標を達成し、長期的には更なる大幅削減を実施していくことで、世界に対して“脱”炭素差社会のモデルを示していくことが重要であると考えています。
WWFのポリシーミックス提案は、そのために必要な政策に関する議論に積極的に貢献するために準備されました。
世界の国内排出量取引制度の状況
EU(欧州連合)の場合
EUでは、2005年1月から域内排出量取引制度が開始されました。これはキャップ&トレード型の取引制度で、EU27カ国の電力会社や製鉄業などCO2を直接排出している施設が対象です。EUのCO2排出量のおよそ45%をカバーしています。
第一期は2005年から2007年、第二期は2008年から2012年で、第三期は2013年から2020年です。
WWFヨーロッパ政策オフィス(WWF EPO)は、第一期の経験を第二期に活かすために、第一期の国内配分計画(NAP)について、環境的有用性の観点から評価することを二つの研究所に委託しました。
一つはドイツのエコ研究所(Oeko-Institute)、もう一つはイギリスのアイレックス・エネルギーコンサルティング(ILEX Energy Consulting)です。その結果は、2005年11月に発表されました。
またWWF EPOはさらに、2008年に行われた第三期(2013年~)へ向けた議論の中で、第一期・第二期の経験を踏まえて、第三期の制度をどのように設計していくべきかについての考えを示したQ&Aを作成しました。
アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの場合
アメリカでも、新しい政権の下、様々なレベルで排出量取引制度が議論されたり実施されたりしています。
まず、議会の上院・下院の双方において排出量取引制度を含む気候変動・エネルギー政策に関する法案が議論されており、排出量取引制度の導入はもはや時間の問題と見られています。
また2005年12月には、アメリカ東部7州が、2009年から発電所を対象とした排出量取引制度を発足すると発表しました。RGGI (Regional Greenhouse Gas Initiative)と呼ばれるこの制度は、7州内にある発電所からのCO2の排出量を2018年末までに現行レベルより10%削減するというものです。以下にその概要をまとめました。このイニシアティブは、後に10州に拡大しています。
こうした東海岸側の動きに続き、西海岸や中西部において、それぞれ、西部気候イニシアティブ(Western Climate Initiative)や中西部温室効果ガス削減協定(Midwestern Greenhouse Gas Reduction Accord)が設立されています。
オーストラリアも、2011年よりキャップ&トレード型の排出量取引制度の導入を表明しています。
それに先立ち、ニューサウスウェールズ州では、すでに2003年1月から独自の排出量取引制度がスタートしています。GGASと呼ばれるこの制度は、電力小売部門にキャップをかぶせ、電力小売事業者は発電所のエネルギー効率改善や、他企業のプロジェクトベースのクレジットを購入することによって、排出削減を果たすというベースライン&クレジット方式です。以下がその概要です。
ニュージーランドでは、2008年に、森林部門に重点を置いた排出量取引制度に関する法案を可決しています。
日本の場合
日本においても、環境省主導で、自主参加型の国内排出量取引制度が、2005年度より始められました。
これに加え、2008年10月からは、国内排出量取引制度の「試行的実施」が行なわれています。
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