2050 年自然エネルギー100%社会の実現に向けた提言 『脱炭素社会に向けた長期シナリオ2017』を発表


記者発表資料 2017年2月16日

  1. 2050年までに日本での自然エネルギー100%の脱炭素社会実現の道筋を最新の具体的な数値で提示。
  2. 省エネ技術・対策の普及などにより、2050年までにエネルギー需要は約半分(2010年比47%)に。
  3. 2050年自然エネルギー100%社会では、84兆円の節約が見込まれ、経済的なメリットがある。
  4. 政府目標「2050年までに温室効果ガス排出量80%削減」は最低でも達成可能と判明。

公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(東京都港区 会長:德川恒孝 以下、WWFジャパン)は、2017年2月16日に研究報告書『脱炭素社会に向けた長期シナリオ2017 ~パリ協定時代の2050年日本社会像~』を発表し、日本は2050年までに、技術的にも経済的にも、石炭や石油などの化石燃料に頼らない、自然エネルギー100%の脱炭素社会を実現できることを改めて示しました。

本シナリオは、無理のない省エネ技術と対策の普及などにより、エネルギー需要は半減(2010年比47%減)し、それをすべて日本で利用可能な自然エネルギーで供給できることを示すものです。気象データ等をもとにしたシミュレーションの結果、太陽光と風力などの天気次第の電源構成でも日本の電力系統は十分に対応可能であることも分かりました。また費用の観点からも、自然エネルギー100%は長期的に"お得"であることが示されました。2010~2050年までの約40年間の設備費用は365兆円、運転費用は449兆円のマイナスとなり、正味の費用は84兆円の節約となります。

本報告書は、ここ数年の自然エネルギーを取り巻く社会情勢の変化を反映させるため、㈱システム技術研究所に研究を委託、2011年~2013年にかけて発表した『脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案(第1部~4部)』を最新データに基づいて約4年振りにアップデートしたものです。

今回はWWFが一貫して提案する「100%自然エネルギーシナリオ」に加え、新たに国が掲げる「2050年までに温室効果ガス80%削減」(2010年閣議決定)という目標の達成を前提とするシナリオも検討しました。本報告書では100%自然エネルギーシナリオの実現につなげてゆく、橋渡しのシナリオとして位置づけ、「ブリッジシナリオ」と名付けています。検討の結果、脱炭素社会を実現する上で、80%削減は最低限の達成可能な目標であることが分かりました。

なおこれらWWFシナリオの計算のために設定した前提条件は、裏を返せば「100%自然エネルギーシナリオ」の実現に必要なことと言えます。これらを踏まえ、本報告書では、2050年の脱炭素社会実現に向けて達成すべき事項として、省エネ住宅・建築物の加速的普及、より急速なEV(電気自動車)やFCV(燃料電池自動車)の普及、電力系統運用の改革、鉄のリサイクル促進、石炭火発規制などの必要性を提起しています。

現在、政府は、環境省(長期低炭素ビジョン小委員会)と経済産業省(長期地球温暖化対策プラットフォーム)の2つの場で、パリ協定(※)にもとづく「長期温室効果ガス低排出発展戦略」(以下、長期戦略)を検討していますが、別々に議論が進む現状では、今後どのように一つの実効性ある「長期戦略」として完成されるかは未知数です。

WWFジャパンでは、この政府の長期戦略の策定を促すとともに、実効性ある長期戦略がパリ協定に提出されるよう、具体的な提言活動を展開していきます。2050年まであと33年。今、政府が明確な方向性を示せば、化石燃料に頼らない脱炭素の未来は実現可能であると、本報告書は明示しています。

※パリ協定:国連気候変動枠組条約のもとに、2016年11月に発効した、すべての国が参加して地球温暖化に取り組むための枠組み。「パリ協定」は、各締約国に対して2020年までに「長期低温室効果ガス排出発展戦略」の提出を要請しています。すでに、カナダ、ドイツ、メキシコ、米国、ベナン、フランスの6カ国が提出しています。

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