2015年 国連気候変動ボン会議(ADP2.9/SB42)について


2015年6日1日から11日にかけて、ドイツ・ボンにおいて国連気候変動枠組条約第42回補助機関会合(SB42)及びダーバン・プラットフォーム特別作業部会第2回第9セッション(ADP2.9)が開催されます。2015年2月にスイス・ジュネーブで開催された中間会合では、パリで合意される条約の下書きとなる「交渉テキスト」をまとめることができました。ただし、各国の多様な意見を反映し、選択肢なども含んだ交渉テキストは、90ページもの長さまで膨らんでいます。今後は、これを元にして、2015年12月に予定されている国連気候変動パリ会議(COP21・COP/MOP11)に向けて、中身の交渉が加速していきます。その際には、いかに90ページに及ぶ交渉テキストを、整理して、パリにおける合意に持ち込めるかが問われることになります。

注目される3つの点

今回のSB42においては、注目点は3つあります。

まず1つは、提出された(日本含む)目標草案について。
2つ目は、この交渉テキストの中身を、意見の近いものをまとめ、大きく意見の異なるものは、選択肢(オプション)として並べたりして、整理していけるか。
そして3つ目は、日本の2020年目標に対する各国との質疑応答が行なわれることです。

1)INDCs(目標草案)の提出

2020年から始まる新しい国際枠組みにおいて、各国がどんな削減目標を持つのかは、まさに温暖化交渉の焦点と言っても過言ではありません。

京都議定書の時には、各国間の交渉によって決定された目標は、2020年までの自主的な取り組み、カンクン合意の中では、単に各国が自国で決めた目標を持ち寄っただけでした。結果として、産業革命前に比べて2度未満に気温上昇を抑えるには全く足りない目標となってしまいました。

そのため、次のパリにおける条約においては、年末のCOP21で決める前に、各国が自国で決めた目標を持ち寄って、国際的にお互いに見合っていきましょう、ということになりました。

6月までに下記10か国が出しています。

注目点は、各国が、自国の目標がなぜ「公平で野心的であるか」「2度未満達成のための究極の目標と整合しているか」を説明しなければならない点です。

ちなみに欧州連合とアメリカが、下記のように出しています。会議第1週には、このアメリカやEUの目標案について、どのように決定されていったかなどについての質疑応答も行なわれる予定です。

日本はまだ削減目標案を国連に提出していませんが、会期中の6月7日に同じくドイツで開催されるG7において、日本の目標案が発表されるのではと推測されています。

ちなみに、2015年4月末に公表された目標案は、2020年に2013年度比で、26%削減という、意欲に欠けた内容でした。

果たしてどのような「公平で野心的」「2度未満を達成する究極の目標と整合している」という説明をするのか、注目されます。

日本の目標草案

2)交渉テキストにおける注目される論点

温暖化の新しい条約となるテキストですので、論点はたくさんありますが、ここでは代表的な5つの論点だけに絞ってお伝えします。

詳細について知りたい方は、下記をご覧ください。

2.1)【長期的な目標について】

今の国際的な気候変動(温暖化)対策の取り組みの礎である国連気候変動枠組条約(UNFCCC)には、その第2条に「究極目的」と呼ばれる定性的な目的が書かれています。

究極目的は、当然ながら国際的な取り組み全体を包括する大事なものであるのですが、やや曖昧であるため、より具体的な目標を書こうという試みがパリ合意に向けての交渉では論点となっています。具体化して、「世界全体の排出量を2050年までにX%削減する」という目標を書くことについて、議論されているのです。

一部の島嶼国などは、気候変動の影響を最小限に抑えたいという希望から、2050年までに「脱炭素化を達成する」(つまりゼロにする)という目標を支持しています。日本も含め多くの先進国は、以前にG8で合意した「2050年までに世界全体で半減する」という目標を支持していますが、ノルウェーなどの一部の国は、「2050年までに正味で温室効果ガス排出量をゼロにする」という目標を支持しています。

さらに、中国・インドなどの新興国は、「長期目標として合意されたものが、どのように衡平な負担分担に結びつくのか」を明らかにしないうちには、安易に長期目標に対して合意できないと主張しています。これらの国々は、先進国によって負担を押し付けられることへの強い警戒感があります。

このように、各国それぞれの思惑を反映して、長期的にどこを目指すのかという問題からして、各国の意見には違いが見られるのです。

2.2)【サイクル】

現在の交渉では、新しい国際枠組みの中で各国が約束する目標は、2025年もしくは2030年を目標年とすることを前提として議論がされています。

しかし、今の議論はそこでは終わらず、そのさらに次の目標、そしてさらに次の目標を作る際の「手続き」まで含めて決めておこうという議論がされています。

たとえば、仮に次の目標の目標年が2025年になったとすれば、2020年の段階ではさらに次の目標である2030年目標を決定できるように、それより1年もしくは1年半前に、目標の案を各国が提出をしよう、というような具合の案が既に出ています。そして、同様のことを、2035年目標、2040年目標についても繰り返す、というイメージです。このことから、この議論は「サイクル」としばしば呼ばれます。

これからも、新しい目標を作るたびに国際枠組み全体を見直し、交渉をやり直し、そして出来た合意を各国が批准するのを待って、発効させる、というようなプロセスは非効率的であるから、あらかじめ、削減目標の改定の仕組みをきっちり盛り込んでおこうという意見から来ています。

また、そうした「サイクル」を回していく中で、徐々にでも、各国の取り組みをより強いものへと引き上げていこうという考えも背景としてあります。

まだ、全ての国々が賛同しているわけではありませんがが、12月に作る合意は、かなり長期的な性質を持つものとなる可能性があります。このことからも、今年12月の合意は極めて重要なものとなることが分かります。

2.3)【排出量削減目標をどこに書くのか】

パリ合意でも、おそらく交渉の中心となるのは、温室効果ガス排出量の削減目標です。パリ合意によって作られる新しい国際枠組みは2020年以降に効力を持つものとされていますので、現在議論の中心となっているのは、2025年もしくは2030年の目標です。

各国が出す目標が、数字の上でどれだけ野心的なものになるのかというのも大事な論点ですが、近年、新しく浮上してきた論点として、削減目標数値を合意のどこに書くのか、ということも議論になっています。

過去の例では、たとえば、京都議定書では、附属書Bという文書に各国の削減数値目標が書かれていました。附属書とはいっても、京都議定書という国際条約の一部という扱いになります。

近年議論になっているのは、次のパリ合意もこの形式でいくのかということです。京都議定書のような形式だと、改正のためには、また交渉をして数字のやりとりをして、再度合意しなければならないというハードルがある上に、かりに数字の改正に合意が出来たとしても、各国が批准という国内手続きをしなければならなかったりと、いくつか超えなければならない課題があります。

こうした難しい手続きを避けるために、たとえば、目標の数字をパリ合意の外で管理してはどうかという案が出されています。外で管理することにすれば、数値目標を変更したり、新しいものを作ったりするたびに、また交渉をし直して、改正の手続きをとる必要がないから、というのが主な理由です。

これには、もう1つ、アメリカへの配慮という事情もあります。

アメリカでは、よく知られているように、気候変動問題について、オバマ政権と共和党主導の議会との間で対立があります。

パリ合意が仮に数字をその中に含んでいるものになると、アメリカが正式に合意するためには議会の承認が必要になってしまい、そもそも気候変動対策に消極的な共和党主導の議会ではそれが得られないであろうと予測されています。その事態を避けるためにも、数字は外においた方がよいのではないかという考え方もあるのです。

他方で、パリ合意の外においてしまえば、各国が本当にそれを守るのか、という懸念も以前としてあります。

それぞれの考え方に一長一短があるため、今後の議論の中でどのようになっていくのかが注目されています。

2.4)【差異化】

これまでの国際社会の取り組み(国連気候変動枠組条約から京都議定書)では、原則的に、「先進国」と「途上国」という風に国々のグループ分けがされ、原則、先進国が対策を先導するということになっていました。

京都議定書において、先進国のみが温室効果ガス排出量の削減数値目標の義務をもったのは、そうした背景があったためです。

しかし近年では、新興国の著しい経済成長とそれに伴う排出量の増加を背景として、そのような二分法の継続は受け入れられないという主張が先進国の中では強くなっています。

他方、途上国の中で、中国、インド、サウジアラビア、ボリビアのような国々は、そうした主張は、先進国によるこれまでの対策の不十分さを途上国に押し付ける責任転嫁であるとして、強く反発しています。

こうした対立を背景として、新しい枠組みでは「国々の責任をどのように分けるのか」という問題が浮上しています。

これがいわゆる「差異化」と呼ばれる問題です。

一方では、「先進国と途上国」という二分法を主張する一部の途上国と、他方で、「もうそうした区別自体が必要ない」とする先進国が対立しています。

最近では、ブラジル、コロンビア、チリ、メキシコ、コスタリカなどの一部ラテンアメリカ諸国、南アフリカなどが、その中間を行くような主張を行なって、間を取り持つような場面も出てくるようになり、議論に変化も見えてきました。

たとえば、2014年のCOP20では、ブラジルが、「途上国も、やがては先進国と同様な削減義務に段階的に移行していくべきだ」という提案を出して、話題を呼びました。

この差異化の議論は、たとえば、上述した「総量削減の義務的な目標を持つ国はどこか?より緩い形式での削減目標を持つことが許される国はどこか?」「どの国が資金支援の義務があるのか?先進国だけなのか?それとも一部途上国も資金支援をするのか?」などの重要な問題に形を変えて浮上してきます。

極めて政治的に困難な問題ではありますが、この問題を乗り越えていかないと合意することは難しいでしょう。

2.5)【資金支援】

気候変動に関する国際交渉の中でも、しばしば削減目標以上に対立の火種となるのが、資金支援の枠組みのあり方です。

パリ合意へ向けての議論の中でも、資金支援の分野だけとってもいくつもの論点がありますが、ここでは事例として、以下の2つのみを取り上げてみます。

第1は、資金支援は誰が行なうのかという問題です。

これまでは、先進国が責任と能力の観点から、途上国に対して資金を支援するという構図が一般的でした。

しかし、近年では、途上国というカテゴリーに入る国々の中には、中東諸国のように、一人当りのGDPで言えばいわゆる先進国よりも豊かな国も出現しており、韓国やメキシコなどのように、一般的に「先進国」の定義とされているOECD(経済協力開発機構)への加盟を果たしている国々もあります。

そのような状況があることを受けて、パリ合意の中では、資金支援を出す主体として「先進国(developed countries)」という表現だけでなく、「そのような立場にある国々(Parties in a position to do so)」という表現も入れようという議論が先進国から出ています。

しかし、一度、そうした形で途上国の中にも資金支援をするべき国々があると認めてしまえば、なし崩し的に先進国の責任が曖昧にされると考える途上国などから、強く反発を受けています。

第2は、パリ合意の中に、資金支援の目標額について、削減目標のように書き入れるのかどうかという点です。

上述の通り、そもそも、削減目標自身をパリ合意の中に書くのかという論点があるのですが、資金支援について、全体の目標額や個別の国の目標額を書くべきだという強い主張が途上国の多くにはあります。

具体的な金額としては、2009年のコペンハーゲン合意や2010年のカンクン合意で書かれた「2020年までに年間1000億ドル」の2倍、つまり「2030年までに年間2000億ドル」といったような金額が挙がっています。

これについては、先進国の側からは、そんな金額について、しかも2030年というような長期に向けて約束することはできないと、強い反発が出ています。

上記に挙げたような論点が、6月のボンでの会議で、どの程度整理されて、収れんされていくのか、COP21の成功のためには欠かせない要素です。

3) 国際評価・レビュー(IAR: International Assessment and Review)における日本への質問

メキシコのカンクン合意で決まった2020年までの温暖化対策の取り組みで、先進国の削減目標に対する国際的な評価とレビュー(IAR)を行なうことになっています。

2014年のCOP20で、17か国がIARを受けており、今回のSB42で、先進国のうち24か国(日本含む)が、各国から事前に寄せられた質問に答えるセッションが開催されます。(6月4日、5日)

SB42で国際評価を受ける24か国

日本に寄せられる期待と懸念

日本へは、ブラジル、アメリカ、中国、欧州連合、オーストラリアなど10か国から質問が寄せられており、各国から日本へはさまざまな質問が寄せられています。

中には、「2020年の目標をなぜ引き下げたのか、暫定目標と言うことだが、いつ確定目標を発表するのか?引き上げるつもりはないのか?」などがあります。これに対する日本の回答も注目されます。

日本に求められていることは、責任ある国としての十分な貢献です。

2020年目標に関しては、現行の1990年比では3.1%の増加となってしまう「削減目標の引き上げ」が、熱く世界から期待されていることを目の当たりにして、早く野心的な確定目標を示すこと。

そして2020年以降の新しい枠組みに関しては、新しい削減目標の野心をあげて、きちんと「公平で野心的」「2度未満目標達成の経路と整合すること」を世界に向かって発表することが、いま最も求められています。

WWFは、スタッフをボンへ派遣して、世界のWWFのメンバーと共に、交渉の行方を追っていきます。


【2015年6月12日 追記】

ボン会議閉幕:国連の気候変動に関する補助機関会合ボン会議、パリへ向けて交渉テキスト案の整理進む

2015年6日1日から11日にかけて、ドイツ・ボンにおいて国連気候変動枠組条約第42回補助機関会合(SB42)及びダーバン・プラットフォーム特別作業部会第2回第9セッション(ADP2.9)が開催されました。

結果としては、歩みは遅いものの、丁寧に195か国のコンセンサスを得ながら、交渉は進んでいます。

今回のハイライトは大きく分けて3つありました。

1)2020年以降の温暖化対策の国際枠組み「パリの条約」の交渉テキストの進展 2)2020年までの先進国の温暖化対策の国際評価に日本が登場 3)世界の5分の1の国が2020年以降の目標草案を提出。日本も2030年目標草案の政府原案公表

【1】2020年以降の温暖化対策の国際枠組み「パリの条約」の交渉テキストの進展

2015年2月にスイス・ジュネーブで開催された中間会合で、年末のパリでのCOP21において合意される条約の下書きとなる「交渉テキスト」がまとめられたのを受け、今回のボン会議では、いかにパリに向けて、この交渉テキストを整理していけるかが焦点でした。

会議の最初には、各国の多様な意見を反映して90ページもあったテキストは、今回のボン会議を通じてセクションごとに整理統合が進み、選択するべき争点が明瞭化する形にはなり、ボンのテキストとしてまとめられることになりました。

さらに、次に開催される8月会合に向けて、再度このボンのテキストを整理して、核なるパリの条約(パリ議定書になるのか、その他の名前になるのかはわかりませんが、便宜的に「パリ合意」と呼んでいきます)に入るべき内容と、その他、パリ会議の後に技術的に決めていけばよい内容(COP決定などとして)とに分け、さらにパリで決定すべきだが条約ではなくCOP決定などにするべき内容までを含めた「総合的なパリ合意案」を、まず共同議長が作って、各国に交渉のベースとして示すことになりました。

結局、国際交渉とは、温暖化対策の約束事を法的文書で合意する、という作業であるため、合意文書の案が出て、それをベースに交渉が進んでいく、その形が整っていくことが「進展」です。

つまり、今回のボン会議の結果としては、合意文書の案が整っていく方向に決まったので、進展と言えるわけです。

そもそも、2009年のコペンハーゲン会議(2013年以降の温暖化対策の条約に合意するための交渉が行なわれたが、決裂して決定ができなかった時)の時には、その半年前の段階では、各国がばらばらに交渉テキストを提出し、統合された全体テキストは200ページ前後にも及びました。

さらに各国がてんでに主張を付け加えて、手がつけられないくらい膨れ上がっていきました。

それに比べると、今回のパリへ向けての交渉では、各国とも建設的で、少なくとも最終日には、ボンで議論された結果が反映された共同議長テキストを受け入れていこうというコンセンサスがとれ、さらに共同議長に全体的なパリ合意の案を作って各国に示すことを決めることができたのです。

しかし各国の矛盾する意見をすべて反映した合意文書案を作るというのは、非常に困難な仕事ですから、出来上がった共同議長案を見て、「これは受け入れられない」とまた各国が紛糾することもありえます。

予断を許しませんが、まずは年末パリにおける合意が可能となるような道筋にはあると言えるでしょう。

もちろん、先進国と途上国の取り組みにどのように差をつけるのか、パリ合意に書き込まれる削減目標にどの程度法的な強さをもたせるのか、などの難しい問題の交渉はまだこれからです。

パリにおける年末のCOP21まで、残された会合はあと2回(8~9月、10月)ですから、8月会合の前までに示される共同議長の案をもとに各国もそれぞれ国内で討議を重ねて、次の会合における交渉をなるべく有意義なものにしていく必要があります。

【2】2020年までの先進国の温暖化対策の国際評価に日本が登場

このADPの交渉でもう一つ重要なのが、2020年までの世界の温暖化の取り組みを底上げする話し合いです。

その重要なプロセスとして、注目されているのが、各国の2020年目標にむけた取り組みについて、国際的に評価するプロセスです。

平たく言えば、各国の2020年目標に向けた取り組みについて、お互いに質疑応答ができる、ということです。

これは温暖化の国際交渉において、ありそうでなかったもので、各国の目標に向けた取り組みについて、各国がお互いに質問でき、回答をこの多国間プロセスで公開の形で聞けるのは有効であると感じられました。

いわば、国際的に見える形で、対策の進捗状況を確認し合うのは、目標を達成しようというインセンティブにもつながります。

これは、事前に各国が質問を出して、当該国はそれらにオンラインで回答を出し、さらにさらに会合で直接各国からの質問に答えるという形で進められました。

最初の会合は、2014年のCOP20リマ会議(ペルー)で行なわれ、欧州連合やアメリカが登場し、今回のボン会議にはオーストラリアやカナダ、日本、それにドイツやイギリスなどが登壇しました。

特に、もともと1990年比25%削減を公表していたのに、2013年に2005年比3.8%削減に、目標を激減させた日本にも、たくさんの質問が寄せられました。

「2020年目標は暫定目標ということだが、いつ確定目標を出すのか?」「非常に低い目標だが、確定目標の際には上げるのか?」といった厳しい質問に、日本は「原発の再稼働が読めない中では、2020年のエネルギーミックスが決まらないので、まだ確定目標は出せない」といった頼りない回答を返していました。

一方、厳しい質問を受ける国の一方、賛辞を込めた質問を受けている国々もいたのです。

総じてヨーロッパの国々は、欧州連合としてもっている全体目標をどのように各国で分けて実行しているのか、といった質問が相次いでおり、温暖化対策において欧州連合各国がリーダーとして見られていることを改めて感じさせました。

特にドイツに対しては、各国が口々に「再エネや低炭素社会つくりにおいて、いい例を示してくれていてありがとう」などの賛辞と共に質問しているのが印象的でした。

中国も「ドイツはよいモデルを示してくれて感謝する」と述べていたのです。

各国がこぞって聞いていたのは特に再エネの奨励策、ドイツは、明確に今後も再エネの導入を進めると回答し、量を稼ぐやり方から、だんだん市場にゆだねる方向へ舵を切っていることを説明していました。

やはり、試行錯誤しながらも、再エネの意欲的な導入など低炭素社会へ向かって進もうとしている国には、いろいろな批判があるとしても、世界が敬意を払うものだということを改めて感じさせる質疑応答でした。

【3】世界の5分の1の国が2020年以降の目標草案を提出。日本の2030年目標草案も政府原案公表

ボン会議の前に2020年の目標草案を出していた国は、アメリカや欧州連合(28か国)など38の国と地域で、会期中にはモロッコとエチオピアが提出して、世界の5分の1が提出しました。

その他ペルーなども国内で目標草案を発表し、まだまだ提出国は少ないものの、機運は高まってきました。

その中で、日本もG7で安倍首相が、日本の2030年目標の政府原案、2013年度比26%削減を発表し、その後にボン会議でも公表されました。

ボン会議の1週目と2週目に、各国が目標草案の取り組みについて発表する機会が設けられており、すでに目標草案を提出しているメキシコやアメリカなどが発表した後に、日本も2週目に登場して、日本の目標草案が公平で野心的であると説明したのです。

この時には発表したすべての国に機械的に拍手が送られていましたが、日本の目標草案に対しては、世界の市民社会から強い非難が集中しました。

理由は、日本の目標草案がアメリカや欧州連合と比して遜色ないものとして説明されたことに対して、まず基準年を国際的に標準となっている1990年や、自国の2020年目標で採用した2005年ではなく、排出量が非常に多い2013年としたことです。

これは、数値を大きく見せようという意図が透けて見え、かつ、欧州連合やアメリカなどの他国がこれまでに行なってきた温暖化対策の早期努力を無視する形になるからです。

さらに風力や太陽光などの再エネ目標を低く抑えていること、またCO2排出量の多い石炭火力を国内外で推進していることに対しても市民社会からの非難が集まりました。

結局ボンの補助機関会合ではめったに出ない化石賞(気候変動に関する世界のNGO900団体が所属するCANインターナショナルが、最も交渉を妨げる国に贈る不名誉な賞)を、なんと3つも単独で受賞してしまいました。

この目標草案は、国内で2015年6月3日から7月2日までパブリックコメントにかけられています。

目標草案の下となったエネルギーミックスのパブリックコメントは6月3日から7月1日までです。

ボン会議における国際的な評価も鑑みて、真に公平で野心的な目標へ向かってレベルを上げていくことが求められています。


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