南アフリカのサイの密猟が1,000頭を超える


2013年に南アフリカで密猟されたサイの頭数は1,004頭と、2012年の668頭から大幅に増加しました。WWFおよびトラフィックでは、数年来、南アフリカ政府と需要国であるベトナム政府に対し、密猟対策と違法取引の抑制策を強化するように働きかけてきました。しかしながら、これまでのところ目に見えた成果につながっておらず、さらなる強化策を講ずるよう国際社会に呼びかけています。

2008年に始まった密猟の急増

南アフリカ共和国にはクロサイとシロサイが生息していますが、その角を目当てにした密猟が近年、急増しています。

1990年から2007年までは多くても年間数十頭のレベルであったのが、2008年に突然83頭に増加。

それ以降、密猟の被害に遭うサイの頭数は増加の一途をたどり、2013年には1,004頭と1,000頭を超えるに至りました。

アフリカ全体に生息する野生のクロサイは2010年12月時点で4,880頭、シロサイは20,170頭と推定されていますが、このうちのおよそ8割が、南アフリカに生息することを考えると、深刻な事態と受け止めなくてはなりません。

南アフリカのクロサイ

密猟が急増した背景には、組織化された密猟団が乗り込んでいることが指摘されます。

消音器のついた銃を用い、暗視スコープを使って夜間にも活動することから、国立公園という本来であれば保護が手厚いはずのところでの密猟が増えています。ヘリコプターを用いるなど装備も近代化されています。

サイをはじめとする野生生物が多数生息することで知られるクルーガー国立公園では、2013年の1年間にここだけで606頭のサイが殺されました。これはサイの密猟全体の約6割を占めています。

サイの角はベトナムなどで消費

こうした野生生物犯罪に手を染める密猟団は、サイの角を違法な国際取引に流すルートをもっています。

サイの角は、違法な取引を通じてアジア、特にベトナムに送られています。

ベトナムではサイの角が高価な贈り物となり、所有することが一部の富裕層のあいだでステータスシンボルとなっていること。

また、薬効が科学的に認められていないにもかかわらず、ガンの治療薬や滋養強壮としての効果が信じられ、高価な薬の成分としての旺盛な需要があることも、南アフリカでの密猟や違法取引を誘発する原因になっています。

この現状を受けて、南アフリカでは、密猟の実行犯や関係者の検挙に力を入れており、検挙数は増えています。

ただ、それ以上に、野生生物犯罪も増加。より厳しく、法律を適正に執行し、確実に逮捕することが求められています。

特に、犯罪を抑制するためには、検挙した上で、有罪判決をくだすことが、もっとも効果的です。

法律をかいくぐって密猟に成功すれば、大きな利益を得られるという構図を変える努力が続けられています。

生息国と消費国、二国間での取り組み

一方で、サイの角を消費する国での需要を抑制することも大切です。

サイの角の商業取引が、特に絶滅のおそれの高いクロサイについては、明白なワシントン条約違反であることを意識させ、消費意欲をおさえていかなくてはなりません。

また、サイの角の成分の入った薬について、効能が確認されていないことを示し、買わないよう啓発することも重要です。

WWFとトラフィック(野生生物の国際取引をモニタリングするWWFとIUCNの共同プログラム)でも、こうした状況を改善するため、南アフリカ政府およびベトナム政府に働きかけを続けてきました。

その結果、2010年10月には南アフリカ政府の関係者5人が、ベトナムを訪問して意見交換する機会が設けられ、2012年12月には、両国間で野生生物の違法取引への対処を含む生物多様性保全に関わる覚書が交わされました。

その後、両国はサイの保護に関する行動計画も策定。さらに、南アフリカ共和国は、中国とも同様の合意文書を調印し、タイ、ラオス、カンボジアなどとも合意文書を準備しているということです。

目に見える成果が出るのは、まだこれからという状態ですが、こうした二国間での協調を進めながら、南アフリカにおいては犯罪に対する法の裁きを確かなものにすることと、ベトナムなどの消費国では需要を抑制し、違法取引を法律によって厳しく取り締ることが必要です。

国際的な取り組み

国際的で大がかりな組織犯罪となっているサイの密猟の問題を、一朝一夕に解決することは困難かもしれません。

しかし、ここ数年、野生生物に関する犯罪をどう抑えこむかが国際会議の議題に上ることが多くなってきています。

2012年のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳宣言には、野生生物の違法取引に対する懸念が盛り込まれ、アメリカのヒラリー・クリントン国務長官(当時)も同年11月の講演の中で適切な対処が必要と発言。またオバマ大統領も2013年、国際的な野生生物犯罪に対応するため1,000万ドルの資金供与と対策組織の設置を表明しました。

WWFでも、2012年の夏から2013年の夏まで、野生生物の密猟と違法取引に警鐘を鳴らし、その事実を広く知らせる世界的なキャンペーンを実施、国際社会としての取り組みの重要性を訴えました。

そうした流れをくむ形で、2014年2月12日、13日、野生生物をめぐる犯罪に対処する国際会議がイギリスで開かれます。

「野生生物の違法取引に関するロンドン会議」と呼ばれるこの会議は、イギリスのキャメロン首相主催、英国王室のチャールズ皇太子、ウイリアム王子の協力で開催され、50カ国の閣僚級の参加が期待されています。

そして会議の成果として、野生生物の違法取引を抑制する国際的な取り組みを確実なものにするため、参加各国が政治的意志を表明する共同宣言を出すことが目指されています。

WWFとトラフィックも、この会議を支持すると共に、引き続き世界の野生生物犯罪を無くしてゆくための、より有効な策を模索しています。

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