東部太平洋のマグロ類保全にゆるやかながら進展あり 2013年 IATTC年次会合閉幕


2013年6月10日から14日まで、メキシコのベラクルスで開催されていた、IATTC(全米熱帯まぐろ保全委員会)の第85回年次会合が閉幕しました。今回の会合では、東部太平洋のマグロ類漁業について、いくつかの保全管理措置が採択されるなど、遅い進行ながらも、進展が見られました。今後は、中西部太平洋の海域における資源管理の行方が注目されます。

太平洋のマグロ資源のゆくえ

IATTC(全米熱帯まぐろ保全委員会)は、日本を含む、東部太平洋でのマグロやカツオ漁に関連する各国政府が参加する、国際漁業管理機関の一つです。

年次会合では、漁獲量や漁船の数、資源管理の在り方について話し合いが行なわれ、各国の合意が図られます。

IATTCが管轄する東部太平洋で漁獲されるマグロ類は、メバチ、キハダ、太平洋クロマグロ(本マグロとも呼ばれる)など。近年はこの海域でも、過剰な漁獲によるマグロ類の資源量の減少が指摘されてきました。

また、日本近海で産卵する太平洋クロマグロも、この海域まで回遊しており、IATTCの会合は、中西部太平洋のマグロ漁を管轄するWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の会議と並び、太平洋のマグロ資源のゆくえを左右する場として、注目されています。

遅々とした進行ながら管理措置を採択

今回開かれたIATTCの第85回年次会合では、東部太平洋における熱帯マグロ類の保護管理措置がいくつか採択されました。

これらの措置には、年間62日の禁漁期間の設置や、ガラパゴス諸島西部に広がる広大な海域での巻き網漁を1カ月の間、禁漁とすることなどが含まれています。そして、この措置は、この海域で操業する大規模なマグロの巻き網漁船と、24メートル以上の延縄漁船すべてに対し、義務化されることになります。

WWFスマート・フィッシング・イニシアチブの東部太平洋マグロ類コーディネーター、パブロ・グィレロは、この採択の実現について、「東部太平洋のマグロ類資源を、持続可能な生産レベルに維持することにつながる」と述べ、措置の内容を評価しました。

また、今回の会議では、IATTCに加盟する各国に対し、東部太平洋で漁獲される太平洋クロマグロの漁獲量に、5000トンの上限を設けること。さらに、漁獲データの収集や、混獲の減少などを実現したエコロジカルFAD(集魚装置)の採用に加え、FAD特定プログラムを含めた対策措置の採用も決定しました。

エコロジカルFADは、サメやウミガメの混獲を減らすために考案されたもので、ジンベイザメの保護にも大きな前進をもたらすものとなるジンベイザメ周辺での巻き網漁の禁止ともども、、WWFは高く評価しています。

残された懸念

一方、WWFは、いくつかの点について、懸念が残された点も指摘しています。

特に、マグロ漁による影響もあり、絶滅の危機に瀕しているシュモクザメの保全措置や、個体数が減っているにもかかわらず、科学諮問委員会の勧告が無視されクロトガリザメのための保護措置を採択しなかったことなどについては、IATTCが重要な保全措置の採択に失敗したと指摘しました。

また、東部太平洋で操業する漁船団に対し、サメ類のヒレを切らずに水揚げすることを義務化するよう求める保全措置の採択も実現せず、さらには、IATTCは、科学諮問委員会が勧告したこの海域でのマグロの具体的な管理基準点と漁獲管理方策の採択についても、拒否しました。

世界の海のマグロ類の資源管理にかかわる国際機関。海域や魚種によって管轄が異なる。
くわしく見る

これらの措置が導入されれば、確実に漁獲量を持続可能な制限内に押さえ、マグロ市場への確実な供給を確かなものにできたほか、漁業経営者(管理者)も素早くかつ効果的に行動することが可能となったため、この措置の導入失敗は、今後に懸念点を残すものとなりました。

漁獲管理方策の規則の採択は、現代の漁業管理の重要な要点であることから、WWFは引き続き、IATTCがこれらの措置をできるだけ早く採択することを求めています。

巻き網漁船の問題と中西部太平洋の管理問題

もう一つ、残されている大きな懸念は、東部太平洋で操業する漁船隻数や規模をめぐる議論です。

過剰な漁獲と、過剰な生産能力が、資源を枯渇へ導いている可能性が、すでに十分認識されているにもかかわらず、今回の会議では、現状でマグロの巻き網船団を保有する数カ国は、努力量の増加を要求し続けました。

漁船の隻数や規模は、東部太平洋のマグロ資源に大きな影響を与えうる問題です。これについても、WWFはより良い管理と真剣な技術的処置を、IATTCおよび参加加盟各国に対し、求めています。

また、今回閉幕したIATTCが管理をめざす東部太平洋のマグロ資源の問題は、中西部太平洋のマグロ資源管理が今後どうなるかにより、大きく左右されます。

マグロ類は、太平洋を西から東へ、また東から西へ大移動しながら生きる大型魚。その保全には、東部太平洋の漁業管理に携わるIATTCだけでなく、中西部の漁業管理を手掛けるWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の会合でも、参加各国が前向きに取り組むことが必要とされます。

日本も、マグロの一大消費・輸入国であり、遠洋漁業も盛んに行なっていることから、IATTC、WCPFCの2つをはじめ、マグロにかかわるすべての国際漁業管理機関に参加していますが、マグロの資源問題を解決してゆくには、関係するすべての国々が、持続可能な資源利用に向けて、自ら漁業の規制を受け入れ、積極的な管理の取り組みを行なってゆかねばなりません。

WWFでは今後も、海洋生態系の頂点に立つマグロの保全と、その持続可能な利用の推進をめざし、各国政府に対する働きかけを続けてゆきます。

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