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WWFの活動

このままでは新しいエネルギー社会は作れない:菅総理のG8での発言を受けて

記者発表資料 2011年5月26日

2011年5月26日から開催されているフランス・ドービルでのG8(主要先進国)首脳会議において、菅総理が、日本のエネルギー戦略に関する新しい方針(以下「新方針」)を発表しました。

WWFジャパンは、自然エネルギー重視の姿勢が明確に打ち出されたことは評価しますが、その具体的な内容をみると、現状の路線をやや強化しただけに過ぎません。

他方、原子力に関しては、引き続き日本の基幹エネルギーであることが再び強調された新方針に、強い危機感と深い憂慮の念を抱いています。

まず、菅総理が発表した新方針では、今月上旬の記者会見に引き続き「原子力と化石エネルギーという二つの柱に加え、自然エネルギーと省エネルギーという新たな二つの柱を育てる」ために、それぞれの「柱」に対応した「4つの挑戦」が挙げられています。

しかし、気候変動が深刻化していることや、この度の震災とそれに続く原発事故を踏まえるならば、「4つの柱」ではなく、「自然エネルギーと省エネルギー」の2つの柱に軸足を移していくことを明確にすべきでした。

原子力の安全性追求や化石燃料の高度利用は、それら単体としては重要ですが、だからといって、原子力や化石燃料というカテゴリーそのものが今後のエネルギー政策の「柱」にはなるべきではありません。
その他にも、以下のような点において、新方針は不十分です。

1.自然エネルギーに関する目標が不十分

自然エネルギーについては、「発電電力量に占める自然エネルギーの割合を2020年代のできるだけ早い時期に20%とする」という目標が掲げられました。現状のエネルギー基本計画では、2030年までに「ゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー由来)の比率を約70%(2020 年には約50%以上)とする」という目標が掲げられており、そのうちの20%が再生可能エネルギー相当分と理解されているので、総理の目標はこれを10年程度前倒しにした形になります。

CO2排出量の削減を着実に進めつつ、エネルギー需要を満たしていくためには、自然エネルギーの目標はより高く定め、長期的には、自然エネルギーで100%のエネルギーをまかなうというビジョンをかかげるべきです。

2008年から2009年にかけて新たに増加した世界の発電設備容量300GW(ギガワット)のうち、140GWが自然エネルギーで占めるほど、世界の自然エネルギー市場は成長しています。その中で技術大国である日本が乗り遅れることは、日本の産業活性化にとっても得策ではありません。

総理が国際的な場で発表される言葉には、自然エネルギーへの民間投資を促す強い力があります。その明確なシグナルが必要でした。

2.原子力から決別できていない

自然エネルギー分野で出遅れている日本にとって、原子力を継続することは、近い将来、世界の中心産業になるであろうこの分野において、リーダーシップを発揮する機会を遠ざけることを意味します。

原発事故を受け、日本は、原子力に依存したエネルギー政策から脱却していくことを宣言するべき時にあります。それは世界的な趨勢でもあり、今回の事故当事国である日本が、そのことを明確にできなかったのは、極めて残念です。

3.省エネルギーについて、目標を設定する意志が明確化されていない

4つの挑戦のうちの1つとして、省エネルギーの可能性への挑戦が掲げられているものの、具体的な内容の言及がありませんでした。

原子力発電を段階的に減らし、再生可能エネルギーで全てのエネルギーをまかなっていくためには、エネルギーの消費量をかつてない水準で大幅に減らしていくことが鍵となります。
省エネルギー先進国という驕りを捨て、今後の取り組みを具体化していくためにも、総量でのエネルギー削減目標を設定していくことを明確に宣言するべきでした。

4.温室効果ガス削減目標への言及がない

世界は、日本が震災を乗り越えて、引き続き気候変動問題に取り組んでいくことを期待しています。日本は、今回のG8においても、その意志を明確にするべきでした。特に、温室効果ガス排出量削減目標について、堅持していく方針を打ち出すべきでした。

総じて、今回発表された新方針では、日本は、「今までよりは少し自然エネルギーを重視するが、基本的には今まで通り、また原子力に関しても今後も継続していく」となってしまう可能性が非常に高いと言えます。

このような時だからこそ、より大胆かつ野心的に、自然エネルギー中心の社会を目指すことを明確にすべきでした。
今後のエネルギー基本計画見直しの議論では、更に踏み込んだ内容が検討されることを期待します。

【関連資料】

■問合せ 気候変動プログラム リーダー 山岸尚之(Tel:03-3769-3509 climatechange@wwf.or.jp)

2011/5/26

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