世界の森林を守るために!「木材調達ガイドライン」の強化を提言


2010年11月16日、WWFを含む国内の環境NGOと個人は、「木材調達ガイドライン」の強化に関する要望書を林野庁に提出しました。これは、環境に配慮した製品やサービスの購入を推進するために施行している「グリーン購入法」が、世界の森林の生物多様性の保全につながっていないという問題点を指摘し、その強化・改善と消費国としての木材貿易における責任を果たすことを求めるものです。

「グリーン購入法」とは?

日本政府は2006年に「グリーン購入法」を導入し、木材と紙などの木材製品の合法性(違法でないこと)、持続可能性を確認することをルール化しました。
この法律では、国や独立行政法人などの公的機関に対し、世界の環境に配慮した、木材や紙などの木材製品を調達するための方針を、「基本方針」に沿った形で毎年定めることを求めています。

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この「基本方針」とは、どのような製品やサービスが「環境に配慮しているか」を示す、基準のようなものです。 実際に、国や公的機関が調達する紙や木材製品については、原材料の合法性を確認することや、必須ではないものの「持続可能性」が確認できていることが望ましい、といったルールが定められています。

また、この「合法性」と「持続可能性」を定義し、確認する方法について定めたガイドラインも、同じく2006年に作られました。それが、林野庁が2006年2月に作成した「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン (通称「木材調達ガイドライン」)」です。

「木材調達ガイドライン」の課題

「木材調達ガイドライン」とは、いわば日本の木材の調達を持続可能なものにするための基本的な考え方や方針を示したしもの。
その内容は、木材の大量消費国である日本政府が、世界の森林保全に対して負っている責任を、果たすことができるかどうかを左右する、非常に大きなものと言っても過言ではありません。

しかし、現行の日本の「木材調達ガイドライン」には、いくつかの課題があります。
 

課題1:「合法であればよい」というものではない

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インドネシア・スマトラの製紙会社の工場。その製品は日本にも輸出されている。貴重な自然林が伐採され、コピー用紙などに作りかえられているケースも多い

森林の生物多様性を脅かす原因には、合法的に行なわれている伐採も含まれます。貴重な自然林を農地などに転換する場合、現地の法律では合法である場合も多く、ただ違法伐採による製品を排除するだけでは、森林破壊に歯止めをかけることはできません。

課題2:「持続可能性」の定義が曖昧

森林生態系への十分な配慮を加えるには、「合法性」のみならず、「持続可能性」を確認することが有効です。しかし、「木材調達ガイドライン」では、いまだに「持続可能性」の定義を明確にしていません。そのため、現状のグリーン購入法は、合法的な伐採による森林破壊を防ぐ、有効な対策になっていません。

課題3:「合法性の確認」が免除されるケースがある

グリーン購入法では、紙や木材製品の原料として、間伐材や製材工場の端材、小径木(若い木やもともと太く育たない木)を利用する場合、合法性の確認を免除することがあります。
しかし、こういった原料の全てが、適切な森林管理によって生産されたものとは限りません。
端材のような、他の製品の生産に使用された丸太材の「残り」であっても、もともとの丸太が合法に伐採されたものであるかどうかは分かりません。また、小径木についても、貴重な自然林を皆伐した際に混ざるようなものであれば、やはり問題があるといえます。
木材資源を無駄なく利用することは大切ですが、そのことと、適切に管理された森林に由来する製品かどうか確かめるのは別の事柄。合法性・持続可能性を同様に確認することが必要です。

「木材調達ガイドライン」の強化を提言

要望書では、現在の日本のグリーン購入法のガイドラインが、生産国の森林に関する法令が守られているかどうかを形式的に確認する内容にとどまっている点や、EU(欧州連合)やアメリカが違法木材の輸入を厳しく取り締まるため、すでに導入または検討している水際対策のための法規制を、日本でも導入することを求めています。

また、そもそもグリーン購入法は、国や公的機関を対象としたもので、民間企業などの調達する紙・木材製品や原材料については、今のところワシントン条約に基づく国内法しか規制がありません。

世界では今、自然林の深刻な減少・劣化が続いています。過去10年の間、一年あたり失われた自然林の広さは、約1,300万ヘクタール。日本の面積の約3分の1に匹敵します。自然林の喪失は、野生生物から生息地を奪い、人と野生動物の衝突を引き起こしたり、密猟や地球温暖化などの問題を引き起こす原因にもなっています。 大量の木材や木材製品などを海外から輸入している日本も、これらの問題に決して無関係ではありません。

消費国、輸入国だからこそ、世界の森林の生物多様性を保全するために出来る対応を、出来る限り行なうこと。またその責任を果たしてゆくために、WWFは政府に対し早急な対応を求めていきます。

関連資料

共同記者発表資料 2010年11月17日

 

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