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WWFの活動

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日本のエコロジカル・フットプリントに関する初めての報告書を公表

記者発表資料 2010年8月25日

WWFジャパンとグローバル・フットプリント・ネットワーク(Global Footprint Network=GFN)は、本日、日本のエコロジカル・フットプリントに関する初めての報告書を日本語および英語でとりまとめ、公表した。

WWFは、これまで『生きている地球レポート(Living Planet Report)』を2年に一度のペースで公表し、地球環境の動向を伝えてきた。今秋には2010年版を公表する予定である。
それに先立ち、このほど日本のエコロジカル・フットプリントに関する報告書をまとめた。『生きている地球レポート』では2つの大きな指標を扱っている。「生きている地球指数」と「エコロジカル・フットプリント」の2つである。このうち、「エコロジカル・フットプリント」に絞って、日本の経年的変化を追い、日本の現状と課題を明らかにした。

分析の結果

2006年の日本のエコロジカル・フットプリントは、一人あたり4.1ghaとなった。これは世界平均(2.6gha)の1.5倍である。日本のバイオキャパシティは一人あたり、わずか0.6ghaにすぎず、世界平均(1.8gha)の3分の1にしかならない。世界中の人が、日本人と同じ生活をすれば、地球が2.3個必要となる計算だ。*gha:グローバル・ヘクタール(資源を生産し、二酸化炭素を吸収する能力の世界平均値をもつ陸域水域1ヘクタール)

カーボン・フットプリントの大きな日本

日本のエコロジカル・フットプリントが4.1ghaになる理由は、二酸化炭素を吸収するのに必要な土地面積の大きさで説明できる。総エコロジカル・フットプリントの65%がカーボン・フットプリントで占められているのだ。1961年にくらべると、カーボン・フットプリントは1990年代後半に13倍に増大した。

輸入に頼る日本

一人あたりバイオキャパシティが0.6ghaしかないのに、エコロジカル・フットプリントが4.1ghaあるということは、その不足を輸入に頼っていることを意味する。

例えば、日本は海洋国家として近海に広い漁場を持ち、生産に関する漁場のフットプリントは大きいが、それでも消費をまかなえず、他国の水産物に依存している。また、国内の生産が長期的に低下してきているので、他国からの供給への依存割合は近年高まりつつある。

林産物についてみると、日本は森林地が多く、森林のバイオキャパシティが大きいため、計算上は木材製品の国内需要をすべて国内のバイオキャパシティで満たすことができるはずである。実際には、2006年には木材の20.3%しか自給できておらず、輸入への依存割合が大きい(林野庁「平成18年木材需給表」による)。
耕作地のバイオキャパシティは日本の場合、極めて低く、耕作地から得られる穀物などの相当部分を輸入に頼っている。将来的に気候変動によって、世界の穀物生産量が減少するようなことがあれば、我が国は影響を免れないだろう。
いずれをとっても、一次産品の生産と消費のバランスが悪い。

エコロジカル・フットプリントを下げるために

日本人の日常生活におけるエコロジカル・フットプリントの内訳では、食料がもっとも大きな割合を占める(36% /家計消費活動に占める割合)。日本では、食べずに廃棄される量が年間1,380万トンに達し、大きな課題である。逆に言えば、廃棄される食品の量を減らせば、エコロジカル・フットプリントを下げることにつながり、改善余地が大きい。日本で廃棄される食料は、全世界で食料援助にまわされる量の1.7倍にもなる。

日本のエコロジカル・フットプリントの3分の2を占めるカーボン・フットプリントについても、日本は二酸化炭素を削減するための法制度を整備できていない。国内排出量取引や環境税の導入を検討し、二酸化炭素を削減すれば、自ずと日本のエコロジカル・フットプリントの総量も低下させられる。

日本は先進国の一員として、エコロジカル・フットプリントの大きな国ではあるが、これを下げるのに効果的な取り組みは比較的よく見えている。輸入に依存する割合の大きい日本は、我が国のみならず世界の持続可能性という観点からも、そのエコロジカル・フットプリントを下げる努力が求められる。

生物多様性条約の第10回締約国会議が、10月に名古屋で開催される予定である。生物の多様性を守るためにも、我が国はエコロジカル・フットプリントを下げるための具体的な方策を講じるべきときを迎えている。

25日、WWFジャパンは日本政府に対して、生物多様性条約のポスト2010年目標の指標としてエコロジカル・フットプリントを取り入れること、および我が国の環境基本計画で積極的に活用することを求める要望書を提出した。


環境指標「エコロジカル・フットプリント」の具体的活用に関する要望書 2010年8月25日

環境大臣 小沢鋭仁 様
農林水産大臣 山田雅彦 様
経済産業大臣 直嶋正行 様

財団法人世界自然保護基金ジャパン 会長 德川恒孝

拝啓、時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。日頃、自然・環境の保全にご尽力を下さり、感謝いたします。

さ て、このたび、持続可能な社会づくりの指標である、エコロジカル・フットプリント*を使って「日本のエコロジカル・フットプリント報告書2009」をまと めました。ここにその内容をご報告させていただくとともに、エコロジカル・フットプリントをより一層活用し、世界の環境政策をリードしていただくよう、以 下のとおり日本政府に対して要望いたします。

世界の持続性を把握する共通指標としてエコロジカル・フットプリントを位置づけ、日本の環境政策に積極的に取り入れるとともに、国際社会に活用を提案し、世界の環境保全に貢献する。具体的には、

  1. 日本の環境基本計画や生物多様性国家戦略の指標として、数値目標の導入を検討する。
  2. 生物多様性条約第10回締約国会議(CBD COP10)の主要議題である、「ポスト2010目標」のなかに、指標のひとつとして「基準年レベルに下げる」などの具体的目標を取り入れることを提案する。

詳細について、下記をご検討いただきたく、よろしくお願いいたします。

敬具

*エコロジカル・フットプリントとは、地球規模で、自然資源と経済活動のバランスを数値化したもの。

 

A. 要望事項

1. 日本の環境基本計画および生物多様性国家戦略の指標として、数値目標の具体的な導入を検討する。

将来の環境基本計画見直し、および生物多様性国家戦略策定のときに、エコロジカル・フットプリントを指標とし、具体的な数値目標を取り入れていただきたい。

理由:
現在、環境基本計画では、重点分野ごとに指標群が定められている。その多くは、直接的で因果関係が明確なものであるが、分野間で対立する結果が得られた際 の調整には利用しづらいのも確かである。その点、環境への負荷を包括的に調べる指標として、エコロジカル・フットプリントは有効である。
日本政府は、2006年4月7日に閣議決定した第三次環境基本計画の中で、エコロジカル・フットプリント指標を利用して計画の進捗状況を評価することとし ており、また、2010年5月に発表された日本版、生物多様性総合評価においてもエコロジカル・フットプリント指標を利用している。現在の活用は参考程度 であるため、より具体的な活用策を期待する。

2. CBD COP10の議題のひとつである、ポスト2010目標のひとつに指標として入れる。

具体的には、
ポスト2010目標案目標4「2020年までに政府およびすべての関係者が、限りある自然資源の利用を続けるために、持続可能な計画をたて、実行している。」
を以下のように変更する。
「2020年までに、世界全体のエコロジカルフットプリントが2000年レベルに下がっており、減少傾向にある。」

理由:
「生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という「2010年目標」は達成されずに終わった。この「2010年目標」は、目標が抽象的で、計測しづらかったという反省がある。
CBDでは、2010年目標4.2「生物資源の非持続的な消費、あるいは生物多様性に影響を与える消費の減少」の指標として、エコロジカル・フットプリン トの導入をすでに決定している(第8回締約国会議(2006)の決定DecisionVIII/15)。ポスト2010年目標において、目標のなかに具体 的なレベルを取り込むことで環境負荷削減の実現可能性が高まる。

B. 要望の背景

1.国際生物多様性年に世界が新しい約束をすることが求められている。

国 連ミレニアム開発目標に、「2010 年までに生物多様性の損失を大幅に抑える」という目標を設定したにもかかわらず、世界全体の認識は低く、自然劣化はすすんでいる。いままでのやり方ではな く、新しい施策が必要である。そのひとつは、世界がひとつになって、共通の指標を使い、環境に与える負荷を減らす施策を具体的に検討することである。ポス ト2010年目標を採択するCBDCOP10の議長国である日本政府は、今後2年間、この議論をリードし、決着させる大きな責任を負っている。

2.日本のエコロジカル・フットプリントの傾向は、具体的で効果的な解決策を示唆している。

今 回作成した「日本のエコロジカル・フットプリント報告2009」では、高い生活水準と低エコロジカル・フットプリントの社会が、かつての日本に存在してい たことが示唆された。日本政府は、エコロジカル・フットプリントの指標としての具体的導入を国際社会に働きかけると同時に、この低エコロジカル・フットプ リント社会の再現の道筋をつけることで、世界の環境政策のトップランナーとなりうる。

3.環境基本法の基本理念を具体化できる。

我 が国の環境に関する憲法にあたる「環境基本法」の基本理念には、「人類存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれる おそれが生じてきている」とある。さらに、私たちがめざすのは、「環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら、持続的に発展する」社会である。 「経済の成長」ではなく、「持続可能な社会の発展」を実現する方法を国、行政、事業者、市民が一緒に推進しなければならない。
エコロジカル・フットプリントは、この内容を具体的に数値化し、わかりやすく示したものである。環境基本法の基本理念を実現するためにも有効な手段である。


エコロジカル・フットプリント Q&A

 

エコロジカル・フットプリント・レポート 日本(PDF形式)

*こちらについては2012年に発表された最新盤をご覧ください。

  日本語版(オリジナル) / 英語版(Japan Ecological Footprint Report)

この件に関するお問合せ

WWFジャパン 清野比咲子 Tel.03-3769-1711/岡安直比 Tel.080-1308-9661/広報担当:大倉寿之 Tel.03-3769-1713
GFN 伊波克典 Katsunori@footprintnetwork.org  Tel. +1-510-501-4593 (-0800 GMT)

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