67団体がジュゴンの生息地辺野古への基地建設反対に共同声明


鳩山政権が現在検討している沖縄県名護市辺野古(へのこ)沖の浅瀬に「くい打ち桟橋方式」で基地を建設し、奄美諸島徳之島などに訓練を移転する計画に対し、環境保全などに取り組む国内67の団体が、強く反対する共同声明を政府に提出しました。

「くい打ち桟橋方式」に対する反対声明

沖縄県名護市の辺野古(へのこ)の沖合いにある海草藻場は、沖縄島最大の規模で、絶滅が懸念される海の哺乳類ジュゴンの、重要な採食場所になっています。

2010年5月14日、環境保全などに取り組む国内67の団体は、政府が現在検討している、この辺野古沖の浅瀬に「くい打ち桟橋方式」で基地を建設する計画に対し、共同で反対声明を発表。内閣総理大臣、防衛大臣、外務大臣宛に提出しました。

また、基地建設計画の撤回と、ジュゴンの生息する沖縄の海の環境保全に賛同する、世界550あまりの団体の署名もあわせて提出。日本とアメリカの市民社会の中でから上がった「ジュゴンが棲む辺野古の海に基地はいらない」という声を政府に届けました。

浅瀬に広がる海草藻場や、サンゴ群集が見られる海域での「くい打ち工事」は、作られた構造物が太陽光を遮断し、海草やサンゴの光合成を阻むばかりか、自然の海流にも大きな影響を及ぼすことが予想されます。

これを受けて、周辺の環境に壊滅的な悪影響を与えることを懸念する、67団体の代表は同日、衆議院第1議員会館において、記者会見を実施。

会見では、沖縄大学の桜井国俊教授によるくい打ち桟橋方式の問題点についての指摘や、社民党の服部良一衆院議員や各環境団体から、計画の見直しを求める発言がありました。

「琉球列島の生物多様性保全と軍事基地計画に関する見解」を5月12日に発表していたWWFジャパンも、この声明に賛同し、会見に臨みました。
2010年は国連の国際生物多様性年。10月には名古屋で日本が議長国となる、第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)が開催されます。
この国際会議でも沿岸域の海草藻場を含む海洋保全についても話し合いが行なわれることになっています。

20100514d.jpg

沖縄県名護市の辺野古の海と(写真上)と、記者会見で「くい打ち桟橋方式」の問題点について発表する沖縄大学の桜井国俊教授


【共同声明】辺野古への基地建設に強く反対します 2010年5月14日

「くい打ち桟橋方式」も豊かな海の生物多様性を破壊します

米軍普天間飛行場移設先について、政府は名護市辺野古沖の浅瀬に「くい打ち桟橋方式(QIP)」で新基地を建設し、奄美諸島徳之島や各地の自衛隊基地へも訓練を移転する計画を立てていると報道されています。
辺野古沖の浅瀬には沖縄島では最大の海草藻場があり、外洋に面して連続したサンゴ礁が発達しています。また、深く切れ込んだ大浦湾には巨大なアオサンゴやユビエダハマサンゴの群集があり、嘉陽の沖にも藻場とサンゴ礁が連なっています。

こ れらの海域では、海底の泥のなかから新種のエビ・カニ類が多数発見され、クマノミ類などの魚類も多く、島や岩礁ではアジサシ類が繁殖しています。さらに、 絶滅危惧種ジュゴンにとって重要な生息場所となっており、特に辺野古の藻場は、絶滅を回避するための重要な採食場所として確保する必要があります。このよ うに、辺野古、大浦湾、嘉陽の海域は、まさに生物多様性のホット・スポットになっています。

しかし、「くい打ち桟橋方式」による新基地の建 設は、数千本の杭打ちによって海底の環境を攪乱し、また、上部構造物の滑走路等によって太陽光が遮断されることから、海草やサンゴは生育できなくなりま す。さらに、数千本の杭は潮の流れを阻害し、辺野古だけでなく大浦湾や嘉陽の海域にも悪影響を及ぼすことが心配されます。また、杭や上部構造物のメンテナ ンスのために使用される塗料や薬剤が海域の汚染を引き起こす可能性もあります。このように「くい打ち桟橋方式」は、埋立方式と比べて環境への影響が小さい とは考えられず、同等かそれ以上と予想されます。さらに、新基地での軍事演習は、騒音や墜落の危険など、地域住民の生活に大きな不安を与えることになりま す。

普天間飛行場移設先は、1997年の辺野古海上ヘリポート案から二転三転し、昨年の政権交代によって、辺野古等の沖縄県内には造らない ことが約束されながら、多くの県民や国民の世論にも反して再び辺野古に戻るという迷走状態になっています。これでは民主主義が守られているということはで きません。

私たちは、政府が約束を守り、辺野古をはじめとして沖縄県内には新たな基地を造らない、また、県外でも住民が反対するところには移転しない方針を確立するように強く訴えます。

2010 年は国連の国際生物多様性年であり、IUCN(国際自然保護連合)は2010年には特にジュゴンの保護に取り組むべきと決議しています。第10回生物多様 性条約締約国会議(名古屋)から第11回会議までの2年間、日本政府は議長国を務めることになっており、地球の生物多様性保全に大きな責任と義務を負って います。このような時代に軍事基地建設を強行するべきではありません。

政府が豊かな海の生物多様性を破壊する新基地建設計画を断念することを強く求めます。

賛同団体

JUCON ネットワーク、グリーンピース・ジャパン、ピースボート、WWFジャパン、(財)日本自然保護協会、(財)日本野鳥の会、沖縄環境ネットワーク、沖縄・生 物多様性市民ネットワーク、高江「ヘリパッドいらない」住民の会、ヘリ基地いらない二見以北十区の会、ラムサール・ネットワーク日本、ジュゴン保護キャン ペーンセンター、北限のジュゴンを見守る会、セイピースプロジェクト、許すな!憲法改悪・市民連絡会、日本環境法律家連盟(JELF)、「自然の権利」基 金、基地のない平和で豊かな沖縄をめざす会大阪、エルザ自然保護の会、ピース・フィロソフィー・センター、広島フィールドミュージアム、環瀬戸内海会議、 日本湿地ネットワーク、ピースリンク広島・呉・岩国、アツモリソウ救援隊、東京YWCA「月桃の会」、平和・人権・環境を守る岐阜県市民の声、徳山ダム建 設中止を求める会、市民自治を創る会、護憲ネットワーク、おんな9条の会ほっかいどう、海の生き物を守る会、福島老朽原発を考える会、空と海の放射能汚染 を心配する市民の会、リサイクルグループ・カリーナ、ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン、千葉県自然保護連合、環境共育を考える会、国民救援会 枚方・交野支部、ウエットランドフォーラム、藤前干潟を守る会、みん宿ヤポネシア、NPO BIO de BIO、ピースサイクル全国ネットワーク、CBD市民ネット・生物多様性法制度部会、ツキノワの会~人と野生動物との共存を考える~、ピース・ニュース、 三浦・三戸自然環境保全連絡会、うちなんちゅの怒りとともに!三多摩市民の会、横浜南部九条の会、すなめりの会、生物多様性JAPAN、全石油昭和シェル 労働組合、DAYS JAPANサポーターズクラブ名古屋、沖縄について考え・連帯する「命どぅ宝」の会、あとりゑ・クレール、サーフライダー・ファウンデーション・ジャパ ン、アジア太平洋資料センター、ナマケモノ倶楽部、憲法ひろば・杉並福岡地区合同労働組合、憲法9条・メッセージ・プロジェクト(K9MP)、六条潟と三 河湾を守る会、千葉の干潟を守る会、ジュゴンネットワーク沖縄、じゅごんの里、環境行政改革フォーラム

合計67団体、個人賛同25名

 

問合せ先

JUCONネットワーク事務局(「自然の権利」基金/JELF気付))
E-mail: jelf@green-justice.com ブログ:http://jucon.exblog.jp/

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP