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WWFの活動

「エネルギー基本計画」見直し骨子案についての意見

意見書 2010年4月7日

資源エネルギー庁エネルギー基本計画見直し意見受付担当宛

以下は、資源エネルギー庁が2010年3月24日に、エネルギー基本計画見直しの検討に当たり、意見を広く募集したのに応えて、WWFジャパンが4月7日に提出した「今後の資源エネルギー政策の基本的方向について~『エネルギー基本計画』見直しの骨子(案)」に対する意見である。意見は、骨子(案)の当該ページごとに記述している。

3ページ:「気候・エネルギー安全保障」の観点から基本計画を立案することが肝要

健全な社会と地球環境の維持は、人類存続の前提条件である。地球環境が損なわれれば、その中で生活する我々人間も存続の危機に直面する。その意味において、気候変動対策は、人類存続の最重要課題の一つであるといえる。

資源エネルギーの安定供給は社会にとって重要であるが、エネルギー政策が気候変動政策を大きく左右することに鑑みると、単なるエネルギー安全保障に留まらず、「気候・エネルギー安全保障」の観点からエネルギー基本計画を立案することが肝要である。本骨子(案)には、このような視点が正しく盛り込まれていない。

例えば、原子力発電推進に大きく依存し、省エネ・燃料転換・再生可能エネルギー普及を先延ばしにしてきた結果、1990年以降、我が国の総排出量は大幅に増加し、気候変動対策の遅れにつながった。これに対する反省なしに、新たに原発8基増設、設備利用率向上を掲げることは、過去の教訓が全く活かされていないこととなる。

5ページ:自主エネルギー比率という概念を見直すべき

骨子案では「自主エネルギー比率」という概念を指標として、エネルギーの自給率を上げるとあるが、本来エネルギー自給率とは、文字通り自国内で生産可能なエネルギーの割合である。ウラン資源は、日本国内ではほとんど採掘されず、ウラン資源を準国産エネルギー源としてカウントすることは不合理である。

また、海外において日本企業が権益に関与している資源に関しても、当該国・地域の政情安定性など様々な別の要因によって確実に利用できるとはいえず、そのような資源のエネルギー自給率へのカウントは、安全保障という観点に矛盾を与える。したがって、自主エネルギー比率という概念の導入は見直すべきである。

9ページ:原子力発電はエネルギー供給源として優先すべき選択肢ではない

原子力発電は、発電時の排出がないことから、気候変動対策の一つと捉えられる場合もあるが、上述のように、実際には我が国の温暖化対策を遅らせる要因となっている。

そもそも、原子力推進の背景には、核燃料サイクルつまり高速増殖炉サイクルの実現によるウラン資源利用効率の大幅増加の意図があったと考えられる。従来の軽水炉では0.5%程度の利用効率を、高速増殖炉では60%程度まで高めることができると考えられているが、現実にはもんじゅのナトリウム漏れ事故により、高速増殖炉技術は頓挫しており、絵に描いたもちの状態となっている。

その後、核拡散防止の観点から、余剰のプルトニウムを消費するためにプルサーマルが代替技術として浮上したが、プルサーマルでは、利用効率は0.75%程度に留まり、本来の意図にはほど遠い。燃料として使用するMOX燃料の製造を海外に依存し、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の目処も立っていないことなども考慮すると、気候・エネルギー安全保障において、原子力発電は、優先すべき選択肢とは決していいがたい。

原子力発電については、これらの情報をきちんと国民に開示した上で、費用対効果、安全性、実現性など総合的な観点から、その必要性について国民的議論・見直しを行うべきである。

10ページ:石炭火力発電はエネルギー供給源として優先すべき選択肢ではない

石炭火力発電は環境負荷が高く、気候・エネルギー安全保障の観点から、優先すべき選択肢とはいえない。CCSと組み合わせた石炭火力発電は、再生可能エネルギーを必要量普及させるまでのつなぎの技術としては考えられるが、あくまで固定価格買取制度などによる再生可能エネルギーの早期導入による化石燃料の利用削減を前提とすべきである。

LNG(液化天然ガス)火力発電に関しては、石炭火力発電よりもCO2排出の少ないLNGへの転換は低炭素社会へのつなぎとして奨励するものであり、ガスシフトの推進は加速すべきである。また、その時点の最高効率の設備の導入はぜひ行うべきである。

11ページ:再生可能エネルギーの導入拡大を最優先し、目標を明示すべき

気候・エネルギー安全保障の観点から、再生可能エネルギーの導入拡大は最優先の方策といえる。導入の阻害要因を解決するための規制緩和や、固定価格買取制度の導入などは早期に行うべきであるが、実際に2030年および通過点である2020年の時点で一次エネルギーの何%を目指し、どれだけのCO2削減に貢献するのかについての目標を明記すべきである。

再生可能エネルギー導入拡大による国民負担について言及しているが、原子力についても同じことがいえ、再生可能エネルギーのみ負担を強調することは疑問である。また、本来は負担というよりも、将来の経済成長と新規雇用創出への投資と考えることができるはずである。

14~17ページ:エネルギー需要の削減は消費量の大きい産業部門を優先するのが理にかなっている

業務、家庭、運輸、産業部門という順に取り組む項目が掲げられているが、我が国の最終エネルギー消費の内、最も高い割合を占め高い削減ポテンシャルを有する産業部門について優先的に方策を考える方が理に適っている。

運輸部門において、現在の自動車燃費基準は、車両重量区分ごとに設定されており、経済の好転などにより仮に大型車が増加した場合、燃費の悪化の可能性があるため、重量区分によらない基準に改めるべきである。また、次世代自動車の普及を考慮し、燃費基準からCO2排出基準への移行や、走行段階だけでなくライフサイクルでのCO2排出基準も考慮した評価手法の導入を検討する必要がある。

こうした転換を促すために、運輸、それに業務、家庭に関しても、需要減を促す政策を入れるべきである。WWFでは、キャップ&トレード型の排出量取引制度と炭素税を中心とし、運輸、業務、家庭に独自の政策と組み合わせたポリシーミックス提案を2010年3月に発表している。ご参照願いたい。http://www.wwf.or.jp/torihiki

18ページ:スマートグリッドの積極的な推進は評価

スマートグリッドを適切に普及することができれば、分散型電力の産業としての裾野を広げ、新規参入や技術開発の促進などを通じたコスト低下をもたらし、環境負荷の大きい化石燃料の早期削減につながると考えられ、積極的に推進すべきである。

20ページ:原子力や石炭火力の海外輸出は推進すべきではない

骨子案では、エネルギー産業の国際展開の重点戦略分野として、原子力と石炭火力を最初にあげているが、原子力や石炭については環境負荷の輸出となる可能性があり、推進すべきではない。途上国においては、化石燃料や原子力を経ずに初めから再生可能エネルギーを導入できるケースも十分に考えられ、そのような芽を摘んでしまうことがあってはならない。

再生可能エネルギーや省エネ型産業プロセスなどの海外輸出は推進すべきであるものの、輸出市場のみでこれらの産業が発展することは困難である。我が国は、高いエネルギー変換効率など単体機器の技術レベルは世界最高水準にあると考えられる。しかしながら、太陽光発電や風力発電などに代表されるように、これまでの政策の失敗により、国内市場が脆弱で企業の納入実績が乏しく、実用レベルの技術が育っていない現状では、海外勢との受注競争において劣勢といわざるをえない。

例えば、風力発電では、欧米企業の寡占状態となっており、我が国最大の風車メーカーである三菱重工でも世界シェアは数%にすぎない。このような状況を打開し、世界のエネルギー技術や関連インフラ市場を牽引するレベルまで発展させるためには、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度やキャップ&トレード型の排出量取引制度などの政策によって、国内の市場を活性化し、企業が据付やプロジェクト遂行などのノウハウを蓄積していく土壌をつくることが不可欠である。

海外案件では、計画段階から顧客にプロジェクト全体の提案を行うことなどが受注の成否に大きな影響を及ぼす。日本企業は単体機器などプロジェクトの一部を受注することはできるが、このようなコンサルティング的な側面を不得手としているため、官民支援体制を強化し、再生可能エネルギーなどの海外プラントの受注実績の拡大につなげていくことは大変重要である。

21ページ:エネルギー産業構造の変革は省エネや再生可能エネルギー政策を中心に

骨子案21ページ③(1)に、中長期的なエネルギー分野の成長戦略の一つとして「国内でエネルギー産業構造の変革を積極的に推進し、これを我が国産業の競争力として、雇用の確保を図る」が挙げられているが、省エネや再生可能エネルギー政策を中心としたエネルギー産業構造の変革を積極的に推進していくべきである。

25ページ:エネルギー基本政策に再生可能エネルギーの政策目標を掲げるべきである

骨子案の2030年に向けてのエネルギー基本政策の供給の目標として、「エネルギーセキュリティ指標(準国産エネルギー、自主開発分を含む)を約70%」を挙げているが、エネルギーセキュリティ指標は、前述した「自主エネルギー比率」のことであり、安全保障という視点にそぐわず、導入すべきではない。むしろ、気候・エネルギー安全保障において最も重要である再生可能エネルギーの政策目標を掲げるべきである。

需要の目標としては、「くらしのCO2を半減」「産業部門では世界最高水準の省エネ水準の更なる向上を図る」がそれぞれ挙げられているが、くらしのCO2は、需要だけでなく、供給との両面において削減に取り組む必要があり、また産業部門については、工場のトップランナーなど省エネ・燃料転換の目標が必要である。

2010/4/07

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