琵琶湖流域に広がる、さまざまな自然。その代表的なものの一つが、「内湖」の自然です。この内湖で最大の規模を誇る「西の湖」の近くで現在、近江八幡市により、ゴミ処分場の建設が進められようとしています。WWFはこの計画が「西の湖」はもとより、琵琶湖全体の環境保全に影響を及ぼす可能性があるとして、2009年12月、市に対し、改めて計画の見直しを求めました。
貴重な内湖の自然
日本最大の湖、琵琶湖。かつて、その周辺の、特に湖東地方には、「内湖」と呼ばれる浅い小さな湖が点在していました。
この内湖には、ヨシなどの植物が群生し、水を浄化し、その根の部分は魚や貝などの産卵場となります。水質を維持し、生物の「ゆりかご」となる内湖は、琵琶湖の生物多様性を保全する上で、きわめて重要な場なのです。
しかし近年、内湖は次々に農地に転換され、現在までにほとんどが消失してしまいました。 その中で残る内湖のうち、最大のものが、近江八幡市と安土町にかけて広がる「西の湖」です。
この内湖の生態系は、すでに多くの研究者によって詳しく調査され、生物多様性のホットスポットとしても、知られてきました。
そして2008年、その自然の豊かさと重要性が認められ、国際的な湿地保全条約「ラムサール条約」に、追加登録されました。これは、1993年に登録された「琵琶湖」登録地に、新たに組み込まれる形で実現しました。

開発の問題
ところが2009年7月、この西の湖の近くで、地元の近江八幡市が、ゴミ処理施設の建設を計画していることが明らかになりました。
工事の予定地は、西の湖からわずか400m程度の場所で、西の湖と同時にラムサール条約に登録された長命寺川の支流、蛇砂川がすぐ脇を流れています。また、この地域は湧水も多く、埋めた土管が破裂する恐れの高い、軟弱な地盤であることも分かっています。
この事態を受け、WWFは現場と資料についての調査を開始。2009年9月および10月には、2度にわたり、近江八幡市長に対し、西の湖の自然の重要さを改めて訴え、建設による悪影響を考慮して、計画を変更するよう要望しました。
西の湖(写真上)と、その沿岸のゴミ処理施設の建設予定地(下)
近江八幡市の回答
この2つの要望書に対し、近江八幡市より12月4日、回答が送られてきました。
その内容は、事業が市民生活に欠くことのできない、一般廃棄物の処理施設整備事業であること。一日も早い整備が望まれることとの説明に加え、現地の事情、予定地の選択に至った過程などが記されています。
また回答には、西の湖の環境についても、保全の重要さを理解した上で、自然や生態系の維持、および景観の保全を重視した生活環境越境調査や、希少な動植物等への影響についての予測調査を行なったうえで十分な対策を図る、と記されていました。
しかし、WWFからの指摘や情報を考慮しつつも、処理施設の整備は進めたい、という市の姿勢は変わっておらず、西の湖の近隣にそれが建設されることによるリスクは、決して小さくはなっておりません。
このため、WWFは12月11日に再度、市に対し、事前の戦略的な環境アセスメント(影響評価)を実施し、総合的な観点から建設候補地を探すよう薦める要望書を提出。ラムサール条約の登録地への指定は、世界に対し、その保全を公約することである、という点について、理解を求めました。
また、今回は同時に、嘉田滋賀県知事にも要望書を提出し、近江八幡市に対し、指導をお願いする旨を伝えました。
日本最大の、そして世界的にも貴重な生態系が広がることで知られる、琵琶湖の自然。「西の湖」の保全は、琵琶湖全体の環境保全を推進する上でも、大きな役割を担う取り組みです。

琵琶湖に生息するヨシノボリ(上)とニゴロブナ(下)
関連情報
要望書および回答文書
- 2009年9月3日 WWFより近江八幡市長宛て要望書
- 2009年10月22日 WWFより近江八幡市長宛て要望書 (PDF形式)
- 2009年12月4日 近江八幡市よりWWFへの回答 (PDF形式)
- 2009年12月11日 WWFより近江八幡市長宛て要望書
- 2009年12月11日 WWFより滋賀県知事宛て要望書 (PDF形式)
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