参考資料 2009年12月17日
コペンハーゲン会議で先進各国が削減目標の数値を提示しているが、排出削減のルールに関する内容が不明確なまま、交渉文書が合意されてしまうと、先進国の排出削減を疎かにするような抜け穴が生じ、先進国の国内主要産業セクターからの大幅削減が阻害される。その結果、危険な気候変動を回避する上で不可欠な、タイムリーなピークアウト(排出が増加から減少転じること)が難しくなる。
抜け穴には以下の5つのタイプが考えられる。各々の抜け穴が、排出削減の実効性をどの程度損なうかについては様々な試算があるものの、抜け穴の利用が進むと、実際には排出が減っていないにもかかわらず排出削減量としてカウントされるケースなどが増え、各国が提示している削減目標の実効性が間違いなく損なわれることになる。
この問題点について、以下に要約する。
1.先進国における森林吸収源の算定
運用ルールが適切なものとなれば、森林吸収源は、持続可能な森林管理と環境保全型の農業の実現に貢献することができる。しかしながら、現在の京都議定書と同じグロス・ネット・アプローチ(森林が吸収する全CO2量を先進国の削減目標にカウント可能)が第2約束期間にも継続された場合、先進国における産業からの排出削減が疎かになり、その量は2020年までにCO2換算で10億トンにのぼると見積もられる。地球全体の排出を減らすという観点から見れば、森林が吸収する全CO2量ではなく、基準年からの吸収量の増加分、つまり吸収源を通じて真の排出削減に貢献した量のみがカウントされるべきである。
2.ホット・エア
ロシアや東欧諸国において、経済活動の低迷などにより、削減努力無しに生じる排出削減目標に対する達成余剰分をホット・エアと呼び、CO2換算で合計80~100億トン分のクレジットが次期約束期間に繰り越される可能性がある。仮に第2約束期間が2013~2020年となった場合、年間10億トンにのぼるクレジットがオフセットに活用される可能性があり、先進国の国内における実質的な排出削減量を減少させることになる。
3.CDMオフセット
先進国は、現状のCDM(クリーン開発メカニズム)の下で、途上国においてプロジェクトベースの排出削減を行い、その削減分を自国の排出削減義務量に充当することができる。このようなプロジェクトベースのCDMが2013年以降も継続された場合、先進国は、2020年までにCO2換算で15億トン分のオフセットを利用すると予測されている。EUだけで5億トン分を利用することを表明している。途上国においては排出が削減されるが、その分をオフセットとして活用した先進国においては、自国内における実質的な排出削減量が減少し、地球全体で見れば、プラスマイナスゼロとなる。
4.国際船舶・航空
国際船舶および航空燃料からの排出量は、第1約束期間においては排出削減目標にカウントされておらず、BAUでのCO2排出量は先進国全体で19億トンに達すると見られる。これらセクターの排出量が2013年以降の合意に盛り込まれなければ、抜け穴となる。米国の気候変動法案には国際船舶および航空燃料からの排出が含まれており、欧州の排出量取引制度にも航空燃料からの排出が含まれているが、それらを考慮しても抜け穴は13億トンにのぼると見積もられる。
5.2020年削減目標に対する出発点の排出量
先進国の新たな排出削減目標に対し基準とすべき出発点の排出量としては、
- 第1約束期間と同じ1990年の排出量
- 2012年における実排出量、あるいは
- 京都議定書の下での排出目標
の少なくとも3通りが考えられる。第1約束期間において京都議定書の目標を達成する国とそうでない国があると考えると、上記三択のいずれを選択するかによって、2020年に同じ目標を達成しても、1990年から2020年の間に大気中に蓄積されるCO2の量は異なる。
例えば、第1約束期間の実質的な排出量が目標を上回ってしまった国は、目標を達成した場合に比較すると、2020年までに、より多くのCO2を大気中に蓄積させたことになる。しかし2020年の削減目標を達成したかどうかという視点のみから捉えると、この蓄積分は、排出増加としてはカウントされずに済んでしまう。
排出削減のルールに関する内容が不明確なまま、交渉文書が合意されてしまうと、以上のような抜け穴が起こりうる。各々の抜け穴が、排出削減の実効性をどの程度損なうかについてさまざまな試算があるものの、抜け穴の利用が進むと、実際には排出が減っていないにもかかわらず排出削減量としてカウントされるケースなどが増え、各国が提示している削減目標の実効性が間違いなく損なわれることになる。
2009年【COP15/CMP5】国連気候変動コペンハーゲン会議
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