記者発表資料 2009年11月27日
11月27日、WWF(世界自然保護基金)ジャパンは、鳩山政権の掲げる日本の中期削減目標25%(2020年までに90年比)を達成し、長期的に日本を脱炭素社会へと導くための、気候変動ポリシーミックスの提案を発表した。
今後、日本においては、この中期目標を達成し、さらに長期的には、日本全体を“脱”炭素社会へと導いていくための政策をどのように導入していくかが、極めて重要である。
『脱炭素社会へ向けたポリシーミックス提案』は、その政策議論に具体的な提案をもって貢献するために、京都大学准教授の諸富徹氏をリーダーとする研究チーム(*)に、WWFジャパンが研究を委託し、作成された。
本提案は、2006年度に発表した『脱炭素社会に向けた国内排出量取引制度提案』の内容を踏まえ、それをさらに深化・拡大させたものである。前回の提案では主に京都議定書の目標達成に重点を置いていたキャップ&トレード型の国内排出量取引制度提案を、2020年および2050年へ向けた新しい目標の下で、欧米の新しい知見も取り入れて進化させ、前回以上に具体的で、実際の制度設計に貢献できる内容とした。
中心となるのは、エネルギー転換、産業、工業プロセスという3つの部門を対象とする国内排出量取引制度である。同制度は、現在では先進国における気候変動政策のスタンダードとなりつつあり、現政権もすでに導入については決定している。今回はこの具体的内容に踏み込んだ。
一方、排出量取引ではカバーすることができない運輸、家庭、業務といった部門についても、それぞれ適切な制度を設計し、日本全体として、温室効果ガスの確実な排出量削減を進める、総合的な“ポリシーミックス”を提案している。
本提案の新しい内容としては、例えば、以下が挙げられる。
- 炭素集約的なエネルギー転換部門や産業部門には直接排出ベースでの下流型排出量取引を導入し、排出量取引制度から除外される部門に対しては、炭素税で対応する。
- エネルギー転換部門、産業部門対象の排出量取引制度の初期配分は、ヨーロッパのEUETSで得られた知見を活かし、当初から、削減努力を評価するベンチマーク方式を採用し、2020年にはオークション方式に全面移行することを前提としている。
- ベンチマーク方式3タイプ、及びオークション方式2タイプについて検討を加えており、排出量取引制度の将来設計を先取りする提案となっている。
- 国際的に評価の高いGTAP-Eモデルを使用した影響評価では、排出量取引制度を実施することによる経済影響は大きくは出ない。ただし、モデルの前提条件について、より精査することが今後も必要である。
- 先進国の中では、排出量取引制度を導入する国々が多く出ている。しかし、それぞれの制度固有の特徴があるため、連携を困難にしている面もある。今後の制度設計には、国際的な連携を視野に入れることも必要である。
- 排出増加著しい運輸部門には、自動車を偏重した政策が結果として排出増につながることがないよう、総合的な政策を導入することを提案している。それに加えて、個人を対象とする燃料購入権の取引制度を導入することにより、自動車燃料からのCO2排出を確実に削減することができる。燃料購入権のうち一定割合について当面は無償配分し、残りは市場価格で放出する。取引には、既存のシステムを活用した電子的取引システムを構築し、ICカードなど電子記録媒体を用いる。
- 間接排出が主な業務部門には、間接排出対象の許可証を取引する形の別の排出量取引制度を導入し、需要者サイドにも直接インセンティブを与える。
- 対象数が多い家庭部門には、これまで日本政府が取ってきた手法である国民運動に頼るものではなく、エネルギー供給業者にCO2削減対策を義務付ける規制的手法を導入し、家庭における省エネ対策を進める役割をもってもらう。
12月7日から始まるコペンハーゲン会議の前に、WWFジャパンが研究者と共に、25%削減のための具体的な道筋を示すことで、鳩山政権の代表団が会議に、政策の裏付けを持った積極的な姿勢で臨み、国際交渉の場で、法的拘束力のある次期枠組みの合意に、さらなるリーダーシップを発揮することを期待している。
(*)研究チームメンバーは以下の通り。
諸富徹(京都大学大学院経済学研究科・准教授;排出量取引制度および全体総括)
兒山真也(兵庫県立大学経済学部・准教授;運輸部門)
鈴木靖文(ひのでやエコライフ研究所・代表取締役;家庭部門)
東愛子(京都大学大学院経済学研究科・博士課程;業務部門)
藤川清史(名古屋大学大学院国際開発研究科・教授;GTAPによる定量分析)
清水雅貴(横浜国立大学大学院国際社会科学研究科・博士課程;国際動向調査)
■添付資料(PDF形式)
■問い合わせ
気候変動プログラム 山岸尚之、小西雅子、池原庸介(Tel:03-3769-3590 climatechange@wwf.or.jp)または 広報担当 新井秀子(Tel:03-3769-1713、hideko@wwf.or.jp)
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