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活動トピック

沖縄島・大浦湾で35種以上の新種を確認

日本最後のジュゴンの生息海域として知られる、沖縄県名護市の大浦湾で、35種以上の新種のエビ、カニ類の生息が確認されました。これは、2009年6月に、WWFジャパンの「南西諸島生物多様性評価プロジェクト」の一環として行なわれた調査により明らかにされたもので、今後の調査によりさらに種数は増えるものと予想されます。今回、新種が発見された大浦湾は、生物多様性が豊かな海域として知られており、今後、生物多様性地域の一つとして、保全のための戦略を策定してゆくことが求められます。

未知の生命が息づく大浦湾

沖縄島の東部沿岸には、遠浅の内湾的が多く、規模の大きな干潟や、海草藻場、砂地の海底など、さまざまな景観が見られます。

その一つである沖縄島東部の大浦湾では、数種の十脚甲殻類(エビ・カニ類)が発見されたほか、2007年には国内でも最大級のアオサンゴ群落が見つかるなど、とりわけ豊かな生物相が確認されており、その保全が求められてきました。

今回、新種が確認された調査は、2009年6月19日から25日まで、琉球大学の藤田喜久博士を代表研究者とする研究チームによりWWFジャパン「南西諸島生物多様性評価プロジェクト」の一環として実施されたもので、大浦湾の河口部、およびサンゴ礁を除いた、海岸から水深60mまでの水域で行なわれました。

この結果、62科241属496種の十脚甲殻類が採取され、そのうち36種が新種(未記載種)、25種が日本で初めての記録となることが分かりました。

さらに、シャコ類(口脚目)についても、3種の新種と、4種の日本初記録種を確認。今回の調査期間が、短期間であり、また、サンゴ礁を調査対象から外していた点を考えると、大浦湾にはまだ多くの、未知の生命が息づいているものと思われます。

 

南西諸島の内湾環境

しかし、藤田博士らの調査チームでは、このような生物多様性の豊かさは、決して大浦湾だけのものではない、と見ています。

なぜなら、これまで沖縄をはじめとする南西諸島各地の内湾では、今回の調査のような、分類学的な視点に基づいた研究が、ほとんど行なわれてこなかったためです。

しかも現在、これらの内湾的な環境を持つ地域の多くでは、十分な調査もなされないまま、埋め立て事業や開発が進められています。

 

2008年6月に施行された生物多様性基本法では、生物多様性地域戦略を策定することが、努力義務として規定されていますが、戦略を策定した南西諸島地域の自治体は、今のところまだありません。
同地域の生物多様性の保全と持続利用の基盤となる戦略策定、生物データベースの構築は急務です。

WWFジャパンでは、この海域での米軍基地建設やその他の大規模開発をやめ、ジュゴンをはじめとするさまざまな生物を育む自然環境の保全を訴えて行きます。

また、多分野の専門家の協力を得て進めている「南西諸島生物多様性評価プロジェクト」の成果を公開し、科学者や行政、市民、NPOが協力した、生物多様性の保全と、資源の持続可能な利用に役立ててゆきたいと考えています。

なお、今回の甲殻類調査の結果は、2009年11月27日~29日に 沖縄県 本部町 中央公民館で開催される日本サンゴ礁学会第12回大会で発表される予定です。

 

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調査の様子

記者発表資料 2009年11月25日

沖縄島・大浦湾沿岸で35種以上の新種甲殻類を確認

【東京発】沖縄島東部・大浦湾沿岸(沖縄県名護市)において、少なくとも36種の新種(未記載種)ならびに25種の日本初記録となる十脚甲殻類(エビ・カニ類)の生息が確認された。今回の発見は、NPO法人海の自然史研究所代表理事および琉球大学大学教育センター非常勤講師の藤田喜久博士(36)を代表研究者とする調査チームにより、WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)が「南西諸島生物多様性評価プロジェクト」の一環として実施した調査で明らかとなった。調査結果の詳細は、2009年11月27日~29日に本部町中央公民館で開催される日本サンゴ礁学会で発表する。WWFジャパンでは、南西諸島地域の生物多様性の保全と持続利用の基盤となる「南西諸島生物多様性地域戦略」策定を強く促していく。

調査の背景

沖縄島の東部沿岸は、西部沿岸に比べて遠浅で内湾的な環境をもつ場所が多い。特に、大浦湾・金武湾・中城湾には、大規模な干潟、海草藻場、砂泥底質の海底などの特殊な環境が発達している。近年、本調査メンバーらは、金武湾や大浦湾沿岸から複数の十脚甲殻類の未記載種を発見している。また、ごく最近、大浦湾において国内でも最大級のアオサンゴ群落が見つかるなど、これらの内湾環境における特異な生物相が注目されつつある。

しかしながら、これらの環境は、埋め立てや水質汚染などの社会的・人為的影響を受けやすく、近年、十分な調査もなされぬまま環境が悪化している。同環境では、今後も新種発見などの学術的に重要な発見が続くものと予想されるが、これまでに十脚甲殻類相に関して網羅的な研究は行われていない。

今回の調査は、本来、従来十分な調査がなされてこなかった金武湾および大浦湾の十脚甲殻類相を解明するためのもの。しかし、調査チームを組織できる期間が短かったため、金武湾は短期間の調査対象としては規模が大きすぎるという理由から、大浦湾において集中的な調査を行うことになった。

沖縄島大浦湾沿岸における十脚甲殻類相の解明調査

沖縄島大浦湾沿岸の十脚甲殻類相を把握するため、3日間の予備調査の後、2009年6月19日から25日の日程で、採集調査を行なった。採集は、河川の河口部および海岸潮間帯から水深約60mまでの環境において、徒手、タモ網、ヤビーポンプ、トラップなどを用いて行なった。
なお、本調査は、WWFジャパンの「南西諸島生物多様性評価プロジェクト」現地調査の一環として実施した。調査メンバーは以下の通りである。

  • 藤田 喜久(NPO法人海の自然史研究所/琉球大学大学教育センター)
  • 大澤 正幸(琉球大学 非常勤講師)
  • 奥野 淳兒(千葉県立中央博物館分館海の博物館)
  • 駒井 智幸(千葉県立中央博物館)
  • 成瀬 貫(琉球大学亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構)

*上記に加えて、沖縄島在住のダイバーや琉球大学の学生など多数の協力を得た

10日間の採集調査の結果、現在までに62科241属496種の十脚甲殻類を得た。これらの中には少なくとも36種の未記載種および25種の日本初記録種が含まれていた。
加えて、口脚目(シャコ類)についても4科8属14種(3未記載種、4日本初記録種)が記録された。ただし、調査期間が極めて短期間であることと、サンゴ礁環境を主研究対象から外している点を考えると、今後の調査によりさらに種数は増えるものと思われる。
上述した十脚甲殻類のうち、すでに1種については新種記載が終了し、学術論文として発表されている(参考文献参照)。残りの種についても、順次発表準備を進めていく予定である。ただし、通常、新種が命名されるまでには通常数カ月~数年程度かかるため、今回採集された十脚甲殻類全種についての詳細なとりまとめにはさらに時間を要する。

調査結果の考察ならびに今後の取り組み

今回の調査結果は、大浦湾における十脚甲殻類の高い種多様性を示すものである。しかしながら、これが直ちに大浦湾の特殊性を示すことにはならないことには十分注意する必要がある。なぜなら、生物多様性の保全と持続的利用を進める上で正確な生物相の把握は必要不可欠な情報であるにもかかわらず、それを担うべき分類学者は不足しており、また、本調査のような分類学者によるチーム研究はほとんど行われてこなかったからである。残念ながら、現在の多様性保全活動の現場では、そのような現状が取り上げられることは少ない。

今後、大浦湾の生物多様性の「真の価値」を科学的に議論するためには、大浦湾以外の沿岸域や陸域においても、分類学に基づいた生物相の把握を進めてゆく必要があるだろう。また、それらの情報を体系的に収集・統合・更新していくためのプラットフォームを構築する(例えば「生物データベース」など)必要がある。そのためには、科学者、行政、地域NPO等の連携が不可欠である。この連携を担保する機会として、「南西諸島生物多様性地域戦略」の策定が有効である。

昨年6月に施行された生物多様性基本法では、生物多様性地域戦略の策定の努力義務が規定されている。戦略には生物多様性の保全と持続的利用を推進する区域や施策を盛り込む必要があるが、これには適切に管理、運用された生物データベースの存在が重要である。現時点で、戦略を策定した南西諸島地域の自治体は皆無であり、WWFジャパンでは、同地域の生物多様性の保全と持続利用の基盤となる戦略策定、データベース構築を今後とも強く促していきたい。

参考文献

Naruse,T.,Fujita,Y.,&Ng,P.K.L.,2009.
Anewgenusandnewspeciesofsymbioticcrab(Crustacea:Brachyura:
Pinnotheroidea)fromOkinawa,Japan.Zootaxa,2053:59-68.

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